18 / 196
第十八話:騎士様と魔物たち、そして『伝説の割引』
しおりを挟む早朝、開店準備をしている俺の耳に、カツカツと小気味よい足音が響いてきた。見ると、立派な鎧をまとった騎士様がコンビニにやってきた。背後には魔物たちが並んでいて、どうやら今日は一緒に買い物に来たらしい。
「店主、我が主君のために、この店で特別な品を用意しておいてくれたか?」
騎士様がキラリと目を光らせて言った。どうやら彼は、主君への献上品を探しに来たらしい。
「ええと…『特別な品』ですか?」
俺は戸惑いながらも店内を見回すが、普通の品しか置いていない。困っている俺を見て、後ろにいたトロールが助け舟を出してくれた。
「騎士様、店主のところに伝説の『割引券』があると聞きましたぞ。あれなら、どんな品でも安く手に入るとか!」
トロールの一言で店内が一気にざわついた。魔物たちは一斉に「割引?」「それって何だ?」と騒ぎ始めた。
「ちょ、ちょっと待って! 割引券なんてそんな大したものじゃないんだ。ただのセール品に使うものだよ!」
俺が慌てて説明すると、今度は小柄なコボルトが前に出てきて、にやりと笑った。
「いやいや、店主。俺たちにとって『割引』ってのはまるで魔法のようなものだぜ。物の価値が下がるなんて魔術師でもできないもんさ!」
「そうそう、あの『3つ買うと1つ無料』とかも俺たちには神秘的だ!」
ゴブリンが補足し、魔物たちはその話題で盛り上がり始めた。
騎士様は呆れ顔で言った。「お前たち、そんなことで騒ぐな。主君への献上品には相応の品を――」
その言葉の途中、騎士様はふと冷蔵庫に目を向け、ハッとした顔をした。
「待て…あれは!」
騎士様が指差した先には、一際輝くパッケージの『高級プリン』が鎮座していた。
「これだ! 主君は甘党でいらっしゃる。これ以上のものはない!」
騎士様は満面の笑みでプリンを手に取り、レジに向かった。しかし、そこにはトロールが手にしたチョコレートバーや、ゴブリンが抱えた魚缶など、列を作る魔物たちがずらりと並んでいた。
「騎士様、列に並んでください!」
俺が軽く注意すると、騎士様は少し困った顔をしたが、しぶしぶ最後尾に並ぶ。するとコボルトが騎士様にウィンクしながら言った。
「さすが騎士様だな。礼儀を知ってるぜ。」
騎士様は恥ずかしそうに頬をかいたが、すぐに背筋を伸ばし「当然だ」と堂々と言い放った。
しばらくして、ようやくレジが回ってきた。騎士様はプリンを置き、財布を取り出そうとしたその瞬間、背後から魔物たちの声が響いた。
「騎士様! 割引券をお忘れなく!」
「そうだ、使いどころは今だ!」
俺は笑いをこらえながら、レジの下から割引券を取り出し、騎士様に手渡した。騎士様は少しばかり困惑しつつも、受け取って誇らしげに胸を張った。
「店主、この割引券が主君への献上の証として使える日が来るとはな…感謝する。」
「いや、本当にただの割引券なんだけどな…」
俺の心の中のつぶやきは、騎士様の誇らしげな姿を前に消えていった。
その後、魔物たちも一人ずつ買い物を終え、店内は再び静寂を取り戻した。プリンを手にした騎士様の後ろ姿を見送りながら、俺はこの異世界での経営の難しさと楽しさを同時に感じていた。
52
あなたにおすすめの小説
【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……
buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。
みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる