【完結】大人の遠足

山田森湖

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2_君の隣、旅の途中

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君の隣、旅の途中

俺、アキヒトは33歳の既婚者で、高校教師をしている。
今年は担任を持たない年で、その代わり単発の係を任された。俺の役目は「旅行コーディネーター」。修学旅行の宿や見学先、イベントの予約までを担当し、事前に下見もする。仕事とはいえ、名目上の“旅行”みたいなものだ。

今はその修学旅行の下見旅行の最中。男女ペアで動く決まりがあるため、同僚のマドカと一緒に行動している。
行きの新幹線、マドカが眠ってしまったので、俺は一人で見学先のパンフレットを眺めていた。どこを見学して、どこで集合して、トイレ休憩はどこに入れるか…そんな段取りを考えながら、いつの間にか俺も眠っていた。

「アキヒトくん、起きて」
「……あ、ああ」
ふと目を開けると、隣には妻以外の女性。そうだ、今は修学旅行の下見だった。
「そろそろ着くよ」
「ありがとう。完全に寝ちゃってたな」
「そこ行くの?」と、俺が持っていたパンフレットを指差す。
「そうそう、ここ人気あるみたいなんだ」
そんな会話をしながら駅に到着。そこからは、当日に使う観光バス会社の下見も兼ねて、タクシーで移動する。

今回はタクシー1日貸切。俺たちの行動はGPSで記録されているため、上司への報告も不要。面倒な書類仕事が減って、正直楽だ。

最初の目的地は、有名な仏閣。観光地としても名高い場所だ。
中に入り、実際の修学旅行と同じようなルートで回っていく。

「この辺で集合写真、撮れるかな?」
「うん、いいスポットだよね」
「トイレも近いし、ここから自由行動にしようか。目印もあるし」
女子目線の意見も参考にしながらメモを取っていく。

その後は、自由行動っぽい時間。俺たちは写真を撮ったり、お土産を見たり。
「アキヒトくん、ここで撮ってよ」
「いいよ、ここベスポジじゃん」
「でしょ?晴れてると最高なんだよ」
同僚とはいえ、女性と旅行。ドキドキするなという方が無理な話だ。

続いて、早めに宿へ向かう。チェックインを済ませると、マドカが言った。
「ねぇ、アキヒトくん。散歩行かない?」
「うん、いいよ」
山の上にある宿。空気が澄んでいて少し肌寒いが、見晴らしは最高だった。
「空気が気持ちいいね」
「だね」
可愛らしい反応をするマドカを、つい見てしまう。
「どうかした?」
「い、いや、別に……」

宿に戻り、俺は修学旅行のしおりの訂正作業。
「お風呂は?」と聞くマドカに、「先に行っていいよ、これ終わらせるから」と返すと、少し残念そうな顔を見せた。俺だって行きたいけど、既婚者だ。自制しないと。

温泉をすませ部屋に戻ると、夕食の準備ができていた。
「わぁ、夕飯だ~」と戻ってきたマドカは、ビールを手に持っていた。
「アキヒトくん、お酒好き?」
「好きだよ」
「よかった。飲まない人だったらどうしようかと思ってた」

豪華な料理とお酒、他愛もない会話に、時間はあっという間に過ぎた。
「アキヒトくんって、奥さんと旅行行くの?」
「うーん、あんまり行かないな」
「そうなんだ。私もあまり行けてない。やっぱり、マンネリしちゃうのかな」
「マドカさんは、行きたい派?」
「うん。私は行きたい派なんだけどね」
「俺も行きたいんだけど、うちの奥さんがあまり乗り気じゃなくてさ」

そんな話をしていたら、マドカはそのままベッドで寝てしまった。
少しはだけた浴衣、うっすらと浮かぶ汗。
――ダメだ。でも少しくらいなら……いや、やめよう。寝よう。

自制心を保った俺は、静かに布団に入った。
あと2泊。……もつのか、俺。
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