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22話

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その名前を聞いて彼らは全員驚く。
しかしそんな中で唯一ミリアは彼らの表情を見て思う。
―――まるで知っていたかのように……
そんな風に感じた彼女は、続けて言った。
「もしかしてご存知でしたか?」
すると今度はギルが答えた。
「いや、初耳だぜ。だけどなぁ……」
彼は一度言葉を切ると、アルヴィンへ目を向けた。
するとアルヴィンは何かに気付いたように言う。
「あ~もしかしてそういうことなのか?」
「はい。あなた達が何を考えているのかわかりませんが、とりあえずそう思っていただいて結構です」
「へぇーそうか。でもなぁ俺はそんな面倒なことはしたくねぇしな」
するとギルはため息をつく。そしてアルヴィンに対して言った。
「お前って本当に最低な奴だな」
それを聞いたアルヴィンはすぐに言い返す。
「うるせえ! 俺が最低なのは知ってるんだよ。だけど今回はそうも言ってられないみたいだしな。というわけで、協力はするけどあまり期待はしないでくれよ」
「いえ十分です。よろしくお願いします」
ミリアは頭を下げる。そしてギルがさらに続けた。
「それと最後にいいかな? 君達は僕達の正体についてどこまで知っているんだい? 正直に教えてほしい」
「正体ですか? それはどういう意味なんでしょう? もしかして王族だということですか? 申し訳ありませんが私は詳しくは知りません」
ミリアは困ったような表情をする。するとアルヴィンはため息をついた後、ミリアへと告げた。
「そうか。ならもういいよ。俺から話すことにする」
そしてアルヴィンは語り始めた。彼の口から真実が語られた瞬間、ミリアは驚きのあまり固まってしまう。
(彼が王子!? それにアルフレッドさんが……どうしてそんなことに?)
ミリアは混乱しながらも何とか頭の中で整理をしようとする。
だがそんな彼女を尻目にギルはアルヴィンへと話しかけた。
「やっぱりか。だから変だと思ったぜ」
「だから言っただろ。こいつらは何も知らないって」
「あぁ、そうだな。しかしまさかあのアルフレッドと彼女がそんな関係だったとはね」
「まぁ、あいつは良い奴だよ。ただあいつは自分が強いと勘違いしている馬鹿野郎なだけだ」
「確かにな。それでこれからどうするんだい?」
「俺達のすることは変わらない。アルフレッドを止めに行く」
「はぁ、相変わらずお人好しだな。まあいいか。ところで、そっちは大丈夫そうか?」
「まあなんとかするさ。それにあいつには借りがあるし、ここで返しておかないと気持ち悪い」
「確かにね。それじゃあ、またあとで会おう」
「あぁ」
そう言い残すと二人は部屋から出て行った。
**
<視点:ミリア> ミリアはアルフレッドのことを見つめながら考える。
「あのアルフレッドさんに婚約破棄を言い渡されたのはやはりルーナ様で間違いないようですね。それなのになぜこのようなことになったのでしょう?」
ミリアは疑問に思った。
なぜなら彼女はアルフレッドにとってとても大切な存在であり、ルーナにとっても彼は大切な人なのだ。
それにもかかわらず彼女はこんなことになってしまった。一体どうすれば良かったのだろうか。
そう考えながらもミリアはさらに情報を集める。そこで彼女は気付いた。
(そういえば以前聞いた話だと、ルーナ様には恋人がいるという話があったわ。その人は今どこにいるのかしら?)
そう思い、すぐにミリアは確認をする。するとその人物は学園にいないことが判明した。
(では一体どこへ行ってしまったのでしょう? もしやアルフレッドさんの婚約者である彼女の元へ戻ったのかもしれません)
彼女はその可能性が高いと考えた。
なぜならルーナはアルフレッドのことが好きだったが、同時に彼女のことが嫌いでもあったからだ。
だからこそ、アルフレッドは彼女のことを切り捨てることにしたのだろう。
つまり今回の件は彼女の仕組んだものということになる。
「ということは今回の件でアルフレッドさんを恨んでいるのは私とルーナ様だけということなの?」
彼女はそんなことを考えると急に不安になった。
しかし今は悩んでいても仕方がないと思い、すぐに彼女は思考を変える。
「まずは学園内に何が起こったのかを知る必要があるわ。だから誰かに聞き込みをしてみましょう」
そしてミリアはすぐに行動を開始した。
だがその途中で彼女は一人の生徒と出会う。
それはこの国の第二王女であるステラだ。
(どうしてここに? 確か彼女とは面識がなかったはずですが……。それにしても綺麗な方です)
そう思って彼女はつい彼女を見つめてしまう。すると視線に気付いたのか、ステラの方から声をかけてきた。
「あらっ! あなたは……」
「えっと私はミリアと言います。ステラ王女殿下。もしかしてこちらに来ているご予定などあったでしょうか?」
「いいえ。でも、今日はちょっと調べ物をしに来たのよ」
「そうなんですか。ちなみにどのようなものをお探しでしょうか?」
「実はここ最近起こっている謎の病について少し知りたいことがあるの」
「それは……もしかしてこの国の王になれる資格を持つ方が亡くなるというものですか?」
「もしかして知っているの? 一体どういうことなのか教えてもらえるかしら」
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