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立ち入り禁止地域
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「✕✕!こっち!早く!」
その声に導かれるように俺は腕を伸ばすが、声がする方向には届かない。届くことも無い。
だけど、俺はその声がする方向に向かって行かなければならないと無意識に思い、一生懸命強く腕を伸ばし漸く声の人の腕を掴んだ。
直後
ゴッ!
と重たい音とともに俺は“夢から醒めた”
「痛ってぇぇぁぁぁぁ!」
頭の上に重たい本が落ちた衝撃で夢から醒めたのはいいが、落ちてきた場所が悪い。
本の角だ。石のように硬いあの角が頭に落ちてきたんだ。それが頭にぶつかれば誰だって夢から醒める。たとえその夢が見たくもない悪夢でも、たとえその夢が忘れたくない幸せな夢でも、すぐに醒め直ぐに忘れてしまう。だがそれよりも痛い。
「痛ってぇ……なんで落ちてきたんだ……」
頭上には小さな棚があり、寝ながら読めるようにと本を入れていたんだが、落ちてくる場所に置いている訳でもないのに落ちてきたみたいだ。
全くもって不思議なものだ。
暫く痛みは引くことはなさそうだが、ボロい時計を見れば朝日が昇りきった十二時丁度。学校が休みの日とはいえ一日の半分を夢で消化してしまった。
「って十二時!?」
時計を二度も確認するが十二時なのは変わることは無い。いやたった今十二時一分になったところだが、これはやばい。
俺は直ぐに落ちてきた本を棚へと戻し、急いでその場を後にする。向かう先は最寄りの家電量販店。何を買う訳でもないが、家にテレビというハイテクな機械が無く、学校が休みの時に通っている。なんせテレビは高価で金持ちしか買うことができない品者だから。
その為学校にもテレビは無いし、一般の家庭ですらテレビは無い……はずだ。
それで何で通っているのか、それはニュースを見るためだ。生憎家にはラジオも無ければ携帯電話も無く、新聞はとっていない。俺の生活の中で、世界の事を知ることができるのは家電量販店のテレビを見る他ないというわけだ。
『ーー先日、〇〇町で異端者が発見され、〇〇町が立ち入り禁止地域となりました。それに対応し隣町である△△町で避難所が設けられ、そこには〇〇町の住民がーー』
「また立ち入り禁止地域増えたのか……」
たどり着いた頃にはいつも見ているニュースが既に始まっていたが、丁度知りたい情報が報道される時間だったためギリギリ間に合ったと少しほっとした。
「今月で立ち入り禁止地域は三箇所……このペースだとここもいずれは……」
テレビの向こうにいるすらっとしたアナウンサーが報道した“立ち入り禁止地域”は近年様々な地域に設けられるようになった。
理由は俺ら人間と同じはずなのに、病気のせいで人間とは思えない容姿を持ったがために、人間ではないと虐げられ、疎まれ、嫌われている存在異端者が町を壊し、その町が崩壊寸前になるため、危険な場所と判断されるから。
ならば国を守る人が抑えればいいんじゃないかと思うが、俺ら人間は生命あるものを殺せない。殺せば死刑になるほどの大罪になってしまうと法で決まっているからだ。
「おい、ガキ。そこどけ!商売の邪魔だ!」
ニュースを眺めていると家電量販店のオヤジに除け者にされた。
俺は異端者でもないのに毎回除け者にされる。それならもっとテレビを安くしてくれぼったくりジジイ……という言葉はさすがに飲み込んで俺はその場をあとにした。
「でもまぁ、見たい報道だけ見させてくれるのはありがたいか……」
テレビを見終わったあとは特にすることは無い。強いてあるとするなら、散歩をしていざと言う時の逃げ道ルートを探すくらいだ。俺にはそれくらいしかできない。故に今も町をぶらりぶらりと歩く。
とその刹那。
「そこの人間」
言葉が、それも声だけで可憐で美しい女性と想像出来てしまう程に、体の芯まで届どくような透き通った声の言葉が俺の耳を突き抜けた。
その声に導かれるように俺は腕を伸ばすが、声がする方向には届かない。届くことも無い。
だけど、俺はその声がする方向に向かって行かなければならないと無意識に思い、一生懸命強く腕を伸ばし漸く声の人の腕を掴んだ。
直後
ゴッ!
と重たい音とともに俺は“夢から醒めた”
「痛ってぇぇぁぁぁぁ!」
頭の上に重たい本が落ちた衝撃で夢から醒めたのはいいが、落ちてきた場所が悪い。
本の角だ。石のように硬いあの角が頭に落ちてきたんだ。それが頭にぶつかれば誰だって夢から醒める。たとえその夢が見たくもない悪夢でも、たとえその夢が忘れたくない幸せな夢でも、すぐに醒め直ぐに忘れてしまう。だがそれよりも痛い。
「痛ってぇ……なんで落ちてきたんだ……」
頭上には小さな棚があり、寝ながら読めるようにと本を入れていたんだが、落ちてくる場所に置いている訳でもないのに落ちてきたみたいだ。
全くもって不思議なものだ。
暫く痛みは引くことはなさそうだが、ボロい時計を見れば朝日が昇りきった十二時丁度。学校が休みの日とはいえ一日の半分を夢で消化してしまった。
「って十二時!?」
時計を二度も確認するが十二時なのは変わることは無い。いやたった今十二時一分になったところだが、これはやばい。
俺は直ぐに落ちてきた本を棚へと戻し、急いでその場を後にする。向かう先は最寄りの家電量販店。何を買う訳でもないが、家にテレビというハイテクな機械が無く、学校が休みの時に通っている。なんせテレビは高価で金持ちしか買うことができない品者だから。
その為学校にもテレビは無いし、一般の家庭ですらテレビは無い……はずだ。
それで何で通っているのか、それはニュースを見るためだ。生憎家にはラジオも無ければ携帯電話も無く、新聞はとっていない。俺の生活の中で、世界の事を知ることができるのは家電量販店のテレビを見る他ないというわけだ。
『ーー先日、〇〇町で異端者が発見され、〇〇町が立ち入り禁止地域となりました。それに対応し隣町である△△町で避難所が設けられ、そこには〇〇町の住民がーー』
「また立ち入り禁止地域増えたのか……」
たどり着いた頃にはいつも見ているニュースが既に始まっていたが、丁度知りたい情報が報道される時間だったためギリギリ間に合ったと少しほっとした。
「今月で立ち入り禁止地域は三箇所……このペースだとここもいずれは……」
テレビの向こうにいるすらっとしたアナウンサーが報道した“立ち入り禁止地域”は近年様々な地域に設けられるようになった。
理由は俺ら人間と同じはずなのに、病気のせいで人間とは思えない容姿を持ったがために、人間ではないと虐げられ、疎まれ、嫌われている存在異端者が町を壊し、その町が崩壊寸前になるため、危険な場所と判断されるから。
ならば国を守る人が抑えればいいんじゃないかと思うが、俺ら人間は生命あるものを殺せない。殺せば死刑になるほどの大罪になってしまうと法で決まっているからだ。
「おい、ガキ。そこどけ!商売の邪魔だ!」
ニュースを眺めていると家電量販店のオヤジに除け者にされた。
俺は異端者でもないのに毎回除け者にされる。それならもっとテレビを安くしてくれぼったくりジジイ……という言葉はさすがに飲み込んで俺はその場をあとにした。
「でもまぁ、見たい報道だけ見させてくれるのはありがたいか……」
テレビを見終わったあとは特にすることは無い。強いてあるとするなら、散歩をしていざと言う時の逃げ道ルートを探すくらいだ。俺にはそれくらいしかできない。故に今も町をぶらりぶらりと歩く。
とその刹那。
「そこの人間」
言葉が、それも声だけで可憐で美しい女性と想像出来てしまう程に、体の芯まで届どくような透き通った声の言葉が俺の耳を突き抜けた。
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