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8話

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まさかこんなにあっさりとバレてしまうとは。
というより、俺の予想ではもう少し時間がかかると思っていたのに。
それにしても、どうして俺の正体がわかったのだろう。
何か特別な能力を持っているのか?
「さっきから黙っていますが、僕の言うことが間違っているとでもいうのですか!?いい加減認めたらどうなんだよ!!」
「おい」
「あんたはもう終わりだよ。ここで死んでもらう」
「お前が俺を殺すっていうのか?」
「ああ、そうだとも。こうなった以上、仕方がない。殺させて貰うぞ」
「そっか……。残念だ」
「さようなら」
次の瞬間、目の前にいたはずの男が消えた。
「なっ!?どこに行った!?」
「ここだ」
「いつの間に!?く、クソが!!死ねえ!!!」
ザシュッ
男の身体が斜めに大きく切り裂かれた。
「ぐあっ!?」
「これで、任務完了だ。あとはこの事を報告すれば、いいだけだ」
「待て」
「チィ、まだ生きていたのかい?しぶといってのも考えものだね。じゃあ、もう一度斬らせてもらうよ」
「無駄だ」
「はいはい、そういうのは聞き飽きているんでね。死になさい!」
また姿が消える。だが今度は、俺にもしっかりと見えていた。
「後ろか。遅いぞ」
「は?」
俺が振り返ると、そこには血まみれになって倒れ伏している男の姿があった。
「何故だ?いったいどうやって見破ったというんだ?」
「簡単だ。魔力の流れを読み取った」
「は?どういうことだ?」
「そのままの意味だ。俺は、相手の体内にある僅かな流れの変化を感じ取ることができる。だから、例え姿を消そうとも、気配を完全に消し去ろうとも、俺の前では無力だ」
「クッソ!ふざけやがって!たかが無能如きに、この僕が遅れを取るだとぉ?」
「最後に、ひとつだけ教えてやる。無能じゃない。」
そう言って、俺は手に持っていた剣を首元へと突き刺した。
こうして、俺は暗殺者を返り討ちすることに成功した。
—――
その頃、王城にて……
「陛下!大変です!!!」
「どうしたというのだ?」
「実は先程、王国所属の勇者の一人、【無能】のシオン・アスタールが何者かによって殺されました!」
「何だと!?」
「しかも、その犯人は王国の暗部に所属する者である可能性が高いとのことでして……」
「ふむ、なるほど。それでその者は何処へ行ったのだ?」
「それが……、行方がわからなくなってしまっているようで……、現在も捜索を続けているところです」
「そうなのか……、それならば、私の方からも探しておくように手配を頼む」
「承知いたしました。失礼致します」
(これは……、大変なことになりそうだ)
こうして、新たなる波乱の幕が上がるのであった。
—――
シオンの部屋……
「ふぅ、何とか終わったみたいだ」
今回のことではっきりしたことがある。
それは、やっぱり無能と呼ばれ続けているのはおかしいということ。
なので、これからはもっと強くなっていこうと思う。
その為にもまずは、サランとの修行の再開からだな。
そんなことを考えながら、眠りにつくのであった。
「うーん、今日は何をしようかな?」
現在、俺は自室でゴロ寝中。
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