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第6話 夜空の下の約束
しおりを挟む夕暮れが過ぎ、砦は静けさに包まれていた。夜空には無数の星が瞬き、月明かりが砦の壁を淡く照らしている。アルフレッドは寝付けず、一人で砦の見張り台に立っていた。
微かに冷たい風が頬を撫でる中、彼はぼんやりと空を見上げていた。
「やっぱり、こういう景色はいいな……」
そう呟いたその時、背後から小さな足音が聞こえてきた。振り返ると、そこにはシルフィアが立っていた。
「お前もここに?」
「お前こそ、こんな時間に何をしている?」
シルフィアは彼の隣に歩み寄り、同じように夜空を見上げた。その横顔は静かで、いつもの厳しさとは異なる柔らかい雰囲気を帯びている。
「寝付けなくてな。外の空気を吸おうと思っただけだ」
「私も同じだ。戦乱の中では、こうした平和な夜が貴重だと感じる」
二人はしばらく黙ったまま、星空を眺めていた。砦の周囲は静まり返り、遠くで草木が風に揺れる音だけが聞こえる。
「なぁ、シルフィア」
ふとアルフレッドが口を開いた。その声はどこか真剣で、シルフィアは横目で彼を見た。
「なんだ?」
「お前は、この戦いが終わったら何をするつもりだ?」
その問いに、シルフィアは少し驚いた様子を見せたが、すぐに真剣な表情に戻った。
「考えたことはあるが、具体的な答えはまだ見つかっていない。ただ、戦乙女としての役目を果たすことが最優先だ」
「そうか……でも、いつかはお前も自分のために生きる時が来るんじゃないか?」
アルフレッドの言葉に、シルフィアは目を細めた。その言葉にはどこか優しさが込められているように感じた。
「お前はどうだ? 戦いが終わったら何をする?」
「俺か? ……平和な村で暮らしたいな。畑を耕して、のんびり過ごせる日々が夢だ」
アルフレッドの答えに、シルフィアは思わず微笑んだ。
「意外だな。もっと野心的な答えが返ってくると思ったが」
「俺にそんな大それたことを望むなよ。俺はただ、静かな生活がしたいだけだ」
そう言いながら笑うアルフレッドを見て、シルフィアはふと自分の胸の中に芽生えた感情に気づいた。
「……もしその時が来たら、私もその村を訪ねてもいいか?」
その問いに、アルフレッドは少し驚いた表情を見せたが、すぐに笑顔を浮かべた。
「もちろんだ。いつでも歓迎するよ。村の名物を振る舞ってやる」
「名物?」
「俺が育てた作物で作った料理さ。きっと気に入るはずだ」
その言葉に、シルフィアは少しだけ頬を赤らめながら小さく頷いた。
「なら、期待しておこう」
月明かりの下で交わした小さな約束。二人の距離はまた一歩近づき、戦乱の中でも確かに芽生えつつあるものがそこにはあった。
夜空の下、星の光が二人を優しく包み込む。心の中に温かな灯がともるこの瞬間が、後にどれほど大切な記憶となるかは、まだ誰も知らない。
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