三国志~呂布奉先~異世界三国志は今宵もまかり通る

みなと劉

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86話

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ただし、それはあくまで後世での話だ。
于吉にとって他人の不幸は蜜の味であり、称賛や栄誉よりも己の欲望を満たす為に他者を陥れる事は当たり前の事だった。
そんな非道な事をする于吉だったが、その人生を詳しく知らない人間は多いだろう。
そんな彼の生涯は本人が思っている以上に壮絶で謎に満ちており、この乱世が続く限り、それこそ後世にも語り継がれるような事があるかと言えば疑問が残る人物でもあった。
それは彼が天界と呼ばれる場所から転生してきた事が始まりとなるのだが、そこに関してはあまりにも突拍子もない為、神と転生という部分は省略して書き記す事とする。
そんな彼の唯一の理解者と言える男がいた。
その者の名は「樊稠」と言い、時期的には不明なのだが于吉が朝廷からの独立を画策し都より長安へ戻る途中に同行した人物であり、この時は于吉もそこまでの人物では無いと思われていたのだが、彼が死んでから数年後に大活躍を見せるようになる。
曹操による献帝の誘拐の時も于吉を守る為に呂布と激しい戦いを繰り広げ曹操を苦しめる事に成功していた。
特に諸葛亮孔明が伏龍先生だと言われる程にその名を天下に轟かせた名軍師、「龐士元」を打ち負かしている事が大きく評価されており、この時の戦いで龐士元は槍が折れて戦えなくなるほどの大怪我を負った。
樊稠はそれからも戦場において活躍し続け、于吉からは「稀代の忠臣」だとさえ言われており、諸葛亮と共にその名が出て来る程になる。
しかし、その于吉から見た樊稠の人物像はとても理想的な人間で、忠臣、人徳者と言われる存在にふさわしかった。
何故なら、樊稠には妻である于氏の他に3人の娘がいたが、この娘を三人とも袁術の側室に迎えられる程であった。
これは元々、呉の人間は良い評判が無かった事から正統な王である劉備の元へ身を寄せる事になり、また孫策の妻は江東出身者だった事もあって樊稠の娘達もそれに倣って劉備に仕えた事に端を発するのだが、そんな劉備の娘が江東から呉の地に来ていれば当然、生活の違いで困る事になるのだが、そうした時には孫策の妻が手助けをするといった具合で協力し合っていた事もあった。
だが、この事が後に良くない結果を生んでしまう事になるのだが、それは今は置いておく事にしよう……。
そんな樊稠ではあったが、ここに来て一つ厄介な問題が出てきた為にその命を散らす事になる。
それは曹操軍の攻撃によるもので、それに怒りを露にした于吉はその時の様子をこう語っている。
「あの時ばかりはあの男の首が無い事を残念に思った程だった」
それ程に怒りを見せた于吉であったが、実際は自ら出陣する事はなかったと言う。
それは何故かと言うと……。
それは樊稠が暗殺された後、彼の部下達によって報復が行われたからである。
樊稠の死を惜しむ声は数多くあったのだが、孫策との諸戦で疲労した当時の曹操軍に対して、正に獅子奮迅の働きをしたのが樊稠の副官である王匡(おうきょう)であった。
彼は荊州で戦いが続く中、常に前線に立ち続けて曹操軍の猛攻を防いでおり、遂には孫策と一騎打ちをする程の人物であったが、それが仇になったのか腹部に矢を受けてしまう事となる。
しかし、そんな傷などものともせずに逃げ遅れた兵士達を救う為に自ら戦場へ飛び込み敵味方入り乱れる中で数多くの敵兵を倒していった。
「あれが真の武将である」
誰もがそう思う程の活躍を見せ、荊州の戦いにおいて誰よりも名声を得る事となった。
そんな王匡に敬意を表したいと考えた于吉は自ら説得に向かったのだが、それは敵将である孫策からも賞賛される程の立派な態度で応じていたのだが、そこに乱入する者がいたのである。
樊稠の部下が復讐の為に乱入して来たかと思うと王匡を背後から斬って殺害してしまった。
呂布は言う。
「これがそもそもの原因だ」
そして陳宮がそれに対して回答をする。
「そんな事で!?」
そんなやり取りを見ていると呂布が眉を寄せた。
「そんな事とは聞き捨てならんぞ!お前も分かっているのだろう?今、この瞬間において我が軍は窮地に立たされている事を!!」
そう言われた事で反論出来ずにいると高順も続けて話し始める。
「私も呂布将軍の意見が正しいと思うぜ」
そう言われてしまえば、もはや何も反論する余地は無かった。
「呂布将軍の意見に従いましょう。負ければ何にもならないですからね」
そう言われた呂布は満足そうに頷くが、そんな事よりも高順が陳宮に対し『我が軍』と呼んだ事の方が気になるのであった。
それは挑発とも取れる言葉だったが、それに対して何も言わずに頷くと高順と共に曹操軍の陣内へと移動しようと歩き出したのだが、この時、陳宮は曹操軍に降伏しようとしていたのである……。
俺が江陵の連合軍陣地へ戻って来た事で戦況が大きく変化していったのだ。
「将軍、たった今、こちらへ敵軍の指揮官が向かってきています。投降した方が良いでしょう」
俺と共に戻って来た高順がそう言ったのだが俺は首を横に振る。
「いえ、投降すれば呂布軍の将が1人減る事になる。そうなる事を避ける為にも最後まで戦い抜くべきです!」
そんな俺の意気込みに高順は少し困った顔を見せると言った。
「ならせめて、その怪我だけでもどうにかしましょうよ」
そんな会話をしていると本陣から陳宮の帰還を待っていたと思われる曹操が配下の張遼を連れてやって来た。
そして俺に一礼をして近づいてくると、そのまま拱手の礼を取り挨拶を交わす。
「お久しぶりです将軍、袁紹を破ったご活躍、お見事でした」
それに対して俺も答える。
「呂布将軍と共に戦ったまでの事です、しかし大敗北を喫してしまいこうして足を引きずってでも生きながらえております」
そんな俺の謙遜の言葉に対して曹操は首を振る。
「まさかこの様な展開になると誰が予想出来たでしょう。張遼の奮戦や将軍の采配が見事だった事は疑いようもありません」
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