18 / 20
第弐夜
08
しおりを挟む
「えっと、そのことに関しては、問題ありません。男だとか女だとか些細なことです。ここで飼い殺しとかもったいない。1日何をやっていたかなんてお見通しなんですよ。」
「脅しか?情報収集は出来ても剣術が使えないなら己の身を守れないだろう。ここは、狼の巣の中だぜ。」
それと同じく、永倉の脇差しがカチャリと音が鳴る。それと同時に、抱き上げられていた三毛猫の心臓がドキッと小さく跳ねた。三毛猫の心臓は、限界に達してしまうかもれないという考えが浮かぶ。
「やだな~殺気なんて物騒なものも飛ばしてさ。なんなら、力試しでもしましょうか?こう見えても強いんですよ。」
満面な笑みを浮かべながら煌妃は言った。複雑な空気が部屋の中を漂う。
「近藤さん、山南さん、さっきも言ったように小姓であれば問題ないだろう。」
「そうそう、それでなくともきちんと自分の身は守れます。」
「だが、お前・・・人を殺したことないだろう。」
「永倉さん、優しいですね。でも大丈夫です。そんな心配不要です。」
相手を射貫くような目で永倉を見つめる。その瞳は、沖田の心の奥にある何かを燻らせていた。それは、お互い求めていたような恋や愛などではないワクワクしたような感情。沖田は目を細めて口がにやけるのを我慢していた。それに気づいた煌妃は沖田と自分はどこか似ているのかも知れないとそう思った。煌妃はフッと自分を嘲笑うかのような笑みを零すと、それを隠すかのように挑戦的な口調で話し始めた。
「今まで血鬼と戦ってきたのは私なんですよ。私が自分の身を守れるぐらい強いってこと土方さんと沖田さんならわかりますよね?」
土方と沖田に視線が集まる。それを確認するかのように沖田がこくんと首を縦に振った。土方も「あぁ」と肯定したようにつぶやいた。
「そうか・・・よしっ!白狼の入隊を許可しよう!彼女の力をこのままにしておくこともできまい。それに長州の奴らに渡すわけにもいかないからな。」
近藤の判断に、それぞれの考えのもとその場にいたものはハッと息をのんだ。何かを察したものもいただろう。
「・・・近藤さんがそういうなら。」
と永倉が言うとこの話は終わった。
煌妃は、ここに入ってから何か違和感があった。新参者が現れたときの特有な雰囲気だろうと思っていたが、今になって、その答えがやっと分かった。ここには本当に試衛館側の人間しかいない。もう二人、近藤と同じ立場にいる男がいたはずだ。
「失礼だと思いますが、あの男はここにいらっしゃらないようなのですが?」
あの男、そう煌妃が口に出すと近藤をはじめ山南、土方の目が一瞬揺らいだのに気づいた。〈あの男〉で連想できるほど追い詰められているってこと?何かある、と気づかせるのには十分だった。
「・・・斎藤一。」
煌妃は、その空気を変えるべく考えていた男とは違う男の名を口にした。すると、3人が思っていた人物と違う名前が出たことに、安心したのか小さな安どの溜息が聞こえた。
「・・斎藤は今、見回りに行っている。」
少しぎくしゃくしながら土方が言った。煌妃もそのことに気づかないふりして答える。
「そう、結構有名だから会ってみたかった。」
「へ~、一がねぇ。何で有名なんだ?」
原田は興味深い目を煌妃に向けたが、まさかここで興味を持たれるとは思っていなかったので、煌妃はすぐ話題を変えることにした。ここで斎藤一の話題はまずい。理由はまだ分からないけど里で口を酸っぱくして何度も念押しされたんだもの。
「何言っているんですか。原田さんだって、有名ですよ。花街で色々おもしろいことしているんじゃないですか。」
無邪気に笑いながら煌妃は言った。そして、『具体的に言いますか?』とニコニコ笑いながら付け足した。それを見て、原田は苦笑しながら右手で静止する素振りを見せた。なぜなら、原田の目には、『つまらないですね』と答えた煌妃の笑顔の裏に、閻魔がちらついたのかもしれない。相当焦っていた。
「・・・入隊の件ありがとうございます。早速なんですが、どなたか試合していただけませんか?いい牽制にもなると思うので。」
「では、私が立候補しても良いですか?昨日の続きと言うことで!」
きらきらした顔つきで沖田は土方を見た。そして、煌妃に目を移した沖田の瞳に、『言ったでしょう。貴女なら大丈夫だって』と言われた気がした。
「・・・そうだな。その方がいいだろう。」
「しかたねーな。近藤さんが決めたことなんだ。俺らは従うぜ。」
「そうだね。でも、白狼って呼ぶわけにも行かないよね。名前は・・・?」
「天城朔(てんじょうさく)。それが、この姿の時の名前です。」
「?」
沖田が、不思議な顔で煌妃を見ていた。何か違和感あったって顔してる。天然なんだか鋭いのかよく分からない人だな。
「ふむ。天城くん、よろしく頼むぞ。」
「はい。」
近藤に一礼すると、ちらっと土方を見た。それに気づいた土方は、怪訝そうな顔をしたもののうなずく。
「このことについては、口外無用だ。では、解散!」
「沖田さん、この猫お願いしますね。」
ちょこんと沖田の両手に三毛猫をのせた。その様子を見て沖田はにっこり笑うと、『先に道場に行っていますね』といって部屋を出て行った。素早い。昨日のケガもあるしすぐ試合できないって言いたかったのに。消化不良を起こしている煌妃だったが各々が、部屋を出ようとしたときに土方がまだ話が残っていると目で合図を送った。
「山南さん、近藤さんちょっと話がある。それに、天城。」
「なんだい?土方くん。」
土方を、横目で見ると自分から話すようにと言われているようで気にくわなかったが、仕方なく煌妃は、他の人が出て行ったのを確認すると話を進めた。
「脅しか?情報収集は出来ても剣術が使えないなら己の身を守れないだろう。ここは、狼の巣の中だぜ。」
それと同じく、永倉の脇差しがカチャリと音が鳴る。それと同時に、抱き上げられていた三毛猫の心臓がドキッと小さく跳ねた。三毛猫の心臓は、限界に達してしまうかもれないという考えが浮かぶ。
「やだな~殺気なんて物騒なものも飛ばしてさ。なんなら、力試しでもしましょうか?こう見えても強いんですよ。」
満面な笑みを浮かべながら煌妃は言った。複雑な空気が部屋の中を漂う。
「近藤さん、山南さん、さっきも言ったように小姓であれば問題ないだろう。」
「そうそう、それでなくともきちんと自分の身は守れます。」
「だが、お前・・・人を殺したことないだろう。」
「永倉さん、優しいですね。でも大丈夫です。そんな心配不要です。」
相手を射貫くような目で永倉を見つめる。その瞳は、沖田の心の奥にある何かを燻らせていた。それは、お互い求めていたような恋や愛などではないワクワクしたような感情。沖田は目を細めて口がにやけるのを我慢していた。それに気づいた煌妃は沖田と自分はどこか似ているのかも知れないとそう思った。煌妃はフッと自分を嘲笑うかのような笑みを零すと、それを隠すかのように挑戦的な口調で話し始めた。
「今まで血鬼と戦ってきたのは私なんですよ。私が自分の身を守れるぐらい強いってこと土方さんと沖田さんならわかりますよね?」
土方と沖田に視線が集まる。それを確認するかのように沖田がこくんと首を縦に振った。土方も「あぁ」と肯定したようにつぶやいた。
「そうか・・・よしっ!白狼の入隊を許可しよう!彼女の力をこのままにしておくこともできまい。それに長州の奴らに渡すわけにもいかないからな。」
近藤の判断に、それぞれの考えのもとその場にいたものはハッと息をのんだ。何かを察したものもいただろう。
「・・・近藤さんがそういうなら。」
と永倉が言うとこの話は終わった。
煌妃は、ここに入ってから何か違和感があった。新参者が現れたときの特有な雰囲気だろうと思っていたが、今になって、その答えがやっと分かった。ここには本当に試衛館側の人間しかいない。もう二人、近藤と同じ立場にいる男がいたはずだ。
「失礼だと思いますが、あの男はここにいらっしゃらないようなのですが?」
あの男、そう煌妃が口に出すと近藤をはじめ山南、土方の目が一瞬揺らいだのに気づいた。〈あの男〉で連想できるほど追い詰められているってこと?何かある、と気づかせるのには十分だった。
「・・・斎藤一。」
煌妃は、その空気を変えるべく考えていた男とは違う男の名を口にした。すると、3人が思っていた人物と違う名前が出たことに、安心したのか小さな安どの溜息が聞こえた。
「・・斎藤は今、見回りに行っている。」
少しぎくしゃくしながら土方が言った。煌妃もそのことに気づかないふりして答える。
「そう、結構有名だから会ってみたかった。」
「へ~、一がねぇ。何で有名なんだ?」
原田は興味深い目を煌妃に向けたが、まさかここで興味を持たれるとは思っていなかったので、煌妃はすぐ話題を変えることにした。ここで斎藤一の話題はまずい。理由はまだ分からないけど里で口を酸っぱくして何度も念押しされたんだもの。
「何言っているんですか。原田さんだって、有名ですよ。花街で色々おもしろいことしているんじゃないですか。」
無邪気に笑いながら煌妃は言った。そして、『具体的に言いますか?』とニコニコ笑いながら付け足した。それを見て、原田は苦笑しながら右手で静止する素振りを見せた。なぜなら、原田の目には、『つまらないですね』と答えた煌妃の笑顔の裏に、閻魔がちらついたのかもしれない。相当焦っていた。
「・・・入隊の件ありがとうございます。早速なんですが、どなたか試合していただけませんか?いい牽制にもなると思うので。」
「では、私が立候補しても良いですか?昨日の続きと言うことで!」
きらきらした顔つきで沖田は土方を見た。そして、煌妃に目を移した沖田の瞳に、『言ったでしょう。貴女なら大丈夫だって』と言われた気がした。
「・・・そうだな。その方がいいだろう。」
「しかたねーな。近藤さんが決めたことなんだ。俺らは従うぜ。」
「そうだね。でも、白狼って呼ぶわけにも行かないよね。名前は・・・?」
「天城朔(てんじょうさく)。それが、この姿の時の名前です。」
「?」
沖田が、不思議な顔で煌妃を見ていた。何か違和感あったって顔してる。天然なんだか鋭いのかよく分からない人だな。
「ふむ。天城くん、よろしく頼むぞ。」
「はい。」
近藤に一礼すると、ちらっと土方を見た。それに気づいた土方は、怪訝そうな顔をしたもののうなずく。
「このことについては、口外無用だ。では、解散!」
「沖田さん、この猫お願いしますね。」
ちょこんと沖田の両手に三毛猫をのせた。その様子を見て沖田はにっこり笑うと、『先に道場に行っていますね』といって部屋を出て行った。素早い。昨日のケガもあるしすぐ試合できないって言いたかったのに。消化不良を起こしている煌妃だったが各々が、部屋を出ようとしたときに土方がまだ話が残っていると目で合図を送った。
「山南さん、近藤さんちょっと話がある。それに、天城。」
「なんだい?土方くん。」
土方を、横目で見ると自分から話すようにと言われているようで気にくわなかったが、仕方なく煌妃は、他の人が出て行ったのを確認すると話を進めた。
0
あなたにおすすめの小説
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
別れし夫婦の御定書(おさだめがき)
佐倉 蘭
歴史・時代
★第11回歴史・時代小説大賞 奨励賞受賞★
嫡男を産めぬがゆえに、姑の策略で南町奉行所の例繰方与力・進藤 又十蔵と離縁させられた与岐(よき)。
離縁後、生家の父の猛反対を押し切って生まれ育った八丁堀の組屋敷を出ると、小伝馬町の仕舞屋に居を定めて一人暮らしを始めた。
月日は流れ、姑の思惑どおり後妻が嫡男を産み、婚家に置いてきた娘は二人とも無事与力の御家に嫁いだ。
おのれに起こったことは綺麗さっぱり水に流した与岐は、今では女だてらに離縁を望む町家の女房たちの代わりに亭主どもから去り状(三行半)をもぎ取るなどをする「公事師(くじし)」の生業(なりわい)をして生計を立てていた。
されどもある日突然、与岐の仕舞屋にとっくの昔に離縁したはずの元夫・又十蔵が転がり込んできて——
※「今宵は遣らずの雨」「大江戸ロミオ&ジュリエット」「大江戸シンデレラ」「大江戸の番人 〜吉原髪切り捕物帖〜」にうっすらと関連したお話ですが単独でお読みいただけます。
【読者賞】江戸の飯屋『やわらぎ亭』〜元武家娘が一膳でほぐす人と心〜
旅する書斎(☆ほしい)
歴史・時代
【第11回歴史・時代小説大賞 読者賞(読者投票1位)受賞】
文化文政の江戸・深川。
人知れず佇む一軒の飯屋――『やわらぎ亭』。
暖簾を掲げるのは、元武家の娘・おし乃。
家も家族も失い、父の形見の包丁一つで町に飛び込んだ彼女は、
「旨い飯で人の心をほどく」を信条に、今日も竈に火を入れる。
常連は、職人、火消し、子どもたち、そして──町奉行・遠山金四郎!?
変装してまで通い詰めるその理由は、一膳に込められた想いと味。
鯛茶漬け、芋がらの煮物、あんこう鍋……
その料理の奥に、江戸の暮らしと誇りが宿る。
涙も笑いも、湯気とともに立ち上る。
これは、舌と心を温める、江戸人情グルメ劇。
アブナイお殿様-月野家江戸屋敷騒動顛末-(R15版)
三矢由巳
歴史・時代
時は江戸、老中水野忠邦が失脚した頃のこと。
佳穂(かほ)は江戸の望月藩月野家上屋敷の奥方様に仕える中臈。
幼い頃に会った千代という少女に憧れ、奥での一生奉公を望んでいた。
ところが、若殿様が急死し事態は一変、分家から養子に入った慶温(よしはる)こと又四郎に侍ることに。
又四郎はずっと前にも会ったことがあると言うが、佳穂には心当たりがない。
海外の事情や英吉利語を教える又四郎に翻弄されるも、惹かれていく佳穂。
一方、二人の周辺では次々に不可解な事件が起きる。
事件の真相を追うのは又四郎や屋敷の人々、そしてスタンダードプードルのシロ。
果たして、佳穂は又四郎と結ばれるのか。
シロの鼻が真実を追い詰める!
別サイトで発表した作品のR15版です。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる