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第5話 砦の食堂でふたりきり
しおりを挟む訓練を終えた夕暮れ時、砦の食堂には戦乙女たちが集まり賑やかな笑い声が響いていた。アルフレッドはその喧騒から少し離れた端の席で、スープの湯気に顔をほころばせながら食事を取っていた。
「こういう平和な時間も悪くないな……」
独り言を呟くと、目の前にトレイを持ったシルフィアが立っていた。
「ここ、座ってもいいか?」
不意を突かれたアルフレッドは少し驚きながらも、すぐに頷く。
「もちろん、どうぞご自由に」
シルフィアは静かに席に着き、手際よくスープを飲み始めた。いつも通りの真面目な表情だが、どこか落ち着かない様子が見て取れる。
「珍しいな、お前が一緒に飯を食うなんて。戦乙女たちと座らなくていいのか?」
アルフレッドがそう尋ねると、シルフィアはスプーンを置き、少し頬を染めながら答えた。
「たまには静かに食べたいと思っただけだ。それに……」
その先を言い淀む彼女に、アルフレッドはからかうような笑みを浮かべる。
「それに、俺と一緒がいいってか?」
「なっ、そ、そんなわけあるか!」
突然声を荒げたシルフィアに、食堂の視線が集まる。戦乙女たちが「あの厳格なシルフィアがこんなに取り乱すなんて」と囁き合う中、シルフィアは顔を真っ赤にして俯いた。
「お前のせいで恥をかいたぞ……」
「悪い悪い、ついからかっちまったよ。でも、真っ赤になってるお前、ちょっと可愛いぞ」
アルフレッドの軽口に、シルフィアはさらに顔を赤くしながら小声で反論する。
「……そんなことを言われても、嬉しくなんかない」
「本当か? 俺には逆に聞こえたけどな」
じっとこちらを見つめるアルフレッドの顔を直視できず、シルフィアは無理やり話題を変えるようにスープをすする。そして、ようやく落ち着きを取り戻したのか、ぽつりと呟いた。
「その……お前が砦に来てから、少し賑やかになったのは事実だ。それは感謝している」
その意外な言葉に、アルフレッドは少し驚きながらも笑みを浮かべた。
「そりゃどうも。それなら俺もここに来た甲斐があったな」
不器用ながらも、互いに感謝の気持ちを伝え合う二人。そのやり取りに、周囲の戦乙女たちは興味津々で耳を傾けていた。
「……お前たち、そんなにジロジロ見るな!」
突然シルフィアが立ち上がり、戦乙女たちを睨みつける。その勢いに周囲は一斉に沈黙し、視線を逸らす。
「ふぅ……まったく、これだから困る」
再び席に着いたシルフィアを見て、アルフレッドは思わず吹き出した。
「お前も案外苦労してるんだな。まぁ、そんなとこも悪くないけど」
そう言いながら、彼は満足そうにスープを飲み干した。その横顔を見つめ、シルフィアはこっそりと笑みを浮かべるのだった。
二人きりの時間は短いものの、確実に距離を縮めていく。戦乙女と剣士の物語は、少しずつ新たな展開を迎え始めていた。
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