常夏の恋

夜色シアン

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Re:Memories of summer

常夏の恋-Re:Memories of Summer-⑥

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『じゃあ今から向かいますね!』

 その言葉を残し電話が途絶えてまもなく十分が経過する。流石に強い雨が降っているため一向に来る気配はないが、この荒れ狂った天気の中で遊びに来るなど変わっている。しかし清宮が変わっているのは元々だ。

「ったく……仕方ねぇからタオルとか用意しとっか」

 この大雨の中では傘は恐らく無意味だろうと判断した透也は短いため息を吐くと、タンスにしまっているタオルを全て取り出し、びしょ濡れ対策をすませた。直後、タイミングを見計らったかの如く家のチャイムが鳴る。

 すぐさまタオルを手に玄関ドアを開けるとそこには清宮……ではなく傘を片手に持ったびしょ濡れかつ、所々泥がついた和香羽がいた。

「あっはは……来ちゃった……」

「いや、来ちゃった……じゃねぇよ!?こんな天気なのになんで外歩いてんだ……てか傘あんのにどうしてそうなった」

 和香羽のお気に入りの白いワンピースが雨により透けてしまい、更にピタッと彼女の繊細な素肌に張り付き中々に際どい状態になっている。しかしそれどころではない状況の為、彼は全く気にせず、手に持ったタオルをふわりと彼女の頭に被せガシガシと頭を拭いていた。

「あー、ありがと……っとそうそう最初は普通に傘差してたんだけど、車の水はねに当たっちゃってね……」

「全く……とりあえず風呂焚くから入れ」

「ふぇ!?な、なんで!?」

「馬鹿か、そのままだと風邪ひくだろ」

「わ、私は大丈夫だから!?」

「いいから入れ!」

 そのままだと風邪をひくからと、彼女の頭を拭くのを止めるとすぐに風呂にお湯をため、風呂に入るように和香羽に伝える。

 しかし、顔を真っ赤にしつつ彼女は遠慮する。が、彼も中々頑固で、びしょ濡れの和香羽を放っておけないのだろう。

「わ、わかったよ……せっかく焚いてくれたんだしね」

「あぁ、そうしろ。あとそれ洗濯機中入れて回しておけ」

「……え?それって……き、きき、着るもの無くなるよ!?」

「大丈夫だ。俺の適当に貸してやるから。それにお気に入りなんだろ?そのワンピース」

「え!?……まぁそうだけど……」

「ならやっぱり洗濯してけ。泥がシミになる。ほら」

 びしょ濡れの白いワンピースを風呂上がりに着ては意味がない上、泥が付いているからそのまま洗っていけと、彼なりの気遣いをする。だが彼女はそのワンピース以外着るものがない。ならばと、タンスの中を漁り適当にワイシャツとタオルを渡した。

「うぅ……わかったよ……でも覗かないでよ!!」

「誰が覗くか」

 和香羽はとうとう諦め、風呂へと入る。一方で彼は彼女の頭を拭いて濡れてしまったタオルを洗濯カゴに乱暴に入れた後、思いもよらぬ出来事が起こってしまった。

 ピンポーン

 またもチャイムが鳴り響いたのだ。まさかと思い、覗き窓を見るがやはり清宮だった。

「しまった忘れてた……」

 どうしたものかと考えるが、外は大雨、傘をさしているとはいえ、少し強い風が吹けば倒れてしまうのではないかと思うほど、彼女は華奢な体つきだ。流石にそのままにしては悪いと家に上がらせるが、直後清宮から言葉が飛んできた。

「失礼しま……あれ?誰か来てるんですか?」

「あ、あぁ……まぁな」

 靴置き場を見てそう言ってきたのだ。無論、この家に住んでるのは透也のみ。それを知っている彼女は靴が“二足”あることに不思議と思ったのだ。

 特に隠す必要もないが、風呂に入っている以上よからぬ誤解につながりかねず、透也は人が来ていること“だけ”を伝えた。

「珍しいですね、こんな天気に先輩の友人が来るなんて」

「それをいうならお前もだろうが……」

 と、そんな会話が聞こえたからか和香羽の声が風呂場から響いてきた。

「友達でも来たのー?珍しいねこんな天気にー」

「ふぇ!?ふ、ふふ、風呂に入ってるんですか!?それも今の声からして女性!?」

「……はぁ」

 和香羽からはデジャヴ感がする言葉が発せられ、清宮はその声で驚きを隠せず、言葉が詰まっている。

 そんな彼女にさらに追い打ちをかけるように風呂場のドアを開けてぴょこりと和香羽は頭を出してきた。

 もはや溜息しか出ない状況に彼は困りつつある。

「だ、だだ誰ですか!あなたは!先輩のなんなんですか!?」

「貴女が先輩って言ってる人の幼馴染だけど……?あ、ちょっと待っててね」

 そう言ってパタンと扉を閉めてからあなたが渡したワイシャツを着てまた顔をだす。

「透也、ズボンのこと……忘れてない?」

「あ、すまん。ほれ」

「ありがと」

「せ、先輩を名前呼び……!?そしてめちゃくちゃ親しい!?」

「はぁ、清宮聞いてたか?俺とあいつは幼馴染だ。当然親しいし名前で呼ぶ仲だ」

 上だけを渡して下を渡すのを忘れていたようで、すぐ短パンを取り出して渡すと、すぐに着替えて和香羽は脱衣所から出てくる。

「って!な、なな、ななんで先輩のワイシャツと短パンを着てるんですかー!!」
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