のほほん異世界暮らし

農場までの道

魔力式トラックは穏やかなエンジン音を響かせながら、朝の清々しい空気の中を進む。道路沿いにはしっとりと朝露に濡れた草花が輝き、遠くの山々がやわらかな日差しに包まれている。

助手席では、リッキーが前足で窓をぴょんぴょんと叩きながら景色を楽しみ、シャズナはその横で目を細めて座り、どこか優雅な雰囲気を漂わせている。ルシファンは僕の肩の上で、運転の様子をじっと見守りながら、「ちち！」と時折声を上げている。

「リッキー、窓が汚れるからあんまり叩くなよ。」
そう声をかけると、リッキーは一瞬こちらを振り向いて、鼻をぴっと鳴らしてから再び外を眺め始めた。楽しそうな姿を見ると、こちらまで心が和む。

農場へ向かう途中、道は広大な森の中へと差しかかる。木々の間を風が通り抜け、葉のざわめきが心地よい音楽のように響く。森の奥からは、鳥たちのさえずりや、小動物たちの走る気配が感じられた。

ルシファンがその音に反応して耳をぴんと立て、「ちち！」と小さな声を上げる。彼の目は、木々の間に何かを見つけたかのように輝いている。
「ルシファン、何か見つけたのか？」
そう問いかけると、ルシファンは僕の肩から飛び降りそうな勢いで身を乗り出すが、すぐに思いとどまったように僕の肩に戻り、満足げに小さく鼻を鳴らした。

トラックが森を抜け、広がる平原に差しかかると、目的地の農場が遠くに見え始める。大地には朝露をまとった野菜畑が広がり、風が吹くたびに青々とした葉が揺れる光景が目に入る。
「もうすぐ着くぞ。」
僕が声をかけると、リッキーは助手席から軽快に飛び跳ね、シャズナは目を細めて尾をゆるやかに振り、ルシファンは再び「ちち！」と元気な声を上げた。

農場へと続く最後の坂道を登り切り、トラックを駐車スペースに停める。エンジンを止めると、三匹は一斉に助手席から飛び降りて、僕の周りをくるくると回りながら興奮を隠せない様子だ。
「よし、みんな。今日も一日頑張ろうな。」
僕の言葉に応えるように、それぞれが元気いっぱいに動き出す。農場での新しい一日が、これから始まろうとしていた。