のほほん異世界暮らし

夏の祭りの終わりと来年も来ような

祭りの夜も更け、広場に響いていた賑やかな音楽や子供たちの笑い声も、少しずつ落ち着いてきた。

僕たちは屋台をひと通り楽しんだあと、広場近くの川沿いをゆっくり歩いて帰ることにした。
三匹は浴衣姿のまま、満足そうに歩いている。特にシャズナは胸を張り、誇らしげに毛づくろいまでしていた。

「楽しかったねぇ」
僕がそう言うと、カイルが「たまにはこういう息抜きも必要だな」と珍しく素直な顔をしていた。
普段は商売のことで頭がいっぱいのカイルも、今日はちゃんとリラックスできたみたいでちょっと安心する。

その時、ふわりと夜風が吹いて、川面に映る月が揺れた。
夏の夜独特の、涼しさと湿気が入り混じった風。

「来年も一緒に来ような」
僕がそう言うと、カイルは「当たり前だろ」と笑いながら、僕の頭をぽんぽんと叩いた。
その仕草にシャズナが反応して、すかさず「にゃん！」と鳴く。
（まだ恋人勘違い、ちょっと残ってるのかな…）

「ほらシャズナ、お前も楽しかっただろ？」
カイルがシャズナを抱き上げてくるくる回ると、シャズナは目を輝かせて「にゃー！」と大喜び。
リッキーとルシファンもそれに釣られて、ぴょんぴょん跳ねたり尻尾を振ったりしている。

何気ない日常の延長に、こんなふうに楽しい思い出が積み重なっていく。
家族って、こういうものなのかな。

「なぁ、お前さ」
ふいにカイルが僕に向き直り、少し真剣な顔になる。
「これからも、ずっと一緒にいような」

「……当たり前だろ」
さっきのカイルの言葉をそのまま返して、僕は三匹の背を順番に撫でた。

広場の明かりが少しずつ遠くなっていく。
夏の夜は静かで、でも温かかった。