異世界でラブコメしたりギルド登録したり別の人になったり!?

みなと劉

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15話

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その答えを聞いた後、ギルバートは再び歩き出す。
その後姿が見えなくなるまで見送ると、若い方が言う。
「いいんですか?彼を逃したりなんかして」
「問題ない。今は放っておいて構わない」
「それにしても驚きましたね。あの彼がまさか彼女を助けようとしていたなんて」
「ああ、まったくじゃ。一体どんな心境の変化があったというのか……」
そう呟くと初老の男は窓の外を眺める。
(おそらく彼は、自らの過ちに気付いたのだろうな……)
すると、若い男は何かを思い出したように白衣のポケットを探る。
「そうだ、先生。これ渡し忘れていました」
そう言いながら取り出したのは、一枚の手紙だった。
「何だ、これは」
「学園長からの呼び出し状ですよ。まあ簡単に言えば、始末書を書いてくれっていう催促ですね」
それを聞いて白衣の男性は深いため息をつく。
「全く面倒だなぁ」
「どうするんです?」
「決まっているだろ。逃げるんだよ」
そう言って若い男に背中を向けた直後、背後にいた人物が彼の首根っこを掴んで言った。
「逃げられると思っているのか?」
「えっと……その声はもしかして……」
白衣の男は恐る恐る後ろを振り返る。そこには先程去っていったはずのギルバートが立っていた。
「はっはっは!やっぱり駄目でしたねぇ」
それを見た男は観念したかのように乾いた笑いを上げる。
するとギルバートは手紙を受け取りながら尋ねる。
「それで、いつから聞いていたんだ?」
「最初から」
その返答を聞くとギルバートはため息をつく。
「…….やはり、貴方を野放しにしておくわけにはいかないな」
「そうみたいですね。ですが、ここで戦うとこの建物が崩壊してしまいますよ?もちろん、私はそれでも構いませんが」
「ふん、好きにしろ」
「ええ、ではそうさせていただきます」
次の瞬間、若い男の姿が一瞬にして消えた。
(やはり、あいつの能力の発動条件は距離なのか)
「さて、それでは行きましょうか」
「……..どこにだ」
ギルバートがそう聞くと、白衣の男は懐から時計を取り出す。その針は既に夕方を指していた。
「もちろんディナーに」
ギルバートはしばらく無言だったが、やがて諦めたようにため息をつく。
「分かった」
そして二人はそのまま地下を出ていった。
------
一方その頃、ミリアはとある部屋で目を覚ます。そこはベッド以外何も無い殺風景な部屋だった。
(あれ……私どうしてここに……)
「起きたか」
突然聞こえてきたので声の主の方を見ると、そこには一人の女性が座っていた。年齢は二十代前半くらいだろうか。黒いロングコートに身を包み、右手に大きな杖を持っているその姿からは魔法使いのような印象を受ける。その容姿はどこか大人びており、落ち着いた雰囲気があった。
「あなたは?」
ミリアは起き上がりつつその女性の方へ向き直ると、質問を投げかける。すると彼女は淡々と返事をする。
「お前の保護者みたいなものだ」
「私の……お母さんとかお父さんですか?」
「違う」
ミリアの質問に対して女性は否定する。そして一呼吸置いてから話し始めた。
「お前が倒れているところを助けたのが私だ。そして学園の関係者でもある」
それを聞いていたミリアは首を傾げる。
(もしかして助けてくれた人かな?)
そう思いながら女性を見つめるが、心当たりは無かった。そもそもミリアは、自分以外の半妖の存在をあまり知らない。そのせいか目の前にいる人が自分の母親かもしれないなどと考えてしまう。だがそんなはずはないとすぐに考え直す。
(うーん、やっぱりこの人は見たこと無いかも……)
ミリアがそんなことを考えながらじっと見続けていると、彼女は少し戸惑ったような表情になる。
「私の顔に何か付いているか?」
「あっいえ……何でもないです!」
そう言って慌てて誤魔化すとミリアは自分の服を確認する。だが目立った外傷も無く、怪我もしていないようだった。そのことを不思議に思っていると、ふと思い出したように言う。
「そうだ!私ってば、あの後気を失って……」
「あの少年に運ばれて来たのだ」
それを聞いたミリアは驚いた様子を見せる。
「あの子も一緒に?」
「ああ、心配していたぞ」
「そっか……よかった」
その言葉に安堵しながらミリアは改めてその人物を観察する。
すると今度は彼女がミリアのことを見返してきた。
「ところでその耳…….本当に獣のそれと同じようだな」
「あ……はい」
ミリアはその言葉を受けて少し顔を赤らめる。だがそれを見た相手は慌てたように訂正する。
「ああ、悪い。別に気に障るつもりは無い。それにそういう者を見るのは初めてというわけではない」
「そうなんですか?」
「ああ。ただ珍しいと思ってな」
「それは、どういう意味でしょう……?」
それを聞いた相手は黙り込む。そしてしばし考えた後、静かに答えた。「そうだな、もしお前さえ良ければ、その秘密を聞かせてくれないか?」
「私のことを?」
その問いに対してミリアは一瞬迷ったが、正直に答えることにした。
「はい、実は……私は普通の人間じゃなくて、狼と人間の混血種なんです」
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