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52話

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優斗の部屋から出ると
俺の部屋に戻り
ベッドに腰掛けると
両手で顔を覆い
(どうしよう!?……優斗にキスしてアイツキスだけでイッちゃってるし!?今日はあれでやめにして部屋から出てきちゃったけど……大丈夫なのかアイツ)
「はあ……」
大きなため息が出たのであった。
翌日 俺は教室のドアを開けると、既に優斗が座っていた。……しかし様子がおかしい、どうやら寝不足なようだ。そんな彼を見ていると自然と顔が緩んでくる。
(俺の彼氏は可愛すぎかよ)
そう思いつつ、俺は彼の方へと向かう。そして俺は昨日のことを思い出してニヤけそうになっていた。
(優斗……かわいいなぁ…………はっ!?いかんいかん)
俺は気を取り直して、いつも通り話しかけることにする。すると、
「お、おはよう」
「ああ、おはよう」
ぎこちなく挨拶をしてくる優斗が可愛すぎて思わず抱きしめたくなる衝動に駆られた。
(ダメだ!落ち着け俺!ここは学校だし……そんな事したら……嫌われる)
「……?……どうしたんだ?」
心配そうな顔で見る優斗。
……俺は理性を抑えるのに必死になる。そして、やっとの思いで答えることができた。
「……な、なんでもないぞ」
(危なかったー!!あと少しで抱きしめるとこだったわ)
すると優斗がいきなり、机に置いてあった教科書を手に取り立ち上がる。そしてそれを俺に見せてきた。
(ん?何してんだ?)
「ほら、昨日の授業と範囲」
それを見せてくる。……俺はその意図にすぐ気づいた。
(なるほど、勉強を教えて欲しいというわけか)
「ああ、いいぜ。じゃあ放課後……俺の部屋で(何言ってる俺!?それだと抱きしめと頭なでなでしてしまう可能性アリだろ!?)」
それを聞いて少し赤みを増す優斗の頬。
「……(う、可愛ええ)」
「そ、その……ありがとう。じゃ放課後……部屋に行くよ」
俺の言葉に優斗が了承してくれた。
「おう!」
そして授業が始まるまで俺達は話していた。
昼休み 俺は屋上にいた。理由は簡単、弁当を食べるためである。すると、誰かが俺の隣に座ってきた。それは勿論、優斗だ。
「隣、失礼するよ」
「お、おう……いいぜ」
そう言うと優斗は鞄の中から、弁当を取り出し俺に渡してきた。
「これ、今日の分な」
そう言われて渡されたのは、二つのおにぎり。俺はそれを無言で受け取った。そして俺も自分の分の昼食を取り出す。すると優斗は不思議そうに聞いてきた。
「もしかして……真司っていつもこんな感じのご飯食べてるのか?」
それには俺はこう答えるしかないだろう。
「ま、まあな……」
俺達の間に微妙な空気が流れる。俺はこの気まずさを何とかしたくて言った。
「そ、そうだ!優斗はいつもどうやって飯を食べているんだ?」
「……え?普通に一人でだけど……」
優斗がキョトンとした様子でこちらを見る。
……やっぱりそうか。俺の考えは間違っていなかったらしい。
(でも、せっかく恋人になれた訳だし、たまには一緒に食べるのもいいかもな……)
そう考えた俺は優斗に提案した。
「なあ優斗、明日からは俺と一緒に食べないか?」
優斗は驚いた表情を浮かべながら答えてくれた。
「うん!分かった」
「よし!決まりだな!それと、俺が毎日優斗に作ってもいいぞ」
俺の言葉に優斗の顔はパァッと明るくなり
「え!?本当か?」
「もちろんだ!俺は料理が得意だからな」
俺が胸を張ってそう言うと、優斗は笑顔で答えてくれた。
「やったぁ!楽しみにしているからな!!」
そう言うと彼は嬉しそうに俺に微笑む。……そして二人で笑い合うと俺達は食事を再開した。
~真司視点~
「うーん、どうすっかなぁ~」
今日は何時もの通学路ではなく、商店街の方を通って学校に来ているのだが……俺は迷っていた。何故なら目の前を歩いているカップルの男が、女の子のスカートの中を覗いているからだ。
(うわー、まじでキモいなあの男。女の子もなんで気付かないのかね?パンツ見えちゃいますよー?って教えてあげればいいのに)
そんなことを考えながらも、俺は優斗にメールをするのであった。
~優斗視点~ 真司からメールが届きました。
(……真司からの連絡だ)
僕はすぐにスマホを開き、真司から届いたメールを確認する。その内容は……
(『明日から俺と登校しないか?』……だって!?……そんなこと言われなくてもするに決まっているじゃないか!!……あ、返事返さないと)
そして、真司に『わかった』とだけ送り返した。
(これで大丈夫……かな?)
僕と真司は、学校への帰り道を歩く。その道中、会話は一切なかった。
ドキドキしすぎてそんな余裕なんて無かった。
そんな中、僕の目にふとあるものが映る。
(あれは……花屋さん?綺麗な花が沢山ある)
僕は無意識のうちに足を止めていた。そんな僕に気づき、真司が声をかけてくれる。
「どうした優斗?」
その言葉で僕は我に帰る。
「あ……ごめん、なんでも無い」
そしてまた歩き出そうとすると、真司が再び立ち止まった。
「あ、待ってくれ」
「えっ……どうしたの真司?」
そして今度は彼が足を止めた。
「……お前、何が欲しいんだ?」
「えっ……な、何が?」
いきなり聞かれても分からないよ。……でも、さっきの花を見たらつい考えてしまった。
「う、ん……そうだね……花束、とか?」
「花束?例えばどんな?」
「……お、思い出になるようなもの、かな」
そう答えると、真司は少し悩んだ顔をしてからこう言ってきた。
「……よし!優斗!俺に少し付き合ってくれ!」
そう言うと真司は花屋の方に歩いていく。僕はその後を慌てて追いかけた。
「ま、まってよ真司!!どこに行くの?」
「ああ、悪い悪い。ちょっと行きたいところがあるんだ。そこについてきてくれ」
「わ、分かった」
そして、数分後。僕らは小さな公園へと着いていた。
「ねえ、ここは一体……?」
そう聞くと、彼はベンチに座りながらこう言った。
「ここな……昔、俺が妹と一緒に遊んでいた場所なんだ。まあ、最近は来てなかったんだけど」
その言葉を聞いて納得する。
(なるほど、だから懐かしいような……優しい感じがしていたのか)
「それで優斗、ここに連れてきた理由だけど……」
「うん」
僕は真剣な眼差しで彼の話を聞く。
「実はな、俺は今朝優斗に一緒に登校しようと言ったときから考えていたことがある」
そう言いつつ立ち上がる真司。それを見て僕は彼に向かって問いかける。
「それって?」
それに答えてくれたのは彼の次の行動だった。
突然俺の目の前に現れたかと思うと、俺に優しく抱きついてくる真司の姿があったのだ。
「優斗……」
耳元で囁かれびくっとする。
顔を上げるとそのままキスされる。
「ちょ……んぅ……」
「ん……優斗……可愛いぞ」
唇を話すと、そう言って再び口付けてくる。
「ちゅ……れろ……はぁ……」
舌を入れられ唾液を流し込まれる。頭がクラクラしてきて何も考えられなくなってきた。
「んむ……じゅぷ……はぁはぁ」
ようやく口を離してくれた時には、お互い息が荒かった。
「……これ以上……だめ」
優斗からストップが掛かる。
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