のほほん異世界暮らし

291 夕飯作りとリズミカルなふたり

夕方、薄暗くなり始めた部屋の中で、夕食の準備を整える時間がやってきた。外は冷たい風が吹き、木々が音を立てて揺れている。僕はキッチンに立ち、温かい食事を作ることを思いながら、シャズナとルシファンのことを思い浮かべた。二人が元気に遊んでいる姿を見ていると、自然と心が穏やかになっていく。

シャズナはもうすっかり遊び疲れた様子で、ルシファンと一緒にキッチンの端でうとうとし始めた。しかし、夕食の匂いが広がると、ふたりとも急に目を覚まし、リズミカルに首を振りながら、じっと僕の方を見つめている。キッチンに漂う香りに敏感なシャズナは、尻尾をふりふりと動かしながら、足元をくるくると回る。ルシファンはその横で、小さな手で体を支えながら、キッチンの中に視線を集中させていた。

「もう少しだよ、待っててね」と僕が優しく声をかけると、シャズナはちょっとだけ鳴き声を上げ、ルシファンも小さく「ちち！」と反応している。その仕草に、僕は思わず笑みがこぼれる。二人とも、夕食を待つその時間を何とも楽しみにしているようだ。

僕は手際よく材料を切り分け、フライパンに油を引いて肉を焼き始める。シャズナとルシファンは、匂いにつられてやってきて、僕の周りでお座りをして、まるで僕が何をしているのかじっと見守るようにしている。その姿がなんとも愛らしくて、思わず心が温まる。

フライパンから立ち上る美味しそうな香りが部屋に広がると、シャズナとルシファンはさらに首をリズミカルに振り、目をキラキラとさせて僕の顔を見上げる。シャズナはときどき足元にスリスリと寄り添いながら、料理の進み具合に合わせて期待を膨らませている様子だ。ルシファンも小さな体をぴょんぴょんと動かし、じっとしていられない様子でそわそわと僕を見つめる。

僕が料理を進めるたびに、シャズナとルシファンは僕の近くに寄り添って座り、その間に何度も首を振りながら、おいしそうな匂いに引き寄せられるようにしている。まるで、待ちきれない気持ちを表現しているかのようで、その姿に僕も笑いがこぼれる。

「もう少しだから、待っててね」と言って、最後の仕上げをしていると、シャズナとルシファンはじっと僕の手元を見つめて、微動だにせずに待っている。その姿勢がまるで「美味しいご飯をくれるのは君だよね」とでも言いたげで、僕はついその気持ちに応えたくなり、急いで最後の一品を盛りつける。

料理が完成し、食卓に運ぶと、シャズナとルシファンはすぐに足元に集まり、顔を上げてじっと見つめている。その表情に、これまでの待ち時間のすべてが表れているようだ。僕は嬉しそうに笑いながら、それぞれに少しずつ食事を取り分け、シャズナとルシファンに向けてお皿を差し出した。

シャズナは、そっと鼻を近づけて匂いを嗅ぎ、一口食べると満足そうに目を細める。ルシファンも、慣れた手つきで小さな前足を伸ばし、一心不乱に食べ始める。二人の姿に、僕は心からの幸せを感じ、静かな夕食のひとときを共に過ごしていることがとてもありがたく思えてきた。

その後も、シャズナとルシファンは食事を楽しみながら、時折目を合わせては小さな鳴き声を上げ、まるで「美味しいね」と言っているかのように見える。キッチンに漂う夕食の香りと、二人の幸福そうな姿に包まれて、僕は幸せを感じながら、今日もまたこの温かい家族と過ごすことができる喜びを噛みしめていた。