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疑惑の核心
舞踏会が終わり、喧騒が遠ざかった王宮の廊下を、私とアレクシスは並んで歩いていた。
彼は、私の肩に掛けていた自身の上着を、部屋まで送る途中で回収するつもりらしかった。
執務室の前まで来た時、彼は足を止め、私に向き直った。
その青い瞳は、舞踏会の時とは違う、探るような光を宿している。
「レベッカ」
「はい」
「あの時、リリアナ・グレイに、何を言ったんだ?」
やはり、彼は気づいていた。
私が、ただワインをこぼされただけの、か弱い令嬢を演じていたわけではないことに。
私は、隠すことなく、正直に話すことにした。
「……少しだけ、カマをかけさせていただきました」
「カマを?」
「ええ。彼女が、国境近くで活動する残党の件に関わっているのではないかと、そう思いましたので」
私は、リリアナの耳元で囁いた言葉と、その時の彼女の反応を、ありのままに彼に伝えた。
「彼女のあの動揺は、ただの令嬢が見せるものではございません。間違いなく、何かを知っていますわ。いえ、知っているどころか、中心にいる可能性さえ……」
私の話を聞き終えると、アレクシスは、深く息を吐いた。
そして、重々しく口を開く。
「……君の話は、密偵がもたらした情報と、完全に一致する」
「では、やはり……」
「ああ。リリアナ・グレイは、もはやただの『要注意人物』ではない。我々が追うべき、事件の『中心人物』だ」
彼は、執務室の扉を開け、私を中に招き入れた。
そして、机の引き出しから、一枚の羊皮紙を取り出す。
それは、密偵がまとめた、残党たちの金の流れに関する、最新の報告書だった。
「残党たちの資金源は、今もって不明だ。だが、その金の流れを管理し、分配しているのが、リリアナであることは、ほぼ間違いない」
「では、彼女の背後に、さらなる黒幕が……? その者が、資金を?」
「そう考えるのが、自然だろうな」
アレクシスは、窓の外の暗闇に目を向け、呟く。
「彼女の目的は、一体なんだ? クロワ公爵家を乗っ取ることか? それとも、ただ、王国に混乱をもたらしたいだけなのか……」
その横顔は、国の未来を憂う、為政者の顔だった。
私は、彼の隣に立ち、静かに言った。
「わたくしにも、何か、お手伝いできることはございませんこと?」
「君は、何もしなくていい。これ以上、危険なことに関わる必要は……」
「いいえ!」
私は、彼の言葉を、強い口調で遮った。
「わたくしは、もう、あなたに守られているだけの存在ではいたくないのです。あなたの隣に立ち、あなたと共に、この国を守りたい」
その言葉に、アレクシスは、驚いたように私を見つめた。
「わたくしにしか、できない方法で、探ってみます。女性の、内側から」
「……どういうことだ?」
「リリアナ様も、しょせんは、一人の貴族令嬢。その交友関係、侍女たちの噂話。そういったところから、何か、手がかりが見つかるかもしれませんわ」
それは、男性であるアレクシスや、彼の密偵たちには、探ることのできない領域だった。
彼は、しばらくの間、私の目をじっと見つめていたが、やがて、小さく頷いた。
「……わかった。だが、決して、無理はするな。危険を感じたら、すぐに、俺に知らせろ」
「はい」
「約束だ」
彼が、私の手を、強く握る。
その温かさに、私は、勇気づけられるのを感じた。
こうして、私たちは、改めて、共に戦うことを誓った。
リリアナ・グレイという、偽りの仮面をかぶった悪意の正体を、暴き出すために。
それは、私と彼が、対等なパートナーとして、手を取り合った、新たな始まりの夜だった。
舞踏会が終わり、喧騒が遠ざかった王宮の廊下を、私とアレクシスは並んで歩いていた。
彼は、私の肩に掛けていた自身の上着を、部屋まで送る途中で回収するつもりらしかった。
執務室の前まで来た時、彼は足を止め、私に向き直った。
その青い瞳は、舞踏会の時とは違う、探るような光を宿している。
「レベッカ」
「はい」
「あの時、リリアナ・グレイに、何を言ったんだ?」
やはり、彼は気づいていた。
私が、ただワインをこぼされただけの、か弱い令嬢を演じていたわけではないことに。
私は、隠すことなく、正直に話すことにした。
「……少しだけ、カマをかけさせていただきました」
「カマを?」
「ええ。彼女が、国境近くで活動する残党の件に関わっているのではないかと、そう思いましたので」
私は、リリアナの耳元で囁いた言葉と、その時の彼女の反応を、ありのままに彼に伝えた。
「彼女のあの動揺は、ただの令嬢が見せるものではございません。間違いなく、何かを知っていますわ。いえ、知っているどころか、中心にいる可能性さえ……」
私の話を聞き終えると、アレクシスは、深く息を吐いた。
そして、重々しく口を開く。
「……君の話は、密偵がもたらした情報と、完全に一致する」
「では、やはり……」
「ああ。リリアナ・グレイは、もはやただの『要注意人物』ではない。我々が追うべき、事件の『中心人物』だ」
彼は、執務室の扉を開け、私を中に招き入れた。
そして、机の引き出しから、一枚の羊皮紙を取り出す。
それは、密偵がまとめた、残党たちの金の流れに関する、最新の報告書だった。
「残党たちの資金源は、今もって不明だ。だが、その金の流れを管理し、分配しているのが、リリアナであることは、ほぼ間違いない」
「では、彼女の背後に、さらなる黒幕が……? その者が、資金を?」
「そう考えるのが、自然だろうな」
アレクシスは、窓の外の暗闇に目を向け、呟く。
「彼女の目的は、一体なんだ? クロワ公爵家を乗っ取ることか? それとも、ただ、王国に混乱をもたらしたいだけなのか……」
その横顔は、国の未来を憂う、為政者の顔だった。
私は、彼の隣に立ち、静かに言った。
「わたくしにも、何か、お手伝いできることはございませんこと?」
「君は、何もしなくていい。これ以上、危険なことに関わる必要は……」
「いいえ!」
私は、彼の言葉を、強い口調で遮った。
「わたくしは、もう、あなたに守られているだけの存在ではいたくないのです。あなたの隣に立ち、あなたと共に、この国を守りたい」
その言葉に、アレクシスは、驚いたように私を見つめた。
「わたくしにしか、できない方法で、探ってみます。女性の、内側から」
「……どういうことだ?」
「リリアナ様も、しょせんは、一人の貴族令嬢。その交友関係、侍女たちの噂話。そういったところから、何か、手がかりが見つかるかもしれませんわ」
それは、男性であるアレクシスや、彼の密偵たちには、探ることのできない領域だった。
彼は、しばらくの間、私の目をじっと見つめていたが、やがて、小さく頷いた。
「……わかった。だが、決して、無理はするな。危険を感じたら、すぐに、俺に知らせろ」
「はい」
「約束だ」
彼が、私の手を、強く握る。
その温かさに、私は、勇気づけられるのを感じた。
こうして、私たちは、改めて、共に戦うことを誓った。
リリアナ・グレイという、偽りの仮面をかぶった悪意の正体を、暴き出すために。
それは、私と彼が、対等なパートナーとして、手を取り合った、新たな始まりの夜だった。
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