のほほん異世界暮らし

農場とカイルと三匹のニマニマ

僕が魔力式トラックを農場の入口に停めると、すぐにカイルの姿が目に入った。作業着姿で腕を組み、じっとこちらを見ている。まるで僕が来るのを待っていたかのような佇まいだった。

「……なんでいるんだ？」

そう思いながらエンジンを切り、三匹を連れて車を降りる。シャズナは軽やかに飛び降り、リッキーはトントンと慎重に降りる。ルシファンは最後にぴょんと跳ねて地面に降り立った。

「おはよう、来るのを待ってたよ。」

カイルが軽く手を上げながら、爽やかに挨拶してきた。

「……おはよう。待ってたって、何か用でも？」

「んー、特にはないけど、君がどんなふうに働いてるのか見てみたくてね。」

その言葉に少し戸惑う。カイルとこうして会うのは偶然ではなく、もはや必然になりつつあるのではないか。だが、そう考えた途端、三匹が僕の周りをくるくると回り始めた。

「……何？」

シャズナがじっと僕を見上げ、「にゃあ」と一鳴きする。その目はどこか期待に満ちているように見えた。リッキーも耳をぴくぴくと動かし、ルシファンはなぜかニマニマと笑っているような表情だ。

「お前ら、何か企んでるんじゃないだろうな……。」

小さく呟くが、三匹は知らん顔をする。

「さてと、そろそろ仕事始めるか。」

気を取り直し、僕は作業小屋へと向かう。カイルも後をついてきた。

「手伝ってもいい？」

「は？」

「せっかくだし、一緒にやるのも悪くないかなって。」

「……お前、本当に何が目的なんだ？」

「だから、君と一緒にいる理由に特別な目的はないって。」

そう言いながらカイルは少し笑う。その笑顔がどこか眩しくて、僕は目を逸らしてしまう。

「勝手にしろ。」

そう言って、僕は収穫作業に取り掛かることにした。

農場の作業は思ったよりも忙しく、カイルと一緒に黙々と働いていた。彼は意外と手際がよく、力仕事も難なくこなしていた。最初は少しぎこちなかったが、気がつけば息の合った動きになっていた。

「意外とやるじゃないか。」

「それはどうも。」

ふと顔を上げると、カイルが少し汗を拭いながら微笑んでいた。その姿に、ほんの一瞬だけどきりとしたものを感じた。

「……。」

そんな僕の様子を見ていたのか、三匹がまたしてもニマニマとした表情をしていた。シャズナは尻尾を揺らしながら「にゃあ」と甘えた声を出し、リッキーは前足をちょこんと揃えて座っている。ルシファンはしっぽを揺らしながら僕を見上げていた。

「だから、お前ら、何なんだ……。」

呆れながらも、どこか落ち着かない気持ちになってしまう。

そんなこんなで作業は進み、昼の休憩時間となった。僕は今朝作った弁当を広げ、カイルと一緒に食べることになった。三匹もそれぞれの好物を用意して、のんびりとくつろいでいる。

「君って料理も上手いんだな。」

「まあ、生活する上で必要だからな。」

「そういうところ、すごくいいと思うよ。」

さらりと褒められ、思わず言葉を失う。カイルは自然体でそういうことを言うから困る。意識しないようにしているのに、心の奥がざわつく。

「……別に普通だろ。」

そっけなく答えると、カイルはくすっと笑った。

そんな僕たちの様子を、三匹はやはりニマニマと見つめていた。

「……お前ら、本当に何か企んでるだろ？」

問いかけても、三匹はただしっぽを揺らすだけだった。