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vol.3
失恋
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●●●●●●●
翌日。
「おい、起きろ」
ん……?もう朝……?私、眠ってたの?
……眠れたんだ……。
昨日の旬の一件がショックで、きっと眠れないと思っていたのに。
……そうか、眠れたのか……。
そういえば昨日、失恋しちゃた私を雪野先輩が慰めてくれたんだよなー……。
「先輩……昨日はありがとうございました」
私は先輩にガラッガラに掠れた声でお礼を言ったけど、先輩はそれについて返事をしなかった。
なんだ、まだ夢かな?ああ、夢だな、多分。
「瀬里」
ん?あれ、現実?
やたらと近いところで声がして、私は片眼だけをそっと開けた。
ベッドに寝そべっている私を、雪野先輩が見下ろしている。夢じゃなかったみたいだ。
しかも勝手に入ってきてるしっ!
そりゃ私は居候だし先輩の家だけど、もしも裸で寝てたらどーすんのっ!
私は冷や汗の出る思いで先輩を見つめたけど、先輩はなんとも思ってないみたいで、
「今日は俺が先に行くから。それと美術教室には送ってやる。勝手に行くなよ」
ああ……そういや、昨日もそんな事言ってたような……。
私はムクッと起き上がった。
「いい……。私ひとりで大丈夫」
だって、雪野先輩に送り迎えなんてしてもらったのが学校の女子にバレたらどーなる?!って話よ。
雪野翔ファンクラブの面々に取り囲まれるのは確実でしょ?その後はやれ付き合ってるのか、どんな方法で射止めたのかだの、機関銃を乱射する勢いで質問されるに違いない。挙げ句の果てに一緒に住んでるなんて知られた暁には、確実に処刑だわ。
やだやだ、怖いし正直言って面倒。
雪野先輩は断った私を一瞥すると、こう言い放った。
「お前に拒否権はないし、美術教室の帰りにちょっと付き合ってもらう」
えーっ!!
凄く嫌なんだけど。
「でも……美術教室から帰ったらテスト勉強しなきゃ……私、数学が苦手で」
「勉強なら俺がみてやる」
「えっ?!」
私はマジマジと雪野先輩を見つめた。
この人、勉強デキるの?!賢いの?!
イケメン暴走族の分際で頭脳明晰なんて、一昔前の少女漫画の裏番じゃあるまいし。
……嘘なんじゃない?
取り敢えず私を用事に付き合わせるだけ付き合わせて、デタラメ我流数学を叩き込む気じゃないでしょーね?!
「……なんだその眼は」
ハッ!
知らず知らずのうちに疑いの眼差しを向けていたらしく、雪野先輩は私を嫌そうに見た。
「勉強とか、デキるんですか?」
うわ、しまったっ!
心の声をリアルに発してしまった私を、先輩はギラリと睨んだ。
「いや、あの、その」
「いいな」
言うなり踵を返して部屋から出ていってしまった雪野先輩の背を、私はため息と共に見つめるしかなかった。
●●●●●●
「夏本。お前、どうしたんだ。両目が恐ろしく腫れてるぞ。巨大ミミズでも見たのか?!」
始業チャイムと同時に教室にやって来た物理担当の学年主任が、私の顔を見るなり息を飲んだ。
その声に、クラスメイトが一斉に一番後ろの席の私を振り返る。
「きゃあ、瀬里、大丈夫?!」
「ヤバイぞ、冷やしてこいよ」
皆が心配する中、学年主任は続けた。
「俺も子供の頃、巨大ミミズを見た途端にすげぇ眼が腫れたんだよ。ちょうど今のお前みたいに」
……思春期ナメんなよ。私はね、女子高生なのよ。女子高生ともなれば日々色々あるんだっつーの。
失恋だよ、失恋!!
それも、何年も何年も想い続けた相手にだよ!?
何が巨大ミミズよ、お前と一緒にすんなっ。
そんな暴言を吐けるわけもなく私は、保健室に行くことを勧めてくれた先生の好意に甘えて教室を出た。
……確かに瞼が重い。
泣きながら寝ると、こんなにも眼が腫れるなんて。
「失礼します……」
保健室のドアを開けてすぐ、私は後悔した。
だって……旬がいたから。
足首に真っ白な包帯を巻いた旬が椅子に腰かけ、ドアの開く音にこちらをフッと見たのだ。咄嗟に私は立ち尽くした。
「先生なら、さっき出てったよ」
旬が気まずそうに口を開き、私はいたたまれずに身を翻した。
見られたくなかった。泣き腫らしたこの顔を見られちゃうなんて、なんて最悪なの。今頃旬はきっと思ってる。瀬里はこんなに泣き腫らすほど俺が好きなんだって。
真実だけど惨めで、知られたくなかった。
私は保健室を諦めると西側のトイレを目指した。
トイレでハンカチ濡らして冷やそう。
濡らしたハンカチを持ったまま少し引き返し、階段を一番上まで登ると私は屋上に続くドアを開けた。
翌日。
「おい、起きろ」
ん……?もう朝……?私、眠ってたの?
……眠れたんだ……。
昨日の旬の一件がショックで、きっと眠れないと思っていたのに。
……そうか、眠れたのか……。
そういえば昨日、失恋しちゃた私を雪野先輩が慰めてくれたんだよなー……。
「先輩……昨日はありがとうございました」
私は先輩にガラッガラに掠れた声でお礼を言ったけど、先輩はそれについて返事をしなかった。
なんだ、まだ夢かな?ああ、夢だな、多分。
「瀬里」
ん?あれ、現実?
やたらと近いところで声がして、私は片眼だけをそっと開けた。
ベッドに寝そべっている私を、雪野先輩が見下ろしている。夢じゃなかったみたいだ。
しかも勝手に入ってきてるしっ!
そりゃ私は居候だし先輩の家だけど、もしも裸で寝てたらどーすんのっ!
私は冷や汗の出る思いで先輩を見つめたけど、先輩はなんとも思ってないみたいで、
「今日は俺が先に行くから。それと美術教室には送ってやる。勝手に行くなよ」
ああ……そういや、昨日もそんな事言ってたような……。
私はムクッと起き上がった。
「いい……。私ひとりで大丈夫」
だって、雪野先輩に送り迎えなんてしてもらったのが学校の女子にバレたらどーなる?!って話よ。
雪野翔ファンクラブの面々に取り囲まれるのは確実でしょ?その後はやれ付き合ってるのか、どんな方法で射止めたのかだの、機関銃を乱射する勢いで質問されるに違いない。挙げ句の果てに一緒に住んでるなんて知られた暁には、確実に処刑だわ。
やだやだ、怖いし正直言って面倒。
雪野先輩は断った私を一瞥すると、こう言い放った。
「お前に拒否権はないし、美術教室の帰りにちょっと付き合ってもらう」
えーっ!!
凄く嫌なんだけど。
「でも……美術教室から帰ったらテスト勉強しなきゃ……私、数学が苦手で」
「勉強なら俺がみてやる」
「えっ?!」
私はマジマジと雪野先輩を見つめた。
この人、勉強デキるの?!賢いの?!
イケメン暴走族の分際で頭脳明晰なんて、一昔前の少女漫画の裏番じゃあるまいし。
……嘘なんじゃない?
取り敢えず私を用事に付き合わせるだけ付き合わせて、デタラメ我流数学を叩き込む気じゃないでしょーね?!
「……なんだその眼は」
ハッ!
知らず知らずのうちに疑いの眼差しを向けていたらしく、雪野先輩は私を嫌そうに見た。
「勉強とか、デキるんですか?」
うわ、しまったっ!
心の声をリアルに発してしまった私を、先輩はギラリと睨んだ。
「いや、あの、その」
「いいな」
言うなり踵を返して部屋から出ていってしまった雪野先輩の背を、私はため息と共に見つめるしかなかった。
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「夏本。お前、どうしたんだ。両目が恐ろしく腫れてるぞ。巨大ミミズでも見たのか?!」
始業チャイムと同時に教室にやって来た物理担当の学年主任が、私の顔を見るなり息を飲んだ。
その声に、クラスメイトが一斉に一番後ろの席の私を振り返る。
「きゃあ、瀬里、大丈夫?!」
「ヤバイぞ、冷やしてこいよ」
皆が心配する中、学年主任は続けた。
「俺も子供の頃、巨大ミミズを見た途端にすげぇ眼が腫れたんだよ。ちょうど今のお前みたいに」
……思春期ナメんなよ。私はね、女子高生なのよ。女子高生ともなれば日々色々あるんだっつーの。
失恋だよ、失恋!!
それも、何年も何年も想い続けた相手にだよ!?
何が巨大ミミズよ、お前と一緒にすんなっ。
そんな暴言を吐けるわけもなく私は、保健室に行くことを勧めてくれた先生の好意に甘えて教室を出た。
……確かに瞼が重い。
泣きながら寝ると、こんなにも眼が腫れるなんて。
「失礼します……」
保健室のドアを開けてすぐ、私は後悔した。
だって……旬がいたから。
足首に真っ白な包帯を巻いた旬が椅子に腰かけ、ドアの開く音にこちらをフッと見たのだ。咄嗟に私は立ち尽くした。
「先生なら、さっき出てったよ」
旬が気まずそうに口を開き、私はいたたまれずに身を翻した。
見られたくなかった。泣き腫らしたこの顔を見られちゃうなんて、なんて最悪なの。今頃旬はきっと思ってる。瀬里はこんなに泣き腫らすほど俺が好きなんだって。
真実だけど惨めで、知られたくなかった。
私は保健室を諦めると西側のトイレを目指した。
トイレでハンカチ濡らして冷やそう。
濡らしたハンカチを持ったまま少し引き返し、階段を一番上まで登ると私は屋上に続くドアを開けた。
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