相棒は邪龍らしい。

渡邉 幻日

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2:二人旅

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「……お前さんには幾らに見える?」
「あ? あー、少なくともこの棚の銅3枚では安すぎると思う。……俺の記憶ではクロム鋼がまずこの辺りには無いはずだし見た目がシンプルだがとても持ちやすいし、多分使い勝手も良いと思う。クロム鋼は基本的に長持ちするから……」
鑑定結果で出てきていた、店主が特別な技法を用いなくてもクロム鋼は強い。それを鑑定が敢えて調べあげ伝えてきたのであれば、それは俺が想像するよりも効果が高い技術なのだろう。

「金3枚」
びし、と指を三本立てて答える。
「……」
「……?」
「んふふっ」
店主を見て答えれば、目を丸くしたあとに俯いてしまった。言われるより低くてがっかりしただろうか。返事がない。ベリーが笑ったが、茶化す風ではないからそこまでおかしい金額ではないはずなのだが。
「……ベリー。……低かったか?」
「ん、いや? おれもそれくらいじゃないかと思ったけど?」
目線を合わせて問えば、微笑んで言う。ベリーも空気を読むことは出来るし、そもそもこんな場所で冗談は言うまい。言いずらいことがあれば苦笑とともに肩をすくめる程度にするはずだ。言葉で否定したのだから、ほとんど本心で答えたのだと思う。ちら、と店主を見る。

「っははははは! 参った参った!」
「?」
唐突に笑いだした店主。額に手を当て心底愉快だと、それはもう全身を使って表現しているような笑い方だった。気まずさは吹き飛んだが、拍子抜けもした。どうしたんだ。
「いやぁ、お前さん、目が良いな。そこに入れたのは間違いじゃあねえが、みぃんな目が滑るのよ」
本当のガラクタばかりが売れていく、と尚も笑う店主。ガラクタとは言うが、正直なところそれらも割りと質が良いと思う。もう一度目を向けるが、値を下げられた棚も、ガラクタ入れの樽も、そこそこ良い商品だと思う。この店主は本当に腕が良いんだろう。

「俺はこれがいい」
伝えた通りに金3枚でも構わないから譲ってほしい。ただこの刃がむき出しの状態はさすがに持ち歩きにくいから、鞘がほしいところだ。作ってもらえるならそれも買いたい。
「なあ店主、これを買いたいんだが鞘とかはないのかい?」
代わりにベリーが声を掛けてくれた。うっかりどこかを切らないよう気を付けながら、店主のいるカウンターまで持って行く。
ベリーはと言うと、魔法を使う以外にはもっぱら体術を使うから、刃物には興味を持っていない。しいて言うなら脛から足先を守れるようなものがあればと言うところだ。ここは武器と防具の店だと掲げているし、それらしいものがあると良いなと思い、店内をもう一度見渡す。

「鞘か……そいつにはねえな」
「作れる? 勿論追加料金は出すよ」
ちょっとした素材なら少しあるんだけれど、となおもベリーが交渉をしているので、俺は抱き上げられた状態のままきょろきょろと見ておく。興味があればそっと鑑定だ。
本当に、安物・ガラクタの扱いでもその値段より価値がありそうなのに、投げ売りにもほどがある扱いをされている。その扱いをされる可能性を敢えて挙げるのだとすれば、丁寧に磨かれてはあるがそれなりに古そうなものというところか。
古そうなのに十二分に使えるだろうと鑑定結果が出るところが逆にすごいと思うが。
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