のほほん異世界暮らし

307 膝の上とルシファンとクッキー

ある穏やかな午後、僕はキッチンで甘い香りが漂う中、焼きたてのクッキーを皿に移していた。シャズナはその香りを嗅ぎつけたのか、優雅に尾を揺らしながらキッチンへやって来て、きらきらとした目で僕を見上げている。彼の瞳には好奇心と期待が混じっているように見えた。ルシファンも、どこからともなく小さな足音を響かせて現れ、キッチンの隅でちょこんと座って僕を見つめていた。

「お待たせ、できたよ」と僕が言うと、シャズナは嬉しそうにしっぽを振り、ルシファンは少しピョンと跳ねるように動いてその小さな体を揺らす。僕は一度クッキーの香りを吸い込んでから、温かさを感じるそのままの状態で一つを手に取り、リビングに移動した。

シャズナは僕の後をぴったりとついて来て、その姿はまるで忠実な友人のようだ。一方、ルシファンも僕のズボンの裾にそっとつかまりながら、器用に後ろ足で立ち上がってついてくる。部屋のソファに腰を下ろすと、ルシファンは一目散に僕の膝の上に飛び乗り、その軽やかで小さな体が膝の上でピタッと安定した。

僕は微笑みながら、「おや、ルシファン、今日は特等席を狙ってるのか？」と声をかける。彼は小さな手で僕の指をつかんで遊ぶような仕草をしながら、つぶらな瞳で僕を見上げ、興奮したように鼻をピクピク動かしていた。

「はい、これ、お待たせ」と言って、クッキーの小さな欠片を彼に差し出すと、ルシファンは器用にそれをつまみ、嬉しそうにかじり始めた。その仕草はなんとも微笑ましく、僕の心を一層温かくしてくれる。小さな歯でカリカリとクッキーをかじる音が心地よく響く。僕の膝の上で、ルシファンがクッキーを堪能している間、シャズナも僕の横に座り込み、その長いしっぽをゆっくりと左右に揺らしながら、楽しげに見守っている。

「君も欲しいんだろ？」と僕が言うと、シャズナはゆっくりと僕の手に顔を近づけ、クッキーの匂いをかいでから小さな一口を優しく受け取った。彼は一口ごとに、まるで上品に味わうかのようにゆっくりと噛みしめている。シャズナのそんな振る舞いを見ていると、僕はふと微笑まずにはいられなかった。

クッキーの甘さが部屋に広がり、心地よいひとときが流れていく。膝の上のルシファンは、クッキーを食べ終えると小さくあくびをし、そのまま僕の膝の上で小さく丸まってしまった。彼の柔らかな体の温かさが膝を通して伝わり、僕は優しく頭をなでてやる。すると、彼は小さな声で「ちゅん」と甘えたような鳴き声を立てて、さらに深く眠りについた。

シャズナはそんなルシファンの姿を見て、しばらくすると僕の横からそっと体を寄せてきた。彼の穏やかな表情と、僕を包み込むような優しさに、心が一層安らぐ。僕たちは静かな午後、クッキーの甘さに包まれながら、穏やかで幸せな時間を共有していた。シャズナの柔らかな毛並みに触れ、ルシファンの小さな体の重みを感じながら、僕はこの小さな家族と一緒にいる喜びを改めて実感するのだった。