のほほん素材日和 ~草原と森のんびり生活~

みなと劉

文字の大きさ
62 / 192
第一章: 「エルム村へようこそ」

第六十二話: 村の市場の日

しおりを挟む
 朝の空気はひんやりとしていたが、どこか賑やかで温かい雰囲気が漂っていた。「今日は市場の日だよ。」エリオットの言葉にフィオは目を輝かせた。村で定期的に開かれる市場は、村人たちが採れたての野菜や果物、手作りの道具などを持ち寄る大切な交流の場だという。

 「市場って、都会の商店街みたいな感じですか?」
 「似てるかもしれないけど、もっと温かみがあるよ。さあ、行こう。」

 エリオットの後について村の広場へ向かうと、そこは色とりどりの屋台で埋め尽くされていた。トマトやカボチャなどの新鮮な野菜が並ぶ一角では、元気なおばあさんが「今日は甘いカボチャが安いよ!」と呼びかけている。隣では、自家製のジャムやパンが売られ、甘い香りが漂っていた。

 「すごい……こんなに賑やかなんですね。」
 フィオは目を輝かせながら、屋台を一つ一つ見て回った。その中で特に目を引いたのは、干した薬草を束ねた屋台だ。いくつもの種類の薬草が整然と並び、販売している女性が親切そうに説明している。

 「この乾燥ミントは、お茶にすると喉にいいよ。」
 「これ、フィオが採取した薬草に似てる!」とエリオットが指さしたのは、森で見つけたばかりのシエラ草だった。

 フィオは思わず「この薬草って、こんなふうに売られているんですね……」と呟いた。都会では出来上がった製品しか目にしたことがなかったフィオにとって、採取から販売までの流れを直接見るのは新鮮だった。

 さらに広場を進むと、手作りの布や木彫りの小物が並ぶコーナーもあった。「見て、この布!可愛い刺繍がしてあるわ。」フィオが手に取ったのは、小さな花模様が描かれたハンカチだった。売り手の女性がにこやかに「それは村の特産品なのよ」と話しかけてきた。

 市場の賑やかさに感動しつつも、フィオはふと、自分も何か出品してみたいという思いが芽生えた。「エリオットさん、私もいつかこの市場に出店してみたいです。」

 「いいね。それなら、まずは薬草をもっと知って、自分で何か作ってみたら?」
 エリオットの提案にフィオは大きく頷いた。薬草を使ったお茶や、手作りの石鹸なんかも面白そうだと思った。

 市場での時間はあっという間に過ぎていった。帰り道、フィオはカゴいっぱいに購入した野菜や小物を抱えながら、エリオットに言った。「こんなに楽しい場所があるなんて知らなかったです。エルム村って、本当に素敵なところですね。」

 「これからもっと発見があるさ。村の暮らしは、自然と共に生きる楽しさでいっぱいだからね。」
 エリオットの言葉に励まされながら、フィオは新しい生活への期待を胸に抱いた。エルム村での日常が、ますます輝きを増していく予感がした。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?

サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。 *この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。 **週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**

底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
 40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。  しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。  おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。  漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。  この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――

俺得リターン!異世界から地球に戻っても魔法使えるし?アイテムボックスあるし?地球が大変な事になっても俺得なんですが!

くまの香
ファンタジー
鹿野香(かのかおる)男49歳未婚の派遣が、ある日突然仕事中に異世界へ飛ばされた。(←前作) 異世界でようやく平和な日常を掴んだが、今度は地球へ戻る事に。隕石落下で大混乱中の地球でも相変わらず呑気に頑張るおじさんの日常。「大丈夫、俺、ラッキーだから」

社畜の異世界再出発

U65
ファンタジー
社畜、気づけば異世界の赤ちゃんでした――!? ブラック企業に心身を削られ、人生リタイアした社畜が目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界。 前世では死ぬほど働いた。今度は、笑って生きたい。 けれどこの世界、穏やかに生きるには……ちょっと強くなる必要があるらしい。

僕だけ入れちゃうステータス欄 ~追放された凄腕バッファーは、たまたま出会った新人冒険者たちと真の最強パーティーを作り上げる~

めでめで汰
ファンタジー
バッファーの少年カイトのバフスキルは「ステータス欄の中に入って直接数字を動かす」というもの。 しかし、その能力を信じなかった仲間からカイトは追放され迷宮に置き去りにされる。 そこで出会ったLUK(幸運)値の高い少女ハルと共にカイトは無事迷宮から生還。 その後、カイトはハルの両親を探すため地下迷宮の奥へと挑むことを決意する。 (スライム、もふもふ出てきます。女の子に囲まれるけどメインヒロインは一人です。「ざまぁ」もしっかりあります)

処理中です...