のほほん異世界暮らし

297 家のソファはふたりが先に占拠した

市場での買い物を終え、車に積み込んだ農産物や道具、食材を確認しながら家への道を進む。道中、シャズナとルシファンは助手席に仲良く座り、窓から吹き込む風を気持ち良さそうに感じ取っている。市場の賑わいの余韻がまだ心に残っているようで、ふたりはどこか興奮気味だ。道のりは長くないものの、僕の中では穏やかな時間が流れていた。ルシファンは小さな前足を窓枠に掛け、耳をふわっと広げて目を輝かせている。一方、シャズナは僕の膝に頭を乗せ、満足げな表情を浮かべている。

やがて自宅の門が見えてくると、ふたりは再びそわそわし始めた。家に近づくたびに、シャズナの尾が嬉しそうに揺れ、ルシファンも小さな体で待ちきれないように動き回る。僕はトラックを停め、荷物を降ろしながら家の扉に手を伸ばすと、シャズナとルシファンはすでに家の中に入る準備を整えていた。

「ただいま」と言って扉を開けるや否や、ふたりは勢いよく家の中に飛び込んでいった。シャズナはまるで風のように駆け抜けて廊下を滑り込み、ルシファンもその後を追いかけるように小さな足音を立てて走っていく。僕が家に入る前から、すでに家全体に楽しげな空気が満ちていた。

扉を閉めて荷物を置くと、居間の方からは小さなガサガサとした音が聞こえてきた。何事かと思って見に行くと、目の前にはすでにソファを占拠しているシャズナとルシファンの姿があった。シャズナは体を丸め、ふかふかのクッションの上に陣取っている。ルシファンはその隣で、小さな体を精一杯伸ばして僕の方を見上げ、少し得意げな顔をしていた。

その光景を見た瞬間、僕の口元には自然と笑みがこぼれた。まるで自分たちの場所だと言わんばかりのふたりの振る舞いは、どこか愛らしく、心の奥底から温かい気持ちを引き出してくれる。シャズナはふっと目を細めて満足そうに寝そべり、ルシファンは細かな毛繕いを始めた。こんなに元気で、こんなに幸せそうなふたりを見ていると、一日の疲れも不思議と消えていく。

「もう、君たちが先に帰ってきたみたいだな」と僕は冗談めかして言う。シャズナはその声に小さく尻尾を振り、ルシファンもチラリとこちらを見て、また自分の毛づくろいに戻った。そんな微笑ましい光景が家に満ちると、僕もようやく荷物を整理することを忘れ、一息つくことにした。家には安らぎと安心感が溢れていて、それは僕だけでなく、この小さな仲間たちも同じように感じているのだろう。