のほほん異世界暮らし

みなと劉

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342 春の訪れと奉納祭り

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毎年春の訪れと共に、この町では奉納祭りが盛大に行われる。豊かな自然と魔力に恵まれたこの地に感謝し、人々が集まって一年の実りと無事を祈る重要な行事だ。僕にとってもこの祭りは特別な日だ。何より、シャズナとルシファンも一緒に参加できることが、僕にとっては一番の楽しみだった。

その日の朝は早かった。窓から差し込む日の光で目を覚まし、僕は深呼吸をした。外からはすでに町の広場で準備が進むざわめきが聞こえてくる。屋台を設営する木の音や、準備に忙しい声が響き渡り、空気に独特な活気が満ちていた。僕はベッドから抜け出し、早速身支度を整えると、足元に控えていたシャズナとルシファンが軽やかな動きで僕を迎えてくれた。

「今日はお祭りだよ、二匹とも」と声をかけると、シャズナはしなやかな動きで尻尾を振り、ルシファンは「キュン!」と鳴いて前足を僕の膝に掛けた。その仕草に思わず笑みがこぼれる。白い毛並みが美しいシャズナは、いつも落ち着きのある振る舞いを見せるが、今日はその瞳にも興奮の色がうっすらと浮かんでいる。ルシファンはと言えば、興奮を隠しきれずに部屋の中を小さく駆け回り、気持ちを抑えられない様子だ。

二匹の首には、祭りの日にだけ着ける特製の飾り布を巻いた。シャズナは銀の糸で縁取られた紫色の布を、ルシファンは金の刺繍が施された青い布を誇らしげに見せている。二匹の瞳は輝き、準備ができたことを告げるように僕を見上げた。

外に出ると、街道はすでに多くの人々と生き物たちで賑わっていた。行商人たちは色とりどりの露店を並べ、魔法の道具や珍しい品物を競って売っている。子供たちの笑い声が響き、魔力で動く小さな人形がパレードのように道を進む様子に、シャズナもルシファンも興味津々で目を輝かせていた。

広場に近づくにつれて、音楽のリズムがはっきりと聞こえてきた。太鼓の音に合わせて人々が踊りを披露し、周りでは手拍子が湧き起こる。ルシファンはそのリズムに体を揺らしながら、跳ねるように進んでいく。その横を、シャズナは優雅な足取りで歩き、彼女の存在がまるでこの賑やかさの中に一筋の清涼感をもたらしているようだった。

「ここで一休みしようか」と僕が声をかけると、二匹はうなずくように僕の足元に座り込んだ。屋台からは甘い香りが漂い、焼き立てのパンや蜜のかかった果物が目に飛び込んでくる。僕はシャズナとルシファンのために、魔力で作られた特製のペット用菓子を買い求めた。二匹は目を輝かせ、僕の手の中のご馳走をじっと見つめる。

「お待たせ」と一言添えてお菓子を差し出すと、シャズナは優雅に受け取り、ルシファンは勢いよくそれに飛びついた。二匹が仲良くお菓子を食べる姿は、周りにいる人たちの目を引き、子供たちが「かわいい!」と声を上げて手を叩いた。

やがて、祭りのクライマックスである奉納の儀式が始まった。街の中央に設置された祭壇には、豊穣の女神像が鎮座し、その前で賢者が魔力の杖を手に祈りを捧げていた。静かな空気が広がり、人々はその光景を見守る。シャズナとルシファンも、その神聖な雰囲気に何かを感じ取ったのか、じっと動かず、祭壇を見つめている。

鐘の音が響き渡り、奉納の儀式が終わると同時に、空へと無数の魔法の花火が打ち上げられた。色とりどりの光が夜空に広がり、人々の歓声があがる。ルシファンはその光景に驚きながらも、目を輝かせて尻尾を振り、シャズナは落ち着いた表情で僕の横に寄り添った。

「来年もまた、こうして一緒にこの祭りを迎えられるといいね」と僕がつぶやくと、シャズナは優しい目で僕を見上げ、ルシファンは僕の腕に顔を擦り付けてきた。二匹からの愛情を感じながら、僕はこの幸せなひとときを胸に刻み込んだ。

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