のほほん異世界暮らし

市場での納品と三匹の活躍

市場の中央広場に到着すると、魔力式トラックを指定の納品エリアに停めた。早朝から農場で積み込んできた野菜や果物は新鮮そのもので、荷台を開けた途端に瑞々しい香りが広がる。三匹もその香りに誘われたのか、トラックから飛び降りて周囲を探検し始めた。

納品作業を始めると、三匹も自然と僕の動きを真似するように手伝ってくれる。ルシファンは軽々と小さな木箱を咥えて運び、リッキーは僕が出したものを並べるようにくるくると走り回る。シャズナはその二匹を落ち着いた目で見守りながら、自分も慎重に布袋を引っ張って運んでいる。

「おや、今日は随分と頼もしい助っ人がいるね。」
近くの商人が笑顔で声をかけてきた。

「ええ、彼らなりに手伝ってくれています。」
僕がそう返すと、三匹は誇らしげにこちらを振り返り、尻尾を振る。

特にルシファンは小さな子供たちの人気者になっていた。野菜の入った小袋を咥えて運ぶ姿を見て、子供たちは大喜び。
「かわいい！すごいね、賢いね！」
そんな声を聞き、ルシファンはますます得意げに動き回る。

納品がほぼ終わったころ、市場の端で何か騒ぎが起きていることに気づいた。近くにいた商人に話を聞くと、どうやら誰かが誤って積み上げていた木箱を崩してしまい、荷物が散乱してしまったらしい。

「困ったなあ、早く片付けないと通行の邪魔になる。」

商人たちが慌てている様子を見て、僕は三匹に目をやった。すると、シャズナが鋭い視線を送るように駆け出し、続いてリッキーとルシファンもその現場へ向かっていった。

シャズナは崩れた荷物を的確にくわえ、元の場所に戻していく。リッキーは小さな袋を運びながら周囲の人を避けるように動き、ルシファンはまるで指揮官のように周囲を見渡しながら適切な場所へ誘導している。

「なんて賢い子たちだ！」
「まるで市場の守り神みたいだな。」

商人たちが感心する中、三匹の協力で散乱した荷物はあっという間に片付けられた。最後にシャズナが静かに尾を振りながら戻ってきたのを見て、周囲から拍手が湧き起こった。

「本当に助かったよ。この子たちには感謝しきれないな。」
片付けを終えた商人がそう言って、三匹にご褒美として焼きたてのパンを手渡してくれた。

三匹は嬉しそうにパンを受け取り、僕の足元で少しずつかじり始める。その満足そうな表情を見ていると、こちらまで幸せな気持ちになった。

「今日もお疲れ様、みんな。お前たちのおかげで、僕も胸を張ってここにいられるよ。」

僕がそう声をかけると、三匹は「にゃー」と返事をするように鳴き、再び尻尾を振った。

納品を終え、市場を歩きながら買い物をしていると、あちこちで三匹のことを話題にしている声が聞こえる。
「あの三匹、すごかったね。」
「また見たいな、あの賢さ。」

その声を聞いて、三匹もどこか誇らしげに耳を立てているようだった。市場を後にし、魔力式トラックに乗り込むと、三匹は疲れたのか丸くなって居眠りを始めた。

帰り道、僕は彼らの寝顔を見ながら、今日の活躍を思い返していた。この三匹と一緒なら、どんな日も特別でかけがえのないものになる。市場の喧騒の中で彼らの存在が光り輝いたことが、何よりの証拠だった。

「さあ、帰ったら少し休もうか。今日もありがとう。」

エンジンをかけたトラックは、夕日に染まる道を静かに走り出した。