【完結】曖昧な距離で愛している

山田森湖

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第52話「出発前の日々」

第52話「出発前の日々」


翌日、俺は上司に海外プロジェクトを受けることを伝えた。

「分かりました。やります」

「本当か?ありがとう」

「奥さんと、ちゃんと話し合いました」

「そうか。いい奥さんだな」

「はい」

出発は来月。それまでに、準備をしなければならない。

チームの引き継ぎ。

新しいプロジェクトの下調べ。

やることは山積みだ。

夜、帰宅して、美咲に報告した。

「美咲、受けることにした」

「そっか」

美咲は笑顔で言う。

「いつ出発?」

「来月の十五日」

「分かった」

それから、俺たちは残された時間を大切に過ごした。

週末は必ず一緒に過ごす。

平日も、できるだけ早く帰る。

二人で夕飯を作り、ゆっくり話す。

ある週末、美咲が提案してきた。

「拓海、写真、たくさん撮ろう」

「写真?」

「うん。拓海がいない間、これを見て過ごすから」

その言葉に、俺の胸が締め付けられる。

「美咲」

「ん?」

「ごめん。寂しい思いさせて」

「謝らないで」

美咲が笑う。

「これも、私たちの成長だから」

二人で街を歩き、たくさん写真を撮った。

笑顔の写真。

変顔の写真。

抱き合う写真。

「拓海、これ、全部プリントして持っていってね」

「うん」

「そして、向こうでも、たくさん写真撮って」

「分かった」

美咲が俺を抱きしめる。

「寂しいけど、頑張る」

「俺も」

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