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2:二人旅
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しおりを挟むというのを、何度か繰り返したわけだ。心底疲れた。
商品はそれとなく空間魔法でしまっている。
せっかくの出来立てだったし、食べきれない量だったので。冷ましてしまうのは勿体ないし、両手に持てるかどうかというものを、人通りの多い場所で持ちあるくにはぶつかって仕方ないだろう。相手の衣服を汚してしまったら目も当てられないしな……。
ほぼ最初の店の商品以外しまってある。店から少し離れて、周囲の人垣で隠れるようにしてしまってしまう方法をとった。誰の目にも留まらないだろうしこれで問題ないだろう。
買い物をしてはおまけを貰っているのだが、買っているのかただ貰っているのかわからなくなってくるな……。顔が良いと得をすると、どこかの店で並んでいたとき後ろの誰かが言っていたが……ここまでくると恐ろしいと思うんだが。
ようやく西区の商業ギルドが見えてきた。こちらも西区通りのだいたい真ん中あたりに建てられていて、他より大きく、高い。とても目立つし、看板はわかりやすくコインが描かれてある。
……ポーションとか薬草とかにすればよかったのでは……?
まあ、俺が何かを言えるわけはないし、商業ギルドはこれで結構な歴史があるし……考えるだけ無駄か。
ベリーと並んでギルド内へと足を踏み入れた。
ギルドの目的は街の中で経営される店の把握とフォローが一番の目的で、その代わりに会費を年に一度支払う。
個人商店から大手の店まで請け負っていて、個人の店はギルドのおかげで最低保証の売り上げを持てるし、大手ならば相応の金額を払っておくことで何かしらの損害があったときに補填される保証がある。
冒険者ギルドと提携することもあって、一部収集された素材のやり取りが該当する。薬草そのものであったり、それらを一度買い取った後に薬品などに昇華させられる存在への引き渡しと完成品の売買……など。
時に大きな数字が動くからか、依頼者も職員もどこか金への意識が違う。
「……肌には合わんな」
「確かに~」
思わずこぼれた言葉をベリーが拾い上げて茶化して答える。
気を取り直して内装を眺める。何というか、大きな店のようだった。いや、小さな店の集合体……?
いわゆるショーケースと呼ばれる商品棚がそこかしこ並べられていた。個人商店名義の看板もちらほら添えられているから、これが最低保証にあたるものなんだろう。
ここで買い上げられたものの数量と金額が計算され、手数料と称していくらか引き抜かれたものが商店の方の売り上げとなるのだろう。
その売り場付近に限っては、商人と言うよりは冒険者の方が立ち寄っているようだ。そばにある売買カウンターで購入が出来る、と。
見た限りポーション類は少ない。無いわけではなさそうなので、恐らくは入荷されればすぐに売れてしまうのだろう。
「ああやって売られてるとなると……ここで売るのあんまり良くなさそうだね」
「ああ……登録している個人商店の邪魔になりそうだ。恨まれても面倒だからやめるか」
「いらっしゃいませ! 何をお探しでしょうか!?」
「!?」
音もなく表れた背後の存在に、久しく騒がなかった心臓が動悸を激しくした。
振り返れば、ベリーよりはやや低めだが長身で細身の、にこやかな表情を貼り付けた男が居た。さすがに揉み手ではなかったが。
薄く桃色がかった淡い髪色で、恐らく後ろで一つに縛っているのだろう。女なら似あう色合いだが、男でその髪色は苦労しそうだ。とはいえ綺麗系と呼ばれる顔立ちなので問題もないのかもしれないが。
「当ギルドでは日用品からダンジョン攻略にて手に入るちょっと珍しい品の売買をさせていただいておりますよ。どういったものが欲しいかわからないという不安や疑問にもしっかりご相談に乗らせていただいております」
軽やかに語る姿は歌うようだった……と表現してもいいかもしれないが、こちらとしては別段目立ちたいわけではないので、この男の登場によってギルド内の視線が集まってきてしまった。舌打ちしそうになるのをこらえつつベリーを見上げれば、苦笑をしているから同じようなことを考えているだろう。
舌打ちはしたが表情は隠さない。実に面倒なことをしてくれたと、睨みながらベリーの後ろに隠れる。面倒なのでベリーに丸投げをするためだ。
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