22 / 29
10.二十三日目・新居
第22話
しおりを挟む
いつもより、ちょっとだけ長風呂をした後、ロランが待ってる住処に戻る。朝に水浴びを済ませていたから留守番になっていたロランは、俺たちが揃って戻ると、マティアスの虫除けの泥を身体に塗りながら、「遅い」と素っ気なく言ったけど、ちょっとホッとした顔をしたのが、なんだか憎めない。
やっぱり一人は寂しいよね。
「あいつはいつまでここにいるつもりなんだ」
なんて、うんざりした顔でマティアスは言うけれど、出ていけとは言わない。三人しかいない島で、一人を追い出すのは酷なことだと、きっとマティアスも思っているのだ。それと、昨夜の俺との約束を守ってくれているのか、二人ともが、ギリギリ仲良くしてくれているのが、見ていてちょっと楽しい。
「楽しそうに帰ってきてたけど、何話してたの?」
「えっと、魔法が使えたら、家を作るって話」
「魔法で? そんな魔法……」
「聞いたことなくてもいいの! もしも、の話なんだから」
「なるほど。で、そのもしもの話で、一体どんな家を作ることになったの?」
「えっとねー……」
焚き火のそばに落ちていた、ちょうど持ちやすいサイズの枝を拾うと、俺は地面に実物大で間取りをガリガリと描いていく。俺の描く線を、虫除けの泥パックを塗り終えた二人が、興味深そうに眺めにくる。
「ここが玄関でー。こっちがくつろぐスペース。お風呂はここ」
線で区切って書いた玄関から、マティアスが入ってきた。
「風呂の中のこの線は何だ?」
「湯船だよ。たっぷりのお湯を溜めて、肩まで浸かるの」
「必要なのか?」
「絶対いるよ! もっと大きくてもいいくらい」
「水汲みで日が暮れてしまうぞ」
「もうっ。夢がないなぁ。じゃあ、魔法でこの湯船は温泉になってて、ずっとお湯が湧き出てるから、水汲みはナシ。あ、それなら湯船も背の高い二人が、足を伸ばしても余裕で入れるくらいに、もっと大きくしておこう」
引いてあった線をザッザッと足で消して、ガリガリガリ……と、湯船を三倍くらいに拡張し直す。描き直している間に、ロランは線を踏まないように移動して、奥の大きな部屋に立って俺を呼ぶ。
「カイト、こっちはトイレかい?」
「寝室だよ! そんなデカいトイレ、落ち着かないでしょ」
「夢がないなぁ。今まで川で用を足してたんだから、急に狭くなったら便秘になるよ」
ぐぬぬ。
俺は風呂場近くにトイレを描いてから、持ってた枝の先を玄関にスイっと向ける。
「じゃあロランは今までどおり川でどうぞ。俺のトイレはね、無限やわらかトイレットペーパーに、消臭機能付き・五段階調節のウォシュレットを完備させるから」
「ごだんかいうぉしゅれ?」
あ、そうか。中世の世界観にウォシュレットはオーバーテクノロジーだった。
「うーん……。ま、空想の魔法だからヨシ。とにかくすごいの。俺たちの家のトイレは、すごいトイレってこと」
もう風呂もトイレも、冷たい川じゃなければなんでもいい。
「じゃあ俺は家のすごいトイレを使う」
マティアスが俺に一票を入れる。
「マティアスは家のトイレを使うんだって。ロランはどうする?」
「ずるいっ。僕だって家のを使うよ!」
「どうぞどうぞ。後悔はさせません。よし、並ばないようにトイレ3個だ」
トイレのことで折り合いがついて、三人で地面の家を見ながら笑いあう。
ままごとみたいな遊びなのに、楽しくなってきた。
「寝室にデカいベッドを置けば、俺もカイトも落ちる心配がない」
「いや、なんで二人で寝る前提なのさ。今は落下防止でマティアスと同じ寝床だけど、この家は三人それぞれの部屋を持てるんだよ」
「……じゃあ、今夜から別々の木で寝よう。さよならだ」
「えっ、なんで」
「カイトも木の上で眠るのに慣れてきただろう。魔法の家で俺を用なしにするなら、今夜から一人で寝ればいい」
あれ……、拗ねたのか?
これはもしも、の夢の話であって、現実のベッドは真っ暗な森の木の上だよ?
そこでぐっすり眠れるのも、マティアスの腕の中だからだし。
(魔物だっているって、聞いたところだし……)
すると、急に森の奥から、鳥とか獣の鳴き声が聞こえてくるし、なんだか木の葉のざわめきも気になってくる。
い、いいもん。俺にはロランがいるもん。
意地悪してきたマティアスにぷいっとして、ロランを窺うと、ニコニコした笑顔で拒否られた。
「別部屋? 僕も、カイトの家ではカイトと一緒のベッドで寝たいなぁ」
今度は俺だけが一人部屋で一票になってしまった。
「個室……だよ? 良くない?」
「大きなベッドだと、毎晩、甘え放題だぞ?」
「大きなベッドの上で、もっと甘えさせてあげるよ」
――ごくり……。
俺は壁を消して、寝室を大きくして、どデカいベッドを用意する。
「やっぱりカイトが一番エッチだな」
「これ、三人用サイズだよね?」
ええーい。うるさい、うるさい!
そんなやりとりを、あーでもない、こーでもない、と繰り返して、男のこだわりハウスはついに完成した。
「できたー!」
三人ともが夢中になりすぎて、もう日が傾く頃になってきている。
焚き火が小さくなってきていることに気づいたマティアスが、枝を焼べるために俺から離れ、ロランが暗くなる前にと、水汲みの桶を取りに行く。
もうあとはご飯を食べて寝るだけの時間になっていて、地面に描いた線は、徐々に見えにくくなってきていた。
叶わない夢を三人で語り合った時間が楽しすぎて、夜に溶けていく地面を見ていると、ものすごく寂しい。
俺はぽつりと、願いを込めて呟いた。
「こんな楽しい家に、住みたいなぁ……」
次の瞬間、マティアスとロランが驚いたように同時に叫んだ。
「何をしたんだ!」
「何したのカイト!」
二人から急に怒鳴られて、びっくりして二人の方へ振り向く。
「ほぇっ……?」
呑気な返事の俺に舌打ちしたマティアスが、初対面時のタックルを彷彿とさせる勢いで走り寄ってくる。ロランも飛ぶようなスピードで俺に向かって突進してくる。そして、マティアスが俺の右手を鷲掴むと、そのまま掴んだ腕を引っ張って、焚き火を背にした何もない前方へ突き出させ、背後から抱き込むように俺を支え、ロランは俺を庇うように覆い被さってきて。俺は二人に、まるで衝撃に備えるみたいに身を低くさせられた。この間、およそ二、三秒。
カッ――!!
俺の右の手のひらから放たれた眩い閃光が、辺り一面を昼間より眩しい白一色に染めて、景色と音を丸呑みにする。
「ぐっ!」
「くぅっ」
「ぎゃあぁぁ!」
二人が支えてくれていなかったら、一瞬で空に舞い上がっていった焚き火やゴザのように、俺も吹き飛んでいたんじゃないかというほどの爆風が、光の後に遅れて巻き起こり、さらに勢いを増して、そこらじゅうの木の葉も舞い上げ、森を揺さぶる。
「な……なんか、なんか出たぁぁぁ!」
俺の右手から放出されるエネルギー弾らしきものに、子供のころ笑って見てた芸人さんのネタみたいな言葉しか出てこない。
「なんか出てるぅぅ!」
「いいから早くこれを止めろ!」
「カイト、止めるんだ!」
「知らない知らない! 出し方も止め方も知らないー!」
「まじかよ……!」
右手から発生するこの光の嵐が鎮まるまで、たっぷり五分ほど。
その間を三人で必死にその場でうずくまって耐え続け、手のひらから放出されていた光がようやく萎んで消えてしまうと、何事もなかったように森は静寂を保っていて、俺たちだけが、髪の毛をボサボサにしてヘトヘトになって残される。
そして、まだ呆然としていたそんな俺たちの目の前に、明かりの灯った大きなログハウスが建っていた。
「!?」
「!?」
「わぁ!」
家の前で目を見開いて固まるマティアスとロランに気づかず、俺は目を輝かせる。
早速家の中へ入ろうとする俺の肩を、当然のようにマティアスが掴んで引き止めた。
「待て待て」
「何? マティアスは入らないの?」
「怪しいだろ、どう見ても」
「でも、俺から出てきたよ?」
「……どうやって出したんだ……?」
「えっと……知らない」
ニコッとする俺の笑顔にドン引きして、マティアスがうずくまる。
「ありえないんだよ……。家一軒出すなんて、どう考えても魔法じゃないだろ……。神々の権能レベルだろ……」
そのマティアスの肩に、ロランがポンと手を置いて慰める仕草をしていた。
なんだか分からないが、二人の意思が疎通している。
家に入る気のないマティアスとロランを置いて、俺は我慢できずに新居のドアを勢いよくオープンした。
「ひゃあああ!」
家の中に入って叫んだ俺に、二人が慌てて追いかけてきてくれる。
「どうしたっ、大丈夫か!?」
「何かいたの!?」
彼らの気遣いには申し訳ないけれど、これは喜びの雄叫びだ。
「二人とも、見てよ! さっき俺たちが考えた家だよ! 大きな湯船も、すごいトイレも、ふかふかでデカいベッドも! それに、キッチンの鍋に料理までできてるよ!」
なにより空調まで効いてて、涼しくて快適!
俺たちの夢と希望が、あっという間に全部叶っていたのだ。
「魔法だ……。マジで……マジのマジで、コレ神様のおかげじゃん! すげぇー! バイトの神様じゃなかった! マジの神様だったぁ! 疑ってごめんなさいっ。友よ、ありがとう! ありがとう神様ぁ!」
リビングで両手を上げて飛び跳ねて、俺は天に向かって感謝を伝える。
言葉も出せず呆然と室内を見回していた二人も、しばらくすると無限やわらかペーパーと、五段階ウォシュレットに感動して騒いでいた。なかなか戻って来ないと思ったら、また長い連れションをしている。なんで?
そんな神様の大盤振る舞いな加護に興奮冷めやらぬところだけど、家中の床や壁を泥だらけにしているマティアスたちの姿に気づいて、俺は慌てて声を掛けた。
「二人とも、お風呂! まずお風呂!」
やっぱり一人は寂しいよね。
「あいつはいつまでここにいるつもりなんだ」
なんて、うんざりした顔でマティアスは言うけれど、出ていけとは言わない。三人しかいない島で、一人を追い出すのは酷なことだと、きっとマティアスも思っているのだ。それと、昨夜の俺との約束を守ってくれているのか、二人ともが、ギリギリ仲良くしてくれているのが、見ていてちょっと楽しい。
「楽しそうに帰ってきてたけど、何話してたの?」
「えっと、魔法が使えたら、家を作るって話」
「魔法で? そんな魔法……」
「聞いたことなくてもいいの! もしも、の話なんだから」
「なるほど。で、そのもしもの話で、一体どんな家を作ることになったの?」
「えっとねー……」
焚き火のそばに落ちていた、ちょうど持ちやすいサイズの枝を拾うと、俺は地面に実物大で間取りをガリガリと描いていく。俺の描く線を、虫除けの泥パックを塗り終えた二人が、興味深そうに眺めにくる。
「ここが玄関でー。こっちがくつろぐスペース。お風呂はここ」
線で区切って書いた玄関から、マティアスが入ってきた。
「風呂の中のこの線は何だ?」
「湯船だよ。たっぷりのお湯を溜めて、肩まで浸かるの」
「必要なのか?」
「絶対いるよ! もっと大きくてもいいくらい」
「水汲みで日が暮れてしまうぞ」
「もうっ。夢がないなぁ。じゃあ、魔法でこの湯船は温泉になってて、ずっとお湯が湧き出てるから、水汲みはナシ。あ、それなら湯船も背の高い二人が、足を伸ばしても余裕で入れるくらいに、もっと大きくしておこう」
引いてあった線をザッザッと足で消して、ガリガリガリ……と、湯船を三倍くらいに拡張し直す。描き直している間に、ロランは線を踏まないように移動して、奥の大きな部屋に立って俺を呼ぶ。
「カイト、こっちはトイレかい?」
「寝室だよ! そんなデカいトイレ、落ち着かないでしょ」
「夢がないなぁ。今まで川で用を足してたんだから、急に狭くなったら便秘になるよ」
ぐぬぬ。
俺は風呂場近くにトイレを描いてから、持ってた枝の先を玄関にスイっと向ける。
「じゃあロランは今までどおり川でどうぞ。俺のトイレはね、無限やわらかトイレットペーパーに、消臭機能付き・五段階調節のウォシュレットを完備させるから」
「ごだんかいうぉしゅれ?」
あ、そうか。中世の世界観にウォシュレットはオーバーテクノロジーだった。
「うーん……。ま、空想の魔法だからヨシ。とにかくすごいの。俺たちの家のトイレは、すごいトイレってこと」
もう風呂もトイレも、冷たい川じゃなければなんでもいい。
「じゃあ俺は家のすごいトイレを使う」
マティアスが俺に一票を入れる。
「マティアスは家のトイレを使うんだって。ロランはどうする?」
「ずるいっ。僕だって家のを使うよ!」
「どうぞどうぞ。後悔はさせません。よし、並ばないようにトイレ3個だ」
トイレのことで折り合いがついて、三人で地面の家を見ながら笑いあう。
ままごとみたいな遊びなのに、楽しくなってきた。
「寝室にデカいベッドを置けば、俺もカイトも落ちる心配がない」
「いや、なんで二人で寝る前提なのさ。今は落下防止でマティアスと同じ寝床だけど、この家は三人それぞれの部屋を持てるんだよ」
「……じゃあ、今夜から別々の木で寝よう。さよならだ」
「えっ、なんで」
「カイトも木の上で眠るのに慣れてきただろう。魔法の家で俺を用なしにするなら、今夜から一人で寝ればいい」
あれ……、拗ねたのか?
これはもしも、の夢の話であって、現実のベッドは真っ暗な森の木の上だよ?
そこでぐっすり眠れるのも、マティアスの腕の中だからだし。
(魔物だっているって、聞いたところだし……)
すると、急に森の奥から、鳥とか獣の鳴き声が聞こえてくるし、なんだか木の葉のざわめきも気になってくる。
い、いいもん。俺にはロランがいるもん。
意地悪してきたマティアスにぷいっとして、ロランを窺うと、ニコニコした笑顔で拒否られた。
「別部屋? 僕も、カイトの家ではカイトと一緒のベッドで寝たいなぁ」
今度は俺だけが一人部屋で一票になってしまった。
「個室……だよ? 良くない?」
「大きなベッドだと、毎晩、甘え放題だぞ?」
「大きなベッドの上で、もっと甘えさせてあげるよ」
――ごくり……。
俺は壁を消して、寝室を大きくして、どデカいベッドを用意する。
「やっぱりカイトが一番エッチだな」
「これ、三人用サイズだよね?」
ええーい。うるさい、うるさい!
そんなやりとりを、あーでもない、こーでもない、と繰り返して、男のこだわりハウスはついに完成した。
「できたー!」
三人ともが夢中になりすぎて、もう日が傾く頃になってきている。
焚き火が小さくなってきていることに気づいたマティアスが、枝を焼べるために俺から離れ、ロランが暗くなる前にと、水汲みの桶を取りに行く。
もうあとはご飯を食べて寝るだけの時間になっていて、地面に描いた線は、徐々に見えにくくなってきていた。
叶わない夢を三人で語り合った時間が楽しすぎて、夜に溶けていく地面を見ていると、ものすごく寂しい。
俺はぽつりと、願いを込めて呟いた。
「こんな楽しい家に、住みたいなぁ……」
次の瞬間、マティアスとロランが驚いたように同時に叫んだ。
「何をしたんだ!」
「何したのカイト!」
二人から急に怒鳴られて、びっくりして二人の方へ振り向く。
「ほぇっ……?」
呑気な返事の俺に舌打ちしたマティアスが、初対面時のタックルを彷彿とさせる勢いで走り寄ってくる。ロランも飛ぶようなスピードで俺に向かって突進してくる。そして、マティアスが俺の右手を鷲掴むと、そのまま掴んだ腕を引っ張って、焚き火を背にした何もない前方へ突き出させ、背後から抱き込むように俺を支え、ロランは俺を庇うように覆い被さってきて。俺は二人に、まるで衝撃に備えるみたいに身を低くさせられた。この間、およそ二、三秒。
カッ――!!
俺の右の手のひらから放たれた眩い閃光が、辺り一面を昼間より眩しい白一色に染めて、景色と音を丸呑みにする。
「ぐっ!」
「くぅっ」
「ぎゃあぁぁ!」
二人が支えてくれていなかったら、一瞬で空に舞い上がっていった焚き火やゴザのように、俺も吹き飛んでいたんじゃないかというほどの爆風が、光の後に遅れて巻き起こり、さらに勢いを増して、そこらじゅうの木の葉も舞い上げ、森を揺さぶる。
「な……なんか、なんか出たぁぁぁ!」
俺の右手から放出されるエネルギー弾らしきものに、子供のころ笑って見てた芸人さんのネタみたいな言葉しか出てこない。
「なんか出てるぅぅ!」
「いいから早くこれを止めろ!」
「カイト、止めるんだ!」
「知らない知らない! 出し方も止め方も知らないー!」
「まじかよ……!」
右手から発生するこの光の嵐が鎮まるまで、たっぷり五分ほど。
その間を三人で必死にその場でうずくまって耐え続け、手のひらから放出されていた光がようやく萎んで消えてしまうと、何事もなかったように森は静寂を保っていて、俺たちだけが、髪の毛をボサボサにしてヘトヘトになって残される。
そして、まだ呆然としていたそんな俺たちの目の前に、明かりの灯った大きなログハウスが建っていた。
「!?」
「!?」
「わぁ!」
家の前で目を見開いて固まるマティアスとロランに気づかず、俺は目を輝かせる。
早速家の中へ入ろうとする俺の肩を、当然のようにマティアスが掴んで引き止めた。
「待て待て」
「何? マティアスは入らないの?」
「怪しいだろ、どう見ても」
「でも、俺から出てきたよ?」
「……どうやって出したんだ……?」
「えっと……知らない」
ニコッとする俺の笑顔にドン引きして、マティアスがうずくまる。
「ありえないんだよ……。家一軒出すなんて、どう考えても魔法じゃないだろ……。神々の権能レベルだろ……」
そのマティアスの肩に、ロランがポンと手を置いて慰める仕草をしていた。
なんだか分からないが、二人の意思が疎通している。
家に入る気のないマティアスとロランを置いて、俺は我慢できずに新居のドアを勢いよくオープンした。
「ひゃあああ!」
家の中に入って叫んだ俺に、二人が慌てて追いかけてきてくれる。
「どうしたっ、大丈夫か!?」
「何かいたの!?」
彼らの気遣いには申し訳ないけれど、これは喜びの雄叫びだ。
「二人とも、見てよ! さっき俺たちが考えた家だよ! 大きな湯船も、すごいトイレも、ふかふかでデカいベッドも! それに、キッチンの鍋に料理までできてるよ!」
なにより空調まで効いてて、涼しくて快適!
俺たちの夢と希望が、あっという間に全部叶っていたのだ。
「魔法だ……。マジで……マジのマジで、コレ神様のおかげじゃん! すげぇー! バイトの神様じゃなかった! マジの神様だったぁ! 疑ってごめんなさいっ。友よ、ありがとう! ありがとう神様ぁ!」
リビングで両手を上げて飛び跳ねて、俺は天に向かって感謝を伝える。
言葉も出せず呆然と室内を見回していた二人も、しばらくすると無限やわらかペーパーと、五段階ウォシュレットに感動して騒いでいた。なかなか戻って来ないと思ったら、また長い連れションをしている。なんで?
そんな神様の大盤振る舞いな加護に興奮冷めやらぬところだけど、家中の床や壁を泥だらけにしているマティアスたちの姿に気づいて、俺は慌てて声を掛けた。
「二人とも、お風呂! まずお風呂!」
42
あなたにおすすめの小説
弟がガチ勢すぎて愛が重い~魔王の座をささげられたんだけど、どうしたらいい?~
マツヲ。
BL
久しぶりに会った弟は、現魔王の長兄への謀反を企てた張本人だった。
王家を恨む弟の気持ちを知る主人公は死を覚悟するものの、なぜかその弟は王の座を捧げてきて……。
というヤンデレ弟×良識派の兄の話が読みたくて書いたものです。
この先はきっと弟にめっちゃ執着されて、おいしく食われるにちがいない。
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
冷酷無慈悲なラスボス王子はモブの従者を逃がさない
北川晶
BL
冷徹王子に殺されるモブ従者の子供時代に転生したので、死亡回避に奔走するけど、なんでか婚約者になって執着溺愛王子から逃げられない話。
ノワールは四歳のときに乙女ゲーム『花びらを恋の数だけ抱きしめて』の世界に転生したと気づいた。自分の役どころは冷酷無慈悲なラスボス王子ネロディアスの従者。従者になってしまうと十八歳でラスボス王子に殺される運命だ。
四歳である今はまだ従者ではない。
死亡回避のためネロディアスにみつからぬようにしていたが、なぜかうまくいかないし、その上婚約することにもなってしまった??
十八歳で死にたくないので、婚約も従者もごめんです。だけど家の事情で断れない。
こうなったら婚約も従者契約も撤回するよう王子を説得しよう!
そう思ったノワールはなんとか策を練るのだが、ネロディアスは撤回どころかもっと執着してきてーー!?
クールで理論派、ラスボスからなんとか逃げたいモブ従者のノワールと、そんな従者を絶対逃がさない冷酷無慈悲?なラスボス王子ネロディアスの恋愛頭脳戦。
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件
表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。
病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。
この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。
しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。
ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。
強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。
これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。
甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。
本編完結しました。
続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください
獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果
ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。
そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。
2023/04/06 後日談追加
転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…
月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた…
転生したと気づいてそう思った。
今世は周りの人も優しく友達もできた。
それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。
前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。
前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。
しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。
俺はこの幸せをなくならせたくない。
そう思っていた…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる