呪いの加護を受けたら、懺悔の儀式が始まった。~ごめんなさい!と祟りを恐れたみんなが謝ってくるけど、それは全部偶然でたまたまだ!~

カミキリ虫

文字の大きさ
17 / 28

第17話 呪いの森でのスローライフ

しおりを挟む
「すごい……。本当に家のような空間ができています……」

 セレスさんが空洞の中を見て、感心したように呟いた。

 黒くて頑丈な壁。叩いても、ちょっとやそっとでは破壊されないと思う。
 ボコっと大きく盛り上がった地面を魔法で爆破した結果、出来上がったのはそんな空間だった。

 見事に中身だけくり抜かれていて、大きさは、結構大きい。
 俺とセレスさんが二人で入ってもかなり空間が余っている。少し大きな家の、ひと部屋分の広さはあると思う。

 俺には呪いの加護があり、魔力も呪われたものになっている。そしてその魔力は、良くも悪くもこの呪いの森のものに対し、時には有利に働くようでもあった。

 例えば、このくり抜かれた空間の床。そこに魔力を流せば、地面の土が変化し、硬い床になる。まるで大理石でできたような床に、だ。

 同じように、壁にも魔力を流し、崩れないように形作る。そしてこの森の呪いを、俺の呪いで反発させて打ち消せるように変化させていく。

 そうすれば、とりあえずは家のような空間の完成だ。
 これで一応は、森の生活でも、外敵から身を守ることができるはずだ。

 そして、このまま住むには少し住みずらいだろうから、あとは、他にも色々と用意したほうがいいと思う。

「今の段階でも、もう十分すぎるほどですよ……。だって、こんな、家が……っ。うう……っ」

「……せ、セレスさん」

「す、すみません”……。安心したらなんだか、気が抜けてしまいまして……」

 目元を拭くセレスさん。

 ……やっぱり気を張り詰めすぎていたのだろう。
 そんなセレスさんが、ゆっくり休めるようにしたいと思った。


 * * * * *


 そして、それからの俺は、この森での生活を少しでも安らげるようにするべく、色々行動を始めた。

 森から出る方法がまだ分からない以上、とりあえずは、普通に生活できる場所を作った方がいいということになり、セレスさんもあった方がいいものをいくつかあげてくれた。

 まずは、寝床と食事だ。
 寝床はとりあえずは、森で拾った草木を床に敷いて、その上に布をかけるといった寝床で乗り越えることにした。とはいっても、この森で集められる草木は腐っているため、快適さは期待できない。

 そこで、使用するのは呪いの魔力だ。
 俺はまだあまり魔力の使い方が上手いわけでも、使いこなせるわけでもないから、常に魔力を意識しながら生活するようにして、数日経つ頃にはある程度は使えるようになった。魔力も自分の体の一部だから、一度意識してしまえば、ロストルジアさんが俺の体を前に修復してくれたことも相まって、馴染ませることができるようになっているようだ。

 そして、森に生えている木に触れて、俺の魔力を注ぎ込んでいくと、変化が起こった。

「み、緑が……芽生えました!」

 生命の誕生を見守るかのようなセレスさん。
 目の前には、この腐った森の中で、徐々に緑を取り戻していく腐った木の姿があった。

 この森に生えている木は、呪いの影響で腐っている。
 しかし原因を取り除けば、緑を戻すことができるようだった。

 それが分かれば、やりようはある。

 俺は拠点の周囲に魔力を流していき、この辺りの腐っていた緑を復活させていった。

 そして、それで出来たものがあった。

「……家具が……できてます!」

 ベッドや、テーブルや、食器だ。全て木製だ。

 腐った木が普通の木に変化できるようになったから、それを使用して、木製のモノを用意することができるようになったのだ。

「不恰好ですけど、とりあえずはこれでいきましょう」

「全然、不恰好なんかではないですよ! だって、すごい……。この森にこんなものができるなんて……」

 感極まった様子のセレスさんが、泣きそうになっていた。

 その手元には、とある物も持たれていた。

「水もあります……」

 そう、水だ。
 濁った水ではない。澄んでいる綺麗な水だ。
 透明な輝きのその水には、汚れ一つ浮いてはいない。

 この家の近くにある水場。
 木にやったのと同じように、あの濁った水が溜まっている水場に魔力を注いだ結果、なんとか水を浄化することができたのだ。
 それにより、綺麗な水を飲むことができるようになった。

 一応、この森にも雨は降る。その雨の水は、ここの濁った水に比べると綺麗な方ではある。
 だから今までのセレスさんは、たまに降るその雨を活用していたりもしたとのことだった。

 もちろんそんなに都合よく雨が降るわけでもないし、その雨はこの森の空気に触れた瞬間、じわじわと呪いに汚染されていく。
 それでも、ないよりはあった方がいい雨だ。セレスさんは雨の日はその雨を浴びて、服や体の汚れを落としていたりしたようだ。

 彼女はあまりその時のことは、語りたくはない様子だった。そして、そんな諸々が解決し、綺麗な水を確保できるようになった今、セレスさんは水を飲むたびに、涙を流すようにもなっていた。

「美味しい……、本当に美味しいです……」

「セレスさん……」

 あと、水もあるということで、家の中に風呂も作ったりした。

 そして水の他に、食料のことについてもどうにかしようと思った。

 この森に住んでいる魔物の肉も食べれないわけではない。俺も一度、実際に口にしてみたりした。だけど、進んで食べたいとは思わない味だった。焦げている何かを食べている気分になった。栄養なんかないと思う。
 だから、家の周りに畑を作ることにした。

 これに関しては、奇跡が起こった。
 朝起きたら、枕元に種のようなものが置かれていたのだ。

「「……種がある」」

 ……多分、ロストルジアさんがくれたのだと思う。
 今もどこかで見守っていてくれる彼女が、助けてくれた。そう、思うことにした。

 一応、この森に来てからというもの、ロストルジアさんの声もちょくちょく聞こえていたけど、その種を貰って以降は、ほとんど聞こえなくなった。微かに聞こえることもあるけど、それだけだ。

 多分、そうやって助けてくれた際に、彼女は力を使ったのではないだろうか。だから、その反動で、声が届きにくくなっているのではないだろうか……。ロストルジアさんもロストルジアさんで、自由になんでもできるというわけではないみたいなのだ。

 それでも、そうやって助けてくれた彼女に俺たちは感謝を捧げ、大事に種を植えることにした。
 家の周りの土も、呪いの加護のおかげで浄化することができたため、そこに畑を作り、そこでの栽培だ。

 成長は想像以上に、早いもので、芽は三日ぐらいで出て、そこから数日待つこともなく収穫までできるようになった。
 できたのは、キャベツのような野菜と、にんじんのような野菜。あと、穀物のような不思議な野菜もできて、それを潰して練り込むと、団子のようなものを作れることが判明した。

 そしてそれぞれ収穫しても、またすぐに芽が映えるようになっているようで、食料は安定して確保できるようになった。

「美味しいです……、胃の中に食べ物が染み渡っています……」

 固形物を口にできるようになったことに、セレスさんがもう一度涙を流していた。


 そして、さらに数日経つ頃には、家の中は充実して、普通に暮らせるようになった。
 外に出て色々散策をしていると魔物と戦闘をすることにもなり、その度に、それを倒し、そして呪いの加護のステータスの影響で俺は相手のスキルも得ることができるみたいだった。

 例えば、この森の呪いを無効化する『呪い無効』とか、外敵を退ける『遮断』のスキルとか。

 魔物にもスキルを持っている個体がいるらしく、その魔物を倒せば、俺もそれを使えるようになるみたいなのだ。

 それを使えるようになったことで、さらに家の周囲の守りを固めることができて。
 家自体に『呪い無効』と『遮断』のスキルを使うことで、この森に充満している呪いの影響を受けることもなく、セレスさんも落ち着いて生活ができるようになっていたのだった。


 そして、森の中でこんなものも発見した。

「あ! それは森で拾った武器ですか!?」

「はい。たまに落ちてますよね」

「そうですよ! この森には、そういう武器が眠っているのです。でも呪われているため、扱いには注意しないといけませんが……シバサキくんならその呪いも無効化できるかもしれません」

 家の中、ベッドに腰掛けたセレスさんが、俺が持ち帰った物を興味深そうに見ている。
 自然にセレスさんは俺の呼び方も変わっていた。この森で生活するうちに、お互いに打ち解けていった。

 そして俺の手にあるのは真っ黒な棒状のような物だ。
 この森で拾ったものだ。この森には、探せば、いろんなものが眠っているのだ。

 でも、これは、ちょうどいいかもしれない。
 この形、恐らく武器の類だろうと、予想できる。
 俺たちの武器は心許ないし、セレスさんも武器には困っていると言っていた。

 だから、俺はその武器に魔力を流し、武器を浄化していった。

 すると、出来上がったのはこんな武器だった。


 ・「『宝杖ゴスペルス』」


 色は赤紫色。手に握れるぐらいの杖だ。

「おおぉ……。これは、すごい杖です……。確か、王都の古い文献にも、似たようなものが載っていたような気がします」

 セレスさんが呟く。そして彼女がその杖を握っても、呪いの悪影響を受けることもなく、握れるみたいだった。

 それならということで、この杖はセレスさんに使ってもらうことにした。

「ぜひ、セレスさんに」

「いいのですか……?」

「はい。よろしければ、セレスさんに使ってほしいです」

「あっ、ありがとうございます……。こんなプレゼントまで頂いて……、家も、水も、食料の問題も解決してくれて……。シバサキくんが来てくれてから、私、とっても幸せです……。ありがとっ、大好きっ」

「あっ、ちょっ、セレスさん……」

「んふふ……っ」

 手に『宝杖ゴスペルス』を持ったまま、ぎゅっと俺を後ろから抱きしめるセレスさん。
 その顔には安らいだような笑みが浮かんでいて、そんな彼女の姿を見ていると俺もなんだか安心することができた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

帝国の王子は無能だからと追放されたので僕はチートスキル【建築】で勝手に最強の国を作る!

雪奈 水無月
ファンタジー
帝国の第二王子として生まれたノルは15才を迎えた時、この世界では必ず『ギフト授与式』を教会で受けなくてはいけない。 ギフトは神からの祝福で様々な能力を与えてくれる。 観衆や皇帝の父、母、兄が見守る中… ノルは祝福を受けるのだが…手にしたのはハズレと言われているギフト…【建築】だった。 それを見た皇帝は激怒してノルを国外追放処分してしまう。 帝国から南西の最果ての森林地帯をノルは仲間と共に開拓していく… さぁ〜て今日も一日、街作りの始まりだ!!

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

72時間ワンオペ死した元球児、女神の『ボッタクリ』通販と『絶対破壊不能』のノートPCで異世界最強のコンビニ・スローライフを始める

月神世一
ファンタジー
「剣? 魔法? いいえ、俺の武器は『鈍器になるノートPC』と『時速160kmの剛速球』です」 ​あらすじ ブラックコンビニで72時間連続勤務の末、過労死した元甲子園優勝投手・赤木大地。 目覚めた彼を待っていたのは、コタツでソシャゲ三昧のダメ女神・ルチアナだった。 ​「手違いで死なせちゃった☆ 詫び石代わりにこれあげる」 ​渡されたのは、地球のAmazonもGoogleも使える『絶対破壊不能』のノートPC。 ただし、購入レートは定価の10倍という超ボッタクリ仕様!? ​「ふざけんな! 俺は静かに暮らしたいんだよ!」 ​ブラック労働はもうこりごり。大地は異世界の緩衝地帯「ポポロ村」で、地球の物資とコンビニ知識、そして「うなる右腕(ジャイロボール)」を武器に、悠々自適なスローライフを目指す! ​……はずが、可愛い月兎族の村長を助けたり、腹ペコのエルフ王女を餌付けしたり、気づけば村の英雄に!? ​元球児が投げる「紅蓮の魔球」が唸り、女神の「ボッタクリ通販」が世界を変える! 異世界コンビニ・コメディ、開店ガラガラ!

「餌代の無駄」と追放されたテイマー、家族(ペット)が装備に祝福を与えていた。辺境で美少女化する家族とスローライフ

天音ねる(旧:えんとっぷ)
ファンタジー
【祝:男性HOT18位】Sランクパーティ『紅蓮の剣』で、戦闘力のない「生産系テイマー」として雑用をこなす心優しい青年、レイン。 彼の育てる愛らしい魔物たちが、実はパーティの装備に【神の祝福】を与え、その強さの根源となっていることに誰も気づかず、仲間からは「餌代ばかりかかる寄生虫」と蔑まれていた。 「お前はもういらない」 ついに理不尽な追放宣告を受けるレイン。 だが、彼と魔物たちがパーティを去った瞬間、最強だったはずの勇者の聖剣はただの鉄クズに成り果てた。祝福を失った彼らは、格下のモンスターに惨敗を喫する。 ――彼らはまだ、自分たちが捨てたものが、どれほど偉大な宝だったのかを知らない。 一方、レインは愛する魔物たち(スライム、ゴブリン、コカトリス、マンドラゴラ)との穏やかな生活を求め、人里離れた辺境の地で新たな暮らしを始める。 生活のためにギルドへ持ち込んだ素材は、実は大陸の歴史を塗り替えるほどの「神話級」のアイテムばかりだった!? 彼の元にはエルフやドワーフが集い、静かな湖畔の廃屋は、いつしか世界が注目する「聖域」へと姿を変えていく。 そして、レインはまだ知らない。 夜な夜な、彼が寝静まった後、愛らしい魔物たちが【美少女】の姿となり、 「れーんは、きょーも優しかったの! だからぽるん、いーっぱいきらきらジェル、あげたんだよー!」 「わ、私、今日もちゃんと硬い石、置けました…! レイン様、これがあれば、きっともう危ない目に遭いませんよね…?」 と、彼を巡って秘密のお茶会を繰り広げていることを。 そして、彼が築く穏やかな理想郷が、やがて大国の巨大な陰謀に巻き込まれていく運命にあることを――。 理不尽に全てを奪われた心優しいテイマーが、健気な“家族”と共に、やがて世界を動かす主となる。 王道追放ざまぁ × 成り上がりスローライフ × 人外ハーモニー! HOT男性49位(2025年9月3日0時47分) →37位(2025年9月3日5時59分)→18位(2025年9月5日10時16分)

【状態異常無効】の俺、呪われた秘境に捨てられたけど、毒沼はただの温泉だし、呪いの果実は極上の美味でした

夏見ナイ
ファンタジー
支援術師ルインは【状態異常無効】という地味なスキルしか持たないことから、パーティを追放され、生きては帰れない『魔瘴の森』に捨てられてしまう。 しかし、彼にとってそこは楽園だった!致死性の毒沼は極上の温泉に、呪いの果実は栄養満点の美味に。唯一無二のスキルで死の土地を快適な拠点に変え、自由気ままなスローライフを満喫する。 やがて呪いで石化したエルフの少女を救い、もふもふの神獣を仲間に加え、彼の楽園はさらに賑やかになっていく。 一方、ルインを捨てた元パーティは崩壊寸前で……。 これは、追放された青年が、意図せず世界を救う拠点を作り上げてしまう、勘違い無自覚スローライフ・ファンタジー!

《レベル∞》の万物創造スキルで追放された俺、辺境を開拓してたら気づけば神々の箱庭になっていた

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティーの雑用係だったカイは、魔王討伐後「無能」の烙印を押され追放される。全てを失い、死を覚悟して流れ着いた「忘れられた辺境」。そこで彼のハズレスキルは真の姿《万物創造》へと覚醒した。 無から有を生み、世界の理すら書き換える神の如き力。カイはまず、生きるために快適な家を、豊かな畑を、そして清らかな川を創造する。荒れ果てた土地は、みるみるうちに楽園へと姿を変えていった。 やがて、彼の元には行き場を失った獣人の少女やエルフの賢者、ドワーフの鍛冶師など、心優しき仲間たちが集い始める。これは、追放された一人の青年が、大切な仲間たちと共に理想郷を築き、やがてその地が「神々の箱庭」と呼ばれるまでの物語。

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

処理中です...