異世界転移した俺は万能スキルでスローライフを謳歌する

みなと劉

文字の大きさ
419 / 496

419 試食の感想と夕飯に餃子を作る

しおりを挟む
 お父さん達が帰ったあと、俺はふとテーブルを見渡した。簡易テーブルの上には、まだほんの少し、シャレーチョコレートケーキの欠片が残っている。みんなで試食したあの時間が、穏やかで温かいものだったことを思い返しながら、俺は丁寧にケーキの皿やグラスを片付け始めた。
「今回のシャレーチョコレートケーキは、実に美味かったな」とお父さんが帰り際に改めて言ったことが、頭の片隅でずっと響いている。
「ええ、本当に。チャリオットが用意してくれたんですが、みんなで試食した時の反応が最高でした」と俺が答えると、お父さんは満足そうに頷いた。
 リッカやエリクスも口を揃えて感想を言っていた。
「実に美味しかったよ。これはまた食べたくなる」
「山小屋が見える味だな」
「たしかに!!」
 その言葉に俺は苦笑した。最初にケーキを口にした時のあの感覚とまったく同じだったのだ。甘く濃厚なチョコレートの味わいの中に、ふと遠くの山小屋が見えるような、そんな懐かしさと落ち着きを感じた。
 俺の万能スキルがあっても、この味の秘密は手間と愛情、そして異世界(地球側)の素材の不思議な力が生み出したものだろう。
 テーブルの片付けを終えると、俺は深く息をついてから軽く笑った。
「やっぱり、こうしてみんなで味わう時間は何にも代えがたいな」
 その言葉に、メセタが静かに頷き、揺れる夕日の中で家の中に優しい静寂が広がっていった。
 夕暮れの柔らかい光が窓から差し込む中、俺はキッチンの片隅でそっと立ち上がった。今日は久しぶりに餃子を作ってみようと思ったんだ。リッカやエリクス、チャリオットも喜んでくれそうだし、なにより自分自身が楽しみだった。
「そうだな、ニラと白菜、それに変わり種で茗荷を入れてみるか」と独り言ちる。白菜は収穫したばかりの新鮮なものが台所にある。スキルを使えば必要なものはいつだってすぐ手に入るから、ニラと合挽き肉、茗荷、そして餃子の皮を願い出る。
「ぽん」と軽い音と共に、ふんわりとしたニラの束と、合挽き肉が包まれたボウル、鮮やかな茗荷、そして幾重にも重なった餃子の皮がテーブルに届けられた。どれも新鮮で、そのまま料理に取りかかれる。
 俺は手を洗い、エプロンを身に着けると気合を入れ直す。ボウルに合挽き肉をあけ、細かく刻んだニラと茗荷、柔らかく刻んだ白菜を加えた。塩、胡椒、少しだけ醤油を垂らして、全体が馴染むようにゆっくりと混ぜていく。野菜のシャキッとした食感と肉の旨みが調和する瞬間を想像しながら、俺の気分はますます高まった。
 次に餃子の皮を取り、指先に少し水をつけて円く包む作業に移る。ひだをつけながら餡を包んでいくその時間は、なんとも言えず楽しいものだった。リズムよく作業を進め、あっという間に一皿分が完成する。並べられた餃子たちはまるで、自分たちがこれから味わいと笑顔を運ぶんだと言わんばかりの誇らしげな表情に見えた。
「よし、一仕事終わったな」と俺は満足気に小さく笑う。あとは焼くだけだ。フライパンに油を回し、薄く敷いた餃子たちを優しく置く。皮が黄金色に色づき始め、香ばしい匂いがキッチンに満ちていく。少量の水を加え、蓋をして蒸し焼きにすれば、外はパリッと、中はジューシーな餃子の完成だ。
 メセタが静かに俺の側に寄り添い、その瞳で焼き上がりを見守っている。こうして、台所の中にのんびりとした幸せな時間が流れ始めた。夕飯の仕込みが、ただの作業ではなく俺の楽しみであり、小さな儀式であることを改めて感じながら、俺は次の一手を考えていた。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

追放されたけど実は世界最強でした ~元下僕の俺、気ままに旅していたら神々に愛されてた件~

fuwamofu
ファンタジー
「お前なんか要らない」と勇者パーティから追放された青年リオ。 しかし彼は知らなかった。自分が古代最強の血筋であり、封印級スキル「創世の権能」を無意識に使いこなしていたことを。 気ままな旅の途中で救ったのは、王女、竜族、聖女、そして神。彼女たちは次々とリオに惹かれていく。 裏切った勇者たちは没落し、リオの存在はやがて全大陸を巻き込む伝説となる――。 無自覚にチートでハーレムな最強冒険譚、ここに開幕!

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい

ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。 強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。 ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

異世界で目覚めたら、もふもふ騎士団に保護されてました ~ちびっ子だけど、獣人たちの平穏のためお世話係がんばります!!~

ありぽん
ファンタジー
神のミスで命を落とした芽依は、お詫びとして大好きな異世界へ転生させてもらえることに。だが転生の際、またしても神のミスで、森の奥地に幼女の姿で送られてしまい。転生の反動で眠っていた瞳は、気づかないうちに魔獣たちに囲まれてしまう。 しかしそんな危機的状況の中、森を巡回していた、獣人だけで構成された獣騎士団が駆け付けてくれ、芽依はどうにかこの窮地を切り抜けることができたのだった。 やがて目を覚ました芽依は、初めは混乱したものの、すぐに現状を受け入れ。またその後、同じ種族の人間側で保護する案も出たが、ある事情により、芽依はそのまま獣騎士団の宿舎で暮らすことに。 そこで芽依は、助けてくれた獣騎士たちに恩を返すため、そして日々厳しい任務に向かう獣人たちが少しでも平穏に過ごせるようにと、お世話係を買って出る。 そんな芽依に、当初は不安だった獣人たちだったが、元気で明るい瞳の存在は、次第に獣人たちの力となっていくのだった。 これはちびっ子転生者の芽依が、獣人や魔獣たちのために奮闘し、癒しとなっていく。そんな、ほっこりまったり? な物語。

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

クラスで異世界召喚する前にスキルの検証に30年貰ってもいいですか?

ばふぉりん
ファンタジー
 中学三年のある朝、突然教室が光だし、光が収まるとそこには女神様が!  「貴方達は異世界へと勇者召喚されましたが、そのままでは忍びないのでなんとか召喚に割り込みをかけあちらの世界にあった身体へ変換させると共にスキルを与えます。更に何か願いを叶えてあげましょう。これも召喚を止められなかった詫びとします」  「それでは女神様、どんなスキルかわからないまま行くのは不安なので検証期間を30年頂いてもよろしいですか?」  これはスキルを使いこなせないまま召喚された者と、使いこなし過ぎた者の異世界物語である。  <前作ラストで書いた(本当に描きたかったこと)をやってみようと思ったセルフスピンオフです!うまく行くかどうかはホント不安でしかありませんが、表現方法とか教えて頂けると幸いです> 注)本作品は横書きで書いており、顔文字も所々で顔を出してきますので、横読み?推奨です。 (読者様から縦書きだと顔文字が!という指摘を頂きましたので、注意書をと。ただ、表現たとして顔文字を出しているで、顔を出してた時には一通り読み終わった後で横書きで見て頂けると嬉しいです)

精霊さんと一緒にスローライフ ~異世界でも現代知識とチートな精霊さんがいれば安心です~

ファンタジー
かわいい精霊さんと送る、スローライフ。 異世界に送り込まれたおっさんは、精霊さんと手を取り、スローライフをおくる。 夢は優しい国づくり。 『くに、つくりますか?』 『あめのぬぼこ、ぐるぐる』 『みぎまわりか、ひだりまわりか。それがもんだいなの』 いや、それはもう過ぎてますから。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

処理中です...