のほほん異世界暮らし

みなと劉

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246 数日後 夏日到来と水分補給

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数日が経ち、夏の日差しはますます強くなり、まるで太陽が大地を焼くような暑さがやってきた。シャズナは相変わらず元気いっぱいで、毎日を楽しむようにはしゃぎ回っている。暑さにもかかわらず、その小さな体はどこか涼しげに見える。おそらく、毛皮に包まれた体は、暑さを感じてもそれをうまく調整しているのだろう。彼が朝から元気に走り回る姿を見ると、僕まで元気をもらえるような気がする。

僕自身も、暑さに負けずにしっかりと水分補給をしている。これまでにも熱中症になったことが何度かあったが、毎日こまめに水を飲み、休憩を挟むことで、そのようなことはもう避けられるようになった。畑での作業が続く中、僕の水筒は手放せないアイテムだ。水分補給が欠かせないこの時期でも、シャズナが元気でいる限り、僕もまた元気を出して作業を続けられるのだ。

さて、今日も農場へ出かける時間が来た。シャズナは僕の後ろを軽快に歩きながら、時々僕の足元でぴょんぴょん跳ねては、何か面白いものを見つけたように顔を輝かせる。農場へ向かう道を歩いていると、すでに畑は夏の気配を漂わせ、色とりどりの作物が育ち始めている。太陽の光が地面を照らし、乾いた土がほんのり熱く感じられる。シャズナもその熱気に少し興奮しているのか、足取りが軽くなる。

農場に到着すると、僕はまず倉庫から軍手を取り出して、手にはめる。今日は少し特別な作業がある。グリーンピースの収穫や野菜の間引きが終わった後、畑の水やりをして、少しでも畑が涼しくなるように工夫しながら進めていく。シャズナはそばで静かに座って、僕の作業を見守っている。時々耳をピクピクさせながら、僕が動くたびにその動きを追っている。

農作業が終わり、太陽がまるで僕たちを追いかけるように高く昇っていた頃、今日は少しリフレッシュを兼ねて、農場の水道を開けて腕を洗うことにした。水道から流れる冷たい水は、暑さでほてった体に心地よく浸み込んでいく。僕は水を手ですくって腕にかけ、さらに少し顔を洗うと、気持ちがすっと落ち着くのを感じた。暑さと疲れが少しでも軽減される瞬間だ。

シャズナも近くにやってきて、水道のそばに足を運ぶ。彼は水の音を聞くと、興味津々で近づき、少しだけ水を舐めるように顔を近づけてみたり、手を水に入れてみたりする。ちょっとした水浴びをしているようなその姿を見て、僕は微笑む。彼もまた、この暑い日には少しでも涼を感じたくなるのだろう。水の冷たさが心地よかったのか、シャズナはしばらくその場でじっとして、水の中で足を浸していた。

その光景を見て、僕もまた心が和んでいく。シャズナの無邪気な姿を見ると、どんなに疲れていても、この一瞬が全てを癒してくれるように思える。涼しくなった体で、僕たちはそのまま少しだけ休憩を取ることにした。日陰に腰を下ろし、静かなひとときを過ごしながら、シャズナが僕の足元に寄り添ってきて、まるで「お疲れさま」とでも言っているかのように、軽く頭を擦りつけてきた。

「ありがとう、シャズナ。君がいるから、今日も頑張れるよ」そう言って、シャズナを優しく撫でると、彼はにゃーと鳴いて、満足げに目を細める。穏やかな夏の午後、その小さな命の存在が、僕にとってどれほど大切で貴重なものなのか、改めて感じることができた。

暑い夏が続く中でも、僕たちはお互いに支え合い、少しずつでも心地よいひとときを作りながら過ごしている。今日もまた、シャズナと一緒に農場で過ごすことができたことに、感謝の気持ちが湧いてくる。そして、この季節の中で、少しでも涼を感じることができる小さな幸せを、大切にしていきたいと心から思うのだった。

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