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第弐夜
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「筆頭局長である芹沢鴨はここに呼ばないのですか?」
現在の浪士組には、局長が3人いるはずだ。ここに来るまでに調査で、そう結果が出ている。正義感溢れ、慕われている近藤と真逆な存在である芹沢という男。昼間から酒を飲み、時には暴れ金子を巻き上げる。最近になって、強引な金策が目立っていた。幾ら新撰組の為とは言え、やり過ぎた行為だ。近藤と山南がお互い無言で顔を見ていた。その行動は、煌妃に何かあると伝えるのに十分だった。その沈黙を壊すかのように、土方が話し出そうとしたのを煌妃は割って入った。
「大和屋のこともそうですが、最近の暴挙は特に酷いですね。」
「「「!!」」」
3人の驚いた表情を見て、煌妃は満足そうに笑った。どうやら、当たりらしい。
「どうし・・て。」
「いけませんよ。こんな事で動揺しては。見てる人は見ていますし、気づいている人は気づいてます。それとも、水戸学を学び、天狗党の尊王攘夷思想の流れをくむことを危険視してのことですか?」
そのとき、土方の刀が煌妃の首に向けられた。しかし、煌妃は1つも表情を変えず、これは何の真似だと言うような目を土方に向けた。
「・・・私を斬りますか?もしここで死んでしまったら、怒濤のように押し寄せてきますよ?肉のひとかけらも、血の一滴さえ残らずに・・・存在さえ消されるでしょうね。」
煌妃の冷徹な瞳は、近藤や山南、土方さえも震え上がるほどである。これで人殺しまでしていないって信じられないぐらい。煌妃は、この世の絶望を知っている。だからこそ、できる瞳だと自負している――。
「歳。」
近藤は、土方に刀を引くように命じると、土方は納得しない表情を浮かべながらも刀を鞘に戻した。
「さてと、近藤さん、私が入隊するにあたりお話があります。土方さんはどうしてもこっちの話題の方がいいと思っているし、本当は芹澤さんよりもこっちの話をしてほしそうでしたものね。」
今までの空気をかき消すように姿勢を正し、ふぅっと肩の力を抜くと固く決意した瞳で、近藤と山南を見つめた。
「私は、東北の奥地にある忍の一族です。情報戦は任せてください。多分、いいえ絶対昨夜のような事態に陥ることはごく当たり前のことになるでしょう。それでも近藤さん。本当に私を入隊させますか?」
再び選択の余地をここで与えることにした。それは、頭としての判断を知りたかったからだ。ついていくに値する人なのかとーーだって、別に浪士組でなければいけないことはない。
「天城くん、男に二言はないよ。君が何者であれ、私は君の入隊を許可した。」
優しく微笑む近藤に、涙が溢れそうになるがグッと堪えた。その替わり、自然と笑みがこぼれる。
「あっははは、折角、最後の選択肢を与えたのに・・・ありがとうございます。」
煌妃は、自然に感謝の言葉を発した。それは、どんな意味でなぜ言ったのか自分でも分からなかったが、近藤の言葉がとても嬉しかったのは間違いない。
「過去があって、今がある。この先の道を造るお手伝いを致しましょう。我が一族の名にかけて――。」
煌妃は、丁寧に言うと近藤に頭を下げた。そして、土方にさっきの腹いせをすべく挑戦的な笑みを向けた。
「土方さん、さっきの太刀筋はまだまだですね。せめて首の皮一枚ってところですか?というより、実践向きなんですね。・・・ねぇ、歳三はん。先日はおおきにどした。お陰様で助かりました。もう、頬は大丈夫どすか?」
「――・・・っ!お前、あんときの女かっ!?」
「ダメですよ。近藤さん達にばれちゃうじゃないですか。クスクス。では、私は失礼しますね。沖田さんとも刀を交えなければなりませんから。準備万全で臨みたいので傷も治してきます。」
煌妃は出来るだけ笑いを堪えながらも、一礼すると部屋を出て行った。なにやら、残された部屋で土方の怒鳴り声が聞こえたが聞こえないふりをする。ケンカを売ってきたのは、土方なのだから後始末はやるべきだ。
白狼として会う前、偶然女子の格好をしていた煌妃は、土方に出会っていた。というより、柄の悪い男達に絡まれていたのを助けて貰ったのだ。着物を着ていたため、下手に動くことも出来ずに困っていた。そんなとき、土方が柄の悪い男との間に入ってくれたのだ。しかし、良かったのはそこまで。手が早いというのは、噂で聞いていたがそれが自分の見に降りかかろうとしていたなどとは思ってもいなかった。
『おおきにどした。お陰様で助かりました。あたしは、桜と申します。』
『いいや、ケガがないようで良かった。・・・桜か。いい名だな。』
男の手が頬に伸びる寸前に、悪気もなく話しかけた。
『お名前をお伺いしてよろしいどすか?』
『土方歳三だ。』
印象は、別に悪くはなかった。その後、甘い言葉を囁いたり、抱きしめてきたり大変だったのは覚えている。助けた見返りをこんな風に求めてくるなんて、どうかと思う。だからあまりにもしつこいので、両頬を思い切り叩いてやった。
「今、思い出したら意外と笑える。あの時の表情・・・面白かったわ。」
土方に出会った時のことを思い出しながら、昨日の後始末をしに八木邸を後にした。2匹目が入ってこようとした空間のひずみを修復しておかないと、後々面倒になる可能性がある。それに、沖田と試合をしなければならないので、早めに済まさなければならない。しかしその前に、傷を癒せるところを探さなければ、と煌妃は思っていた。実は、姿を変えられる秘薬があるのもそうだが、煌妃には特殊な事情がある。
煌妃は東北の奥地の忍――龍の末裔言われている。そのおかげか体の作りも通常の人間より優れている部分もある。例えば綺麗な水があれば治癒能力が上がるとか。ただ大量の綺麗な水があれば、傷が綺麗に治るのだから奇跡に近いけどね。
「おいっ!どこに行く。」
急に、後ろから土方の声が聞こえた。どうやら、逃げてきたようだ。意味深げに残してきたからこそ、質問されるのは目に見えている。
「オレ《・・》は、“おいっ”っていう名前じゃないです!!」
「はぁ・・天城。」
「なんです?土方さん。・・・数人つけられていますが?」
煌妃は、ありったけの笑顔を土方に向けた。その気配に、土方も気づいたのか深いため息が漏れた。
現在の浪士組には、局長が3人いるはずだ。ここに来るまでに調査で、そう結果が出ている。正義感溢れ、慕われている近藤と真逆な存在である芹沢という男。昼間から酒を飲み、時には暴れ金子を巻き上げる。最近になって、強引な金策が目立っていた。幾ら新撰組の為とは言え、やり過ぎた行為だ。近藤と山南がお互い無言で顔を見ていた。その行動は、煌妃に何かあると伝えるのに十分だった。その沈黙を壊すかのように、土方が話し出そうとしたのを煌妃は割って入った。
「大和屋のこともそうですが、最近の暴挙は特に酷いですね。」
「「「!!」」」
3人の驚いた表情を見て、煌妃は満足そうに笑った。どうやら、当たりらしい。
「どうし・・て。」
「いけませんよ。こんな事で動揺しては。見てる人は見ていますし、気づいている人は気づいてます。それとも、水戸学を学び、天狗党の尊王攘夷思想の流れをくむことを危険視してのことですか?」
そのとき、土方の刀が煌妃の首に向けられた。しかし、煌妃は1つも表情を変えず、これは何の真似だと言うような目を土方に向けた。
「・・・私を斬りますか?もしここで死んでしまったら、怒濤のように押し寄せてきますよ?肉のひとかけらも、血の一滴さえ残らずに・・・存在さえ消されるでしょうね。」
煌妃の冷徹な瞳は、近藤や山南、土方さえも震え上がるほどである。これで人殺しまでしていないって信じられないぐらい。煌妃は、この世の絶望を知っている。だからこそ、できる瞳だと自負している――。
「歳。」
近藤は、土方に刀を引くように命じると、土方は納得しない表情を浮かべながらも刀を鞘に戻した。
「さてと、近藤さん、私が入隊するにあたりお話があります。土方さんはどうしてもこっちの話題の方がいいと思っているし、本当は芹澤さんよりもこっちの話をしてほしそうでしたものね。」
今までの空気をかき消すように姿勢を正し、ふぅっと肩の力を抜くと固く決意した瞳で、近藤と山南を見つめた。
「私は、東北の奥地にある忍の一族です。情報戦は任せてください。多分、いいえ絶対昨夜のような事態に陥ることはごく当たり前のことになるでしょう。それでも近藤さん。本当に私を入隊させますか?」
再び選択の余地をここで与えることにした。それは、頭としての判断を知りたかったからだ。ついていくに値する人なのかとーーだって、別に浪士組でなければいけないことはない。
「天城くん、男に二言はないよ。君が何者であれ、私は君の入隊を許可した。」
優しく微笑む近藤に、涙が溢れそうになるがグッと堪えた。その替わり、自然と笑みがこぼれる。
「あっははは、折角、最後の選択肢を与えたのに・・・ありがとうございます。」
煌妃は、自然に感謝の言葉を発した。それは、どんな意味でなぜ言ったのか自分でも分からなかったが、近藤の言葉がとても嬉しかったのは間違いない。
「過去があって、今がある。この先の道を造るお手伝いを致しましょう。我が一族の名にかけて――。」
煌妃は、丁寧に言うと近藤に頭を下げた。そして、土方にさっきの腹いせをすべく挑戦的な笑みを向けた。
「土方さん、さっきの太刀筋はまだまだですね。せめて首の皮一枚ってところですか?というより、実践向きなんですね。・・・ねぇ、歳三はん。先日はおおきにどした。お陰様で助かりました。もう、頬は大丈夫どすか?」
「――・・・っ!お前、あんときの女かっ!?」
「ダメですよ。近藤さん達にばれちゃうじゃないですか。クスクス。では、私は失礼しますね。沖田さんとも刀を交えなければなりませんから。準備万全で臨みたいので傷も治してきます。」
煌妃は出来るだけ笑いを堪えながらも、一礼すると部屋を出て行った。なにやら、残された部屋で土方の怒鳴り声が聞こえたが聞こえないふりをする。ケンカを売ってきたのは、土方なのだから後始末はやるべきだ。
白狼として会う前、偶然女子の格好をしていた煌妃は、土方に出会っていた。というより、柄の悪い男達に絡まれていたのを助けて貰ったのだ。着物を着ていたため、下手に動くことも出来ずに困っていた。そんなとき、土方が柄の悪い男との間に入ってくれたのだ。しかし、良かったのはそこまで。手が早いというのは、噂で聞いていたがそれが自分の見に降りかかろうとしていたなどとは思ってもいなかった。
『おおきにどした。お陰様で助かりました。あたしは、桜と申します。』
『いいや、ケガがないようで良かった。・・・桜か。いい名だな。』
男の手が頬に伸びる寸前に、悪気もなく話しかけた。
『お名前をお伺いしてよろしいどすか?』
『土方歳三だ。』
印象は、別に悪くはなかった。その後、甘い言葉を囁いたり、抱きしめてきたり大変だったのは覚えている。助けた見返りをこんな風に求めてくるなんて、どうかと思う。だからあまりにもしつこいので、両頬を思い切り叩いてやった。
「今、思い出したら意外と笑える。あの時の表情・・・面白かったわ。」
土方に出会った時のことを思い出しながら、昨日の後始末をしに八木邸を後にした。2匹目が入ってこようとした空間のひずみを修復しておかないと、後々面倒になる可能性がある。それに、沖田と試合をしなければならないので、早めに済まさなければならない。しかしその前に、傷を癒せるところを探さなければ、と煌妃は思っていた。実は、姿を変えられる秘薬があるのもそうだが、煌妃には特殊な事情がある。
煌妃は東北の奥地の忍――龍の末裔言われている。そのおかげか体の作りも通常の人間より優れている部分もある。例えば綺麗な水があれば治癒能力が上がるとか。ただ大量の綺麗な水があれば、傷が綺麗に治るのだから奇跡に近いけどね。
「おいっ!どこに行く。」
急に、後ろから土方の声が聞こえた。どうやら、逃げてきたようだ。意味深げに残してきたからこそ、質問されるのは目に見えている。
「オレ《・・》は、“おいっ”っていう名前じゃないです!!」
「はぁ・・天城。」
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