のほほん異世界暮らし

畑仕事の続きと三匹の手伝い

再び鍬を手に取り、耕し残した畝を整えていく。土の中には小さな虫が顔を覗かせ、冬を越えてもなお生きる力を感じさせる。空気はまだ冷たいが、土の中はどこか温かい。春の息吹が確かにそこにあるのだ。

「さあ、次はトマトの種だな。」

僕はトマトの種を手に取り、土に等間隔で埋め込んでいく。リッキーがぴょんぴょん跳ねながら近くで見守っている。時折、好奇心からか、鼻先で土を突いてみたりしている。

「おいおい、あんまり掘り返すなよ。せっかく植えたんだからさ。」

軽く注意すると、リッキーは「ぴっ」と一声鳴いて、申し訳なさそうに耳を垂らす。それでも懲りずにまた別の場所で跳ね回る姿に、思わず笑ってしまう。

一方、シャズナはというと、すっかり日向ぼっこを始めている。ふさふさの白い毛並みが陽光を浴びて輝き、気持ちよさそうに目を細めている。

「シャズナ、お前も少しは手伝ってくれよ。」

声をかけるが、返ってきたのは「にゃーん」と甘えたような声だけだった。

ルシファンはというと、畑の端で何かを見つけたのか、地面を掘り返している。小さな黒い体がせわしなく動き、土を飛ばしている。

「おい、ルシファン。何を見つけたんだ？」

僕が近づくと、ルシファンは得意げに「ちっ、ちっ！」と鳴きながら、小さな芽を見せてくれた。どうやら自然に生えてきたハーブのようだ。

「お前、よく見つけたな。それ、あとで育ててみるか。」

ルシファンの頭を軽く撫でると、満足げに目を細める。

午後のひとときと三匹の戯れ

作業を一通り終えた頃には、日もすっかり高くなっていた。軽く汗を拭きながら、魔力式トラックの荷台に腰を下ろす。持参したパンとチーズ、そして温かいスープを取り出し、簡単な昼食を楽しむことにした。

「お前たちも食べるか？」

シャズナには小さくちぎったパンを、リッキーには細かく刻んだ野菜を、そしてルシファンにはチーズを少し分けてやる。それぞれが満足げに頬張り、幸せそうな表情を見せる。

「ほんと、お前たちといると退屈しないな。」

三匹が僕の周りに集まり、思い思いにくつろぐ中、穏やかな時間が流れていく。遠くから鳥のさえずりが聞こえ、風が草木を揺らす音が心地よい。

帰路と夕暮れの風景

昼食を終えた後、農具を片付け、トラックに乗り込む。三匹も荷台に飛び乗り、くつろぐ姿が見える。帰り道は、田園風景が広がる一本道。夕陽が傾き始め、辺り一面が黄金色に染まっていく。

「今日はよく頑張ったな。明日はもっと暖かくなるかもしれないぞ。」

僕がそう言うと、リッキーが「ぴっ！」と元気よく鳴き、シャズナも「にゃーん」と返事をする。ルシファンは相変わらず落ち着いた様子で、ただ小さく「ちっ」と鳴くだけだった。

家に着く頃には、すっかり日が暮れていた。玄関の扉を開けると、三匹は勢いよく中に突進していく。

「お前ら、元気すぎだろ……。」

苦笑しながらも、その無邪気な姿に癒される。今日も一日が終わり、また新たな日が始まる。春の訪れとともに、これからの季節がどんな日々を連れてくるのか楽しみだった。