のほほん異世界暮らし

313 大晦日の前日と二匹と僕と

大晦日の前日、家の中は特別な雰囲気に包まれていた。外は雪がちらちらと舞い、静かに夜が降りてきていた。部屋の中は、魔力ストーブの優しい温もりで満たされ、ホリデーシーズンらしい穏やかな空気が流れていた。僕は窓辺から外を見つめながら、一年がもう終わろうとしていることに思いを馳せた。

その時、シャズナが足音も軽やかにリビングルームにやって来た。彼女の毛並みは、ストーブの光を受けて温かい琥珀色に輝いている。彼女はゆっくりとした歩調で僕のそばまで来ると、大きな瞳で僕を見上げて、まるで「今日はどうしたの？」とでも聞いているようだった。僕は笑って彼女の背中を優しく撫でると、シャズナは満足そうに目を細めた。

その後ろから、ルシファンが小さな足音を立ててちょこちょこと駆けてくるのが見えた。ルシファンは、いつも通りの元気さで僕の膝に飛び乗り、可愛らしい声でピーピーと鳴いた。彼もまた、今日が特別な日だと感じ取っているのか、いつも以上に甘えてくる。僕は思わず微笑み、膝の上に座るルシファンの小さな頭を優しく撫でた。

「今年もいろいろあったね」と僕は独り言のように呟いた。一年の間、農場の仕事や市場への納品の日々、思いがけないトラブル、そして楽しい出来事の数々が頭をよぎる。シャズナとルシファンと共に過ごした日々は、何よりもかけがえのない宝物だと改めて感じる瞬間だった。

ルシファンは僕の膝から軽くジャンプして、シャズナのそばに歩み寄る。二匹は一瞬顔を見合わせた後、シャズナがルシファンの小さな頭を優しく舐めた。その光景は、まるで姉と弟のような微笑ましさがあった。猫と鼠という一見相容れないはずの二匹が、こうして仲良く寄り添い合うのは本当に不思議なものだ。二匹が僕に向けている愛情と信頼が、自然と胸を温かくしてくれる。

「さあ、今日は大晦日の準備もしないとね」と僕は声を上げた。そう言って、テーブルの上に置かれたお菓子や飲み物、明日のための特別なお料理の材料を確認する。シャズナは僕が動くのを見て、まるで手伝いたいと言わんばかりに尻尾を揺らして後をついてくる。ルシファンもまた、キラキラと輝く目で僕を見上げ、興味津々に足元を駆け回った。

家の中に笑い声と優しいぬくもりが広がり、雪が静かに舞う外の景色と対照的な温かさが部屋を包んでいた。この一年、どれほど忙しく、時には困難もあったけれど、こうして大晦日を迎える前日に、大切な仲間たちと共に平穏な時間を過ごせることに感謝せずにはいられなかった。シャズナとルシファン、彼らと過ごすこの瞬間が、来年もまた幸せに続いていきますようにと、心の中で願わずにはいられなかった。