のほほん異世界暮らし

みなと劉

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市場の喧騒と三匹のニマニマ

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翌朝、目を覚ますと、まだ外は少し薄暗かった。窓の外を見れば、夜の名残が空にわずかに残っている。昨夜はなかなか寝つけなかったせいか、少しだけぼんやりとした頭を軽く振った。

ベッドから起き上がると、すぐに三匹が駆け寄ってくる。

「おはよう、シャズナ、リッキー、ルシファン。」

僕がそう声をかけると、シャズナはすり寄り、リッキーはぴょんと跳ね、ルシファンはくるくると僕の足元を回る。朝から元気いっぱいの三匹に、自然と頬が緩む。

「まずは朝食だな。」

キッチンへ向かい、朝食の支度を始める。いつもの習慣のはずなのに、頭のどこかで昨夜のことがちらついていた。

カイルに撫でられた感触。

そして、あの優しい声がふと脳裏に蘇る。

「……くっそ、なんで思い出すんだよ。」

小さく呟き、気を紛らわせるように卵を割る。フライパンに落とすと、ジュワッと軽やかな音が広がった。

三匹の分も準備をしながら、ふとリビングの方を見やると、彼らがじっとこちらを見ているのに気づく。

「……な、なんだよ。」

するとシャズナが小さく「にゃん」と鳴く。

「なにが『にゃん』だよ。別に、何もないっての。」

勝手に一人で焦る自分が恥ずかしくなり、すぐに視線をフライパンへ戻した。

朝食を済ませた後、今日は久しぶりに市場へ行くことにした。魔力式トラックに乗り込むと、三匹もそれぞれの定位置へ収まる。

「よし、出発するぞ。」

エンジンを入れ、ゆっくりと家を出る。市場へ向かう道のりは静かで、朝の風が心地よかった。

「そういえば……祭りも終わったし、そろそろまた農場の仕事も本格的に再開しないとな。」

独り言のように呟くと、リッキーがぴょこんと耳を動かした。

「そうだな、お前たちも手伝ってくれるか?」

シャズナは「にゃーん」と鳴き、ルシファンも「ちゅ」と小さく鳴いた。どうやら賛成らしい。

市場に到着し、まずはいつものように食材を仕入れることにする。新鮮な野菜や果物を見ていると、ふと背後から聞き慣れた声が聞こえた。

「よう、おはよう。」

振り返ると、そこにはカイルが立っていた。

「カイル……。」

僕が驚いた顔をすると、彼は笑いながら「そんなに驚くなよ」と肩をすくめた。

「いや、ちょっと考えごとしてたから。」

「へえ、考えごとか。何考えてたんだ?」

「えっ?」

まさか、昨夜のこととは言えない。

「……仕事のことだよ。」

適当にごまかすと、カイルはじっと僕の顔を見つめてきた。

「ふーん、まあいいけど。」

その視線に、また少し心臓が早くなるのを感じた。なんなんだ、こいつは……。

「そういやさ、お前、今日の昼、時間あるか?」

「え?」

突然の誘いに、思わず聞き返す。

「飯でもどうかなと思って。市場の近くにいい店があるんだ。」

「……まあ、時間はあるけど。」

「よし、決まりだな。」

カイルは満足げに笑う。

「じゃあ、昼にまたここで。」

そう言って去っていくカイルの背中を見つめながら、僕はなんとも言えない気持ちになっていた。

三匹を抱き上げると、彼らはまたしてもニマニマとした表情を浮かべている。

「……お前たち、ほんとに何か考えてるだろ。」

しかし、彼らは無言で僕を見つめるだけだった。

――この気持ちは、一体なんなんだろう。

そんな疑問を抱えたまま、僕は市場の喧騒の中へと足を踏み出した。

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