のほほん異世界暮らし

みなと劉

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数日が過ぎ、空の色がより一層澄んで見えるようになった。朝から照りつける陽ざしも、もうすっかり夏そのものだ。麦畑では風が波のように揺れ、作物の実りも一段と重みを増している。

僕はいつものように早起きして、鶏小屋の見回りを終えたところだった。カイルは井戸のそばで顔を洗っていて、シャズナはすでに軒下の影で毛づくろいを始めている。リッキーはトウモロコシ畑の中を跳ね回っていて、ルシファンは朝露を避けるように物置小屋の影にいた。

「今日も暑くなりそうだな」
僕がそう声をかけると、カイルは手ぬぐいで顔を拭きながらうなずいた。

「うん。水の確保も、そろそろ本格的に考えたほうがいいかもな。今年は雨が少ない」

「魔力式ポンプの点検もしておこうか」

「頼む。あと、川から水路へ流す堰の調整も。今夜ちょっと見に行くつもりだ」

農業は自然との対話だ。特に夏は、水の管理ひとつで収穫の明暗が分かれる。

その日、市場への出荷準備を進めていると、見慣れない馬車が農道をこちらへ向かってきた。緑の屋根と、横に描かれたエンブレム――あれは街の議会所属の移動商隊だった。

「おや? 珍しいな……ここに来るなんて」

カイルが帽子を被りなおして立ち上がる。馬車は畑の端に止まり、中から人影が現れた。
それは、少し前の春祭りで顔を合わせた、議会付きの若い書記官だった。

「お久しぶりです。市場で評判を聞いて、直接お願いに参りました」

「お願い?」

書記官は一通の封書を取り出し、僕に手渡した。上質な羊皮紙に、青いリボンが結ばれている。

「来月、都市圏で開かれる《夏季市》――大規模な交易イベントです。あなた方の作物を、特別出品枠で推薦したいとの話が出まして」

僕とカイルは顔を見合わせる。

「へぇ……それは、すごい話だな」

「ええ。ただし、相応の量と品質を維持していただく必要があります。詳細は文面に記されておりますが――」

カイルが頷きながら言った。

「やるか、主」

僕も自然と笑っていた。

「もちろん。僕たちの夏を、街の人にも味わってもらおう」

その後、農場はさらににぎやかになった。
リッキーとルシファンが動線の整備に走り回り、シャズナは涼しい納屋で帳簿係(?)として見守る。

そして僕らは、来たる《夏季市》へ向けて、また一歩を踏み出した。

――季節は、夏の盛りへと向かっている。

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