のほほん異世界暮らし

204 肉野菜炒めと豆腐のブイヨンスープ

農場での作業を終え、自宅に帰りつくと、すぐにシャズナと共に納品分以外の農作物を仕訳し始めた。野菜の一つひとつを丁寧に選別し、翌日の納品分を確保した後、今日の夕食に使う分をキッチンへと運んだ。外は冷たい風が吹き、窓ガラスには霜がかすかに張り付いていたが、室内は火を灯した調理場のおかげで心地よい温かさに包まれていた。

「さて、夕食の準備を始めるか」と呟くと、シャズナが耳をぴくりと動かしてこちらを見た。伏せの姿勢で落ち着いた様子を見せながらも、しっぽをゆるやかに動かし、その毛並みが床を軽く撫でているのが可愛らしかった。彼は体を丸め、肉球を身体の中に隠してじっとしている。そんな様子に思わず微笑みがこぼれた。

まずはブイヨンスープの仕込みに取りかかった。今日は豚肉と骨を使って丁寧に出汁を取る。鍋の中で煮立つ骨からは、じわじわと旨みが染み出してくる。しっかりとアクを取りながら、出汁が黄金色に変わる様子を見守る。この温かな香りがキッチンに広がり、心地よい音とともに湯気が立ち上っていく。

スープの具材には豆腐をメインに、シャキシャキとした食感が楽しめる青菜と細かく刻んだ人参を加えた。野菜たちはスープの中でゆったりと揺れ、味を吸い込んでいく。シャズナはそんな光景を、耳を時折ぴくりぴくりと動かしながらも伏せたまま見守っている。料理が出来上がっていく音と香りに、シャズナの期待が伝わってくるようだった。

ブイヨンスープを火から下ろし、次に取りかかったのは肉野菜炒めだ。新鮮なキャベツ、玉ねぎ、ピーマン、もやしを豚肉とともに炒め、少量の塩と胡椒、そして特製の調味ダレで仕上げた。鍋の中で食材が踊り、香ばしい匂いが一層部屋に広がった。シャズナがさらに耳をぴくりと動かし、その反応にまた微笑んでしまう。

「さあ、出来上がったよ」と声をかけると、シャズナが伏せの体勢から頭を持ち上げ、じっとこちらを見つめた。その瞳の輝きはまるで宝石のようだった。お皿に盛りつけた料理をテーブルに運び、シャズナの前には、彼用の小さな食器にちょっとしたご褒美として、豆腐と野菜の少しを添えた。

食事が始まると、シャズナは静かに食べ始めた。僕もその隣で炒めた野菜の旨みを味わい、スープの滋味深い風味を楽しむ。食事の後、シャズナは満足げに伸びをし、大きく背中を伸ばしてから僕の足元をくるくると回り始めた。その姿に、自然と笑みがこぼれる。

「そんなに嬉しいのか？」と問いかけると、シャズナは少しだけ恥ずかしそうに「にゃー」と短く鳴いた。その声はまるで、「美味しかったよ、ありがとう」と伝えているかのようで、心が温かくなった。

夜は静かに深まり、僕たちは充実した一日を振り返りながら、再び穏やかな時間の中へと戻っていった。