のほほん異世界暮らし

市場での楽しさと魔力式トラックに乗って自宅へ

市場の喧騒は相変わらず活気に満ちていた。屋台の立ち並ぶ通りでは、新鮮な果物や香辛料、手作りの工芸品が所狭しと並べられ、人々の声が絶え間なく響いている。

三匹もそれぞれ楽しんでいるようだった。リッキーは近くの果物屋でカラフルなリンゴをじっと見つめ、シャズナは織物屋の色鮮やかな布地に興味津々で鼻を寄せていた。そしてルシファンはというと、香ばしい匂いに誘われて小さなパン屋の前で「ちちっ！」と鳴きながらしきりに僕を振り返っていた。

「ルシファン、またパン？さっき食べたばかりだろ。」
苦笑しながらも、小さなチーズパンを一つ追加で買ってあげると、ルシファンは嬉しそうに前足で袋を押さえ、「ちちっ」と喜びを表現していた。

市場の人々も三匹の可愛さに気づき、通りすがりに声をかけてくる。
「この子たち、本当に賢そうね。」
「かわいいなぁ！撫でてもいいかい？」
そんな言葉に僕もつい笑顔になる。三匹の存在が人々を和ませるのは、本当に嬉しいことだった。

市場の一角に停めていた魔力式トラックに戻ると、三匹は慣れた様子でそれぞれ決まった座席に飛び乗った。リッキーは助手席、シャズナは後部座席で窓の外を眺め、ルシファンは僕の隣でちょこんと座る。

「よし、出発するぞ。」
僕がエンジンを魔力で起動させると、ふわりと静かにトラックが動き始めた。市場の喧騒から少しずつ離れ、田園風景が広がる道に入ると、三匹もリラックスした様子で思い思いの時間を楽しみ始める。

リッキーは助手席で静かに鼻を鳴らし、シャズナは車内の小さな日差しを浴びて気持ちよさそうに丸くなっている。ルシファンは窓の外をじっと見つめ、目を輝かせながら「ちちっ」と鳴き続けている。

途中、広がる畑や丘の上に咲く野花を横目に見ながら、僕も自然の美しさに癒される。
「こういう何でもない日常が一番だよな……。」
そう思わず呟くと、ルシファンが僕の腕に軽く前足を乗せてきた。その仕草が、まるで僕の考えに賛同しているかのようで、思わず笑ってしまう。

やがて、家の見慣れた屋根が遠くに見え始めた。三匹もそれに気づいたのか、一斉に嬉しそうな表情を浮かべた。

「ただいま。」と玄関の扉を開けると、三匹は飛び出すように家の中に入っていき、それぞれお気に入りの場所に駆け込む。リッキーはリビングのクッションの上、シャズナは窓際の陽だまり、ルシファンは暖炉の前に陣取った。

「今日はたくさん歩いたし、疲れただろう？」
三匹の様子を見ながら、僕は荷物を片付け、夕食の準備に取り掛かる。家の中は、いつも以上に平和で温かな雰囲気に包まれていた。