のほほん異世界暮らし

みなと劉

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数日後――

秋晴れの空の下、村の広場にはいつもと違う緊張感が漂っていた。王都からの薬師ギルドの使者が、ついに到着する日だった。

僕とカイルは朝から農作業を手早く済ませ、リッキーたちも毛並みを整えて待機している。シャズナはというと、いつもより念入りに毛づくろいをしたあと、納屋の屋根の上でひなたぼっこしながら、目を細めている。

「……なんだか、変に緊張するな」

「分かる。ミュリィさんから“気軽な紹介”って聞いてたのに、あの人、やけにそわそわしてたもんな」

そう。ミュリィから伝えられた言葉は“視察を兼ねた顔合わせ”。けれど、王都の薬師ギルドといえば格式も高く、貴族との繋がりも深いという話だ。

「来た!」

遠くから蹄の音と車輪の軋む音が聞こえた。

やがて、村の入り口に現れたのは、黒い馬に引かれた二頭立ての四輪馬車。漆黒の木材に金の装飾が施され、見るからに高貴な雰囲気を纏っている。

馬車が広場の一角で止まり、従者らしき青年が扉を開いた。

姿を現したのは、背筋を伸ばした女性だった。
長く艶のある黒髪を後ろで一つに束ね、落ち着いた青の薬師ローブを身にまとっている。胸元のギルド徽章は銀色で、通常の薬師ではなく“監修者”以上の階級であることを示していた。

「――初めまして。薬師ギルド監修官、リィナ・フェルドと申します」

その声はよく通り、凛としていた。
ミュリィが前に出て、深く一礼する。

「ようこそお越しくださいました。こちらが、アークミントの栽培に成功した農園の管理者たちです」

僕たちは慌てて礼をし、名乗った。

リィナは静かにうなずき、荷台のアークミントを手にとって、その葉を丁寧に観察し始めた。

「……これは確かに、王都の温室でもここまでのものはなかなか……色艶、油分の量、乾燥後の香りまで安定している」

彼女は感嘆の息をもらし、やがてこちらに視線を戻す。

「貴方たちの農園、非常に興味深いわ。――近いうちに、王都へ来てみるつもりはありませんか?」

僕とカイルは一瞬、耳を疑った。

「王都に、ですか……?」

「ええ。王都ギルドで正式に、薬草栽培協力農園として契約を交わすことも検討できます。もちろん、報酬や栽培支援もある。いかがです?」

リィナの言葉に、リッキーがピョンと跳ねた。ルシファンも毛を膨らませて、落ち着かない様子。シャズナは屋根の上から、じっと僕たちの様子を見守っている。

「……考えさせていただけますか? 僕たち、ここを離れるには少し準備も必要なので」

リィナは笑みを浮かべてうなずいた。

「もちろん。正式な文書は後日改めて。今日はご挨拶まで。……それと、貴方たちが育てたこのアークミント。間違いなく、“王都品質”と呼べる水準です。誇ってください」

言葉にこめられた信頼と評価に、胸の奥が熱くなった。

――農園の未来が、少しずつ広がっていく。

王都。新しい挑戦。そして新たな人々との出会い。

秋風の中で、僕たちは新しい季節の訪れを感じていた。


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