のほほん異世界暮らし

ルシファンのいたずらと僕の髪の毛

夜が静かに更け、僕はリビングの椅子に腰かけながら本を読んでいた。窓の外はしんしんと冷え込んでいて、月明かりがうっすらと雪景色を照らしている。魔力式の暖炉がほのかな赤い光を放ち、部屋の中はポカポカと暖かい。膝にはシャズナが丸まって眠っていて、リズミカルな寝息を立てていた。柔らかい毛並みの感触が心地よく、僕も穏やかな気持ちになっていた。

一方で、ルシファンの姿が見当たらないのが少し気になった。彼はおとなしい時もあれば、急にいたずら心が爆発することがあるからだ。あまりにも静かだと、何かしら企んでいるのではないかとつい警戒してしまう。

「ルシファン？」
名前を呼んでも返事がない。ふと視線を上げると、棚の上でじっとこちらを見下ろしているルシファンと目が合った。彼の瞳がキラリと光り、いたずらを企んでいる独特の表情を浮かべているのがわかる。

「何を考えてるんだ？」
僕がそう声をかけると、彼は軽やかに棚から飛び降り、音もなく僕の背後に回り込んだ。


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次の瞬間、ふわりと何かが頭に触れる感覚がした。

「えっ？」

振り向く間もなく、ルシファンが僕の頭に飛び乗り、その小さな前足で髪を弄り始めた。

「ちょっ、ルシファン！何してるんだ！」

彼は僕の髪の毛を引っ張ったり、口でくわえて引っ張ったりしている。小さな爪が時折引っかかる感覚がして、少し痛いが、それ以上にくすぐったくて耐えられない。

「やめろってば！」
笑いながらルシファンを手で追い払おうとするが、彼は軽快に動いて全然捕まらない。その間にも髪の毛をぐしゃぐしゃにされてしまい、まるで絡まった毛糸のような状態にされてしまった。

「ルシファン、君は本当に……！」
ため息をつきながらも、なんだか怒る気になれない。彼が楽しそうに遊んでいる姿を見ると、こちらもつい笑ってしまうのだ。


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騒ぎに気づいたシャズナがむくりと起き上がり、少し不機嫌そうに「にゃー」と短く鳴いた。その鳴き声には、「また騒いでるの？」という呆れたニュアンスが含まれているようだった。

「シャズナ、助けてくれないか？」
僕がそうお願いすると、彼女は大きく伸びをして、ゆっくりと椅子から降りた。そして、すたすたと僕の足元まで来ると、鋭い目つきでルシファンを睨みつけた。

その瞬間、ルシファンがピタリと動きを止めた。どうやらシャズナの迫力に圧倒されたらしい。僕の頭から軽やかに飛び降りると、すぐさま安全な距離を取ってシャズナに向かって「ち！」と短く抗議のような声をあげた。

「ほら、シャズナだって怒ってるだろう？」
僕がルシファンに注意すると、彼は不服そうに背中を向け、しばらく後ろを振り返らなかった。


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しかし、その態度も長くは続かない。数分もしないうちにルシファンがそろりと戻ってきて、僕の膝の上にちょこんと座った。少し反省しているような表情を浮かべながら、小さな前足で僕の服の袖を軽く押してくる。

「ったく、しょうがないな。」
僕は彼の頭をそっと撫でた。すると、彼は満足そうに目を細め、くつろぎ始めた。

シャズナも再び椅子に戻り、丸まって眠りに落ちた。僕の髪はボサボサのままだが、この平和な瞬間が心地よく、直すのは後回しでいいか、と思った。

夜はまだまだ続くけれど、この小さな騒ぎが愛おしく、僕の心を温めてくれるのだった。