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百八十一話

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最近異世界に召喚されたお兄さんは魔法使いの適正があったナイトである俺はそいつと一緒に旅をする
百八十一話
「……まさかとは思うんだけど、もしかするといいやも知れないな。まあいい、明日になったら確かめに行ってみるか」
そして翌日、早速俺はその場所へと向かった。そこはいつも通っている学校の裏山、そこにある洞窟の中だ。この中に行けば、何か分かるのではないかと考えた。というのも、以前ここに来た際に見た光景というのがまさにその洞窟内部に広がる巨大な空間のことであり、その奥にあったはずの祠までなくなっていたからである。……そう、以前に確認に来た時と同様に綺麗さっぱり消えていた。……そしてその入り口の前まで行くと懐に入れてきた例の本を取り出して広げる。そこには相変わらず黒い文字でこう書かれていた。
【私は君を選んだ】
と。そう、この本に書かれていた内容は俺に対する何らかのメッセージだったのではないかという仮説を立てた訳だが、こう書かれていることから考えても多分当たっているんだろうと思う。
そんなことを考えていると背後の草むらからガサッと音が聞こえた。慌てて振り向くとそこには見覚えのある男がいた。
「お久しぶりです、ジャックさん。元気にしていましたか?」と聞かれたので素直に応えることにした。
「ああ、一応ね。ただ最近は色々なことがあり過ぎて疲れ気味かな」
と答えると彼は
「そうですか、大変ですね……」
とだけ答えて去っていった。……その後姿を見送ってしばらくした後に中へと入っていき、奥に見えたものを確認しにいく。
そして予想通りそこにあったものを目にして確信を得る。そこには明らかに何者かの手によって消されたような跡があった。……やっぱりそうだ、これは誰かの手で消し去られたと考えるべきであろう。そうなると犯人はその手際から見て、恐らくは……いや、考えなくても分かってる。
アイツしかいない。
何故なら俺達家族以外に、ここにわざわざ来てこのような真似をする人物といえば一人しかいないのだから。
そう、あいつこそが俺達の両親を殺した張本人であり……俺の弟を誘拐した悪魔……いや違うな、本当の正体はサタンと名乗る謎の悪魔であり、そして今回の件も間違いなくあいつが絡んでいるに違いないのである。……しかしどうやって調べればいいんだろうか?サタンはこちらからコンタクトをとることは出来るが逆は不可能と言っていた。恐らくはこっちからの連絡手段はないと思っていいはずなのでそれに関しては特に問題は無いが……うーむ困った。……ひとまずこの件については一旦保留にして、他に何か無いか探してみるとするか。……といっても結局は何も見つからなかった。
勇者とナイトは辺りを見回す
……まあいいか、今日はこれくらいで勘弁しておいてやる。その代わり今度は逃がさないようにしないと。さっきは邪魔が入ったけど次はきっと上手くやれるはずだ。だって僕は勇者なんだから。それにしてもあのおじさん強かったけど……どうして戦わなかったのかなぁ?なんか変だよね、あれは本当に人間なのかな?……どうしよう……また見つかっちゃったよぉ……僕怖くて足が震えちゃって動けなくなってきてるし……もうダメかもしれない……このままじゃ逃げられないし……でも仕方がないよね……
とりあえず家に帰ろうとしたのだが、帰り道が分からなかった為に引き返す事にしたのだが……その際にふと思いつく
「あ!これを使って帰れば良いじゃん!」
そう言うと剣を地面に突き刺し、呪文を唱える
「転移」
こうして2人は無事に家に帰ってきたのであった。
次の日
ジャックと合流し
魔界から帰還する。
勇者、ジャック、ナイトはギルドへと向かう。そこで情報を収集することにしたのだ。昨日の事を受付嬢に相談する。するとすぐに部屋へ通され、話を聞くこととなった。
「貴方方のお話は分かりました。確かにそれは事実でしょう。ですがそのことを知っている者はほんの一握りに限られております。もし他の者達に話をしてしまうとその話が広まってしまいかねません。どうかお気をつけ下さい」
と言われる。続けてそのことについて話す。
「魔王の復活についてはこの世界の存続に関わる重大な問題でございます。一刻も早く討伐しなければならないのです。魔王が復活したことにより各地で魔物による暴動が発生しております。その中には強大な力を持つ上位種も存在しています。その力は人間では到底及ばない程のものばかり。この世界に住む皆様を守るためには我々騎士団の力が必要不可欠なものです。その力となり得る存在が必要な今だからこそ、我々は団結する必要があるのです。その為には情報を共有しなければなりませぬゆえ、ジャック殿のお父上の事は残念でしたが今は協力させていただきたいと考えております故」と言われたので素直に従うことにする。
その後報酬を受け取り外に出ようとすると呼び止められて手紙を手渡される。中身を読んでみるとそこには【レギオス=レオンハート】という宛名があり送り主の名は書かれていなかった。しかしレギオスという名前がジャックの父親の名前と同じだったためジャックがその手紙を開けて確認した。
すると中には地図のような物が入っており、それを拡大してみる。するとそこはこの街からは遠く離れた場所にある街だった。そしてその街の名は【ミレウスの街】というものだった。
手紙の内容を要約すると『親父を返して欲しくばそのミレウスの街にある闘技場で優勝せよ』という感じの内容だった。その話を聞いた受付嬢は、まさかとは思うけどと前置きした上でこう言った。「その差出人の名前は恐らくサタンとかいう名前の人物ではないでしょうか?」と言われてしまった。何故分かったのか尋ねるとそれを聞いたナイトが怯えた様子だったので代わりに自分が聞いてみることにした。そしたらあっさりと答えてくれた。なんと勇者の本名を知っている者など殆どいないらしく。名前だけで言い当てられたのはその人物が偽名を使っているからだと言い放った。しかも勇者の名前を言えるのはそれこそ魔王ぐらいしか存在しないとのことらしい。……そういえば魔王の息子と言っていたような気がするなぁと思ったところで勇者が突然口を開く。
「なんだよ!!お前らが偽物ってバレてるんじゃないか!!」
と言った後で泣きながら喚いている姿を見ると、まるで幼児退行しているかの如く、その姿はあまりに醜く見えた。見ていられなかったので頭を軽く叩いて落ち着かせる。しばらくして勇者が落ち着きを取り戻したようなのでそのまま部屋を出て宿に向かう。
ちなみに報酬についてだが 自分達は旅の途中で立ち寄ったに過ぎない事 そして現在は資金が不足している状態である ということを伝えた上で 迷惑をかけたことを詫びた上で辞退し 街の外へと出る。
百八十一話完
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