常夏の恋

夜色シアン

文字の大きさ
8 / 15
Re:Memories of summer

常夏の恋-Re:Memories of Summer-⑦

しおりを挟む
「って!な、なな、ななんで先輩のワイシャツと短パンを着てるんですかー!!」

「まぁその色々あってだな」

「それで……あなたは透也のお友達?」

「私は先輩の同級生です!クラスメイトですー!って話を逸らされましたぁ!?」

「じ、じゃあ、なんで先輩って……」

 ドヤ顔で生徒手帳を見せるが、同級生ならばなぜ先輩と呼ぶのか。それは勉強を教えてからというもの、透也の事を先輩と勝手に言ってきているだけだ。別にそれ以上でもそれ以下でも何でもない。

「そっちは本当に幼馴染なのか証明できますか!?」

「……はぁ、めんどくせぇなぁ……てか写真とか実家にあるんだが」

「それなら心配ご無用だよ。透也の好きなものとか嫌いな物全部言えばいいんだからね」

「あぁ、なるほど……ってお前ら他人の家で張り合うな!」

 彼の願いは虚しく終わり、和香羽は知っている限り透也の事を言う。それもなんでそこまで知ってるんだと不思議に思う事までも知っており、話の話題になっている彼は顔を真っ赤に染め上げていた。

「も、もういいだろ……さすがに恥ずかしい」

「せ、先輩が顔を真っ赤に……本当に幼馴染……というか先輩のこと知りすぎて少し気持ち悪いです……」

「失礼だなぁ……ってもうこんな時間!?買物まだだし、私一回帰るね!あ、私の家の電話番号忘れてないよね?」

「あ、あぁ何となく覚えてる」

「なら服洗濯し終わったら連絡してね!それじゃ!」

「また水かけられんなよー」

 ふと和香羽は時計を見ると、時計の短針は十一に、長針がピッタリと十二を指していた。つまりは丁度十一時になっていたのだが、彼女が焦ったのは、もう時期昼時になるから。

 元々彼の家に寄る予定はなく、買い物を済ませ、家で昼食を作る予定だった。故に髪を乾かずに傘を片手にその場を後にした。

 彼女がいなくなった途端、ボソボソと透也のワイシャツ、短パンを彼女が履いていることに対し、愚痴やら文句やらが清宮から発せられていた。

 直後、空腹の合図が清宮から聞こえる。

「も、もうそろそろお昼ですね!勉強の前にご飯食べましょう!腹が減っては戦はできぬ、なんて言葉もありますし、てことでいつものお願いします!」

「はぁ、ここはお前だけの食堂じゃねぇっての少しは自重しろよな……で、いつものって言うとあれだな」

「えへへ。先輩が作るあれはとても美味しくてたまらないのです……!」

 しかし冷蔵庫の中にはこの間買った一人分の食料しかない。否、四人分の食料もあるのだがそれは一応非常用としてのインスタント麺。だが清宮が来た時は決まってこのインスタント麺を作る。

 さらに清宮の要望もあり、麺の上には落し玉子を入れる。それが彼女の言う“いつもの”だ。

 だが今は常夏の季節でましてや雨、湿度が高く、外と比べ部屋の中はかなり暑い。ならばと“いつもの”に一手間加え茹で卵乗りの冷麺を自身の分も合わせて作る。

 それから数分後、清宮の前にインスタント冷麺が乗った皿が置かれた。

「待ってました!っていつものじゃないですか!!」

「当たり前だ。こんな暑苦しい時に熱いのなんて食ってみろ。余計暑くなって倒れるぞ」

「だから冷麺で玉子は茹で卵に?気遣いありがたいですが結局いつものじゃないですよね!!」

「そうだって言ってんだろ。嫌なら食うな」

「食べますー!」

 文句を言いつつもパチンと割り箸を綺麗に割り、横髪が入らないようにと左手で髪を抑えながら麺を小さな口の中へと運ぶ。

「うー悔しいけどいつものより美味しい!冷たくて今日みたいに暑い日にピッタリですね!」

「さっきの文句はどこいったんだか……ま、口に合ってなによりだ……あ、意外と美味しいな」

 一口食べれば先ほどの文句はどこへ行ったのか美味しいとスッと言い、食べ続ける。

 彼もまた手製インスタント冷麺を食べ始めるが、予想していたよりも美味しいことに気付かされる。

「あ、おかわりはないからな」

「え!?」

 彼女は冷麺の美味しさに惹かれ、二食目を食べる気満々だったようだ。

 ーーそれから数分後それぞれが食べ終わりようやく勉強会へと移った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

あなたが決めたことよ

アーエル
恋愛
その日は私の誕生日パーティーの三日前のことでした。 前触れもなく「婚約の話は無かったことにしよう」と言われたのです。 ‪✰他社でも公開

Short stories

美希みなみ
恋愛
「咲き誇る花のように恋したい」幼馴染の光輝の事がずっと好きな麻衣だったが、光輝は麻衣の妹の結衣と付き合っている。その事実に、麻衣はいつも笑顔で自分の思いを封じ込めてきたけど……? 切なくて、泣ける短編です。

嘘をつく唇に優しいキスを

松本ユミ
恋愛
いつだって私は本音を隠して嘘をつくーーー。 桜井麻里奈は優しい同期の新庄湊に恋をした。 だけど、湊には学生時代から付き合っている彼女がいることを知りショックを受ける。 麻里奈はこの恋心が叶わないなら自分の気持ちに嘘をつくからせめて同期として隣で笑い合うことだけは許してほしいと密かに思っていた。 そんなある日、湊が『結婚する』という話を聞いてしまい……。

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます

おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」 そう書き残してエアリーはいなくなった…… 緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。 そう思っていたのに。 エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて…… ※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。

【完結】大好きなあなたのために…?

月樹《つき》
恋愛
私には子供の頃から仲の良い大好きな幼馴染がいた。 2人でよく読んだ冒険のお話の中では、最後に魔物を倒し立派な騎士となった男の子と、それを支えてきた聖女の女の子が結ばれる。 『俺もこの物語の主人公みたいに立派な騎士になるから』と言って、真っ赤な顔で花畑で摘んだ花束をくれた彼。あの時から彼を信じて支えてきたのに… いつの間にか彼の隣には、お姫様のように可憐な女の子がいた…。

壊れていく音を聞きながら

夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。 妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪 何気ない日常のひと幕が、 思いもよらない“ひび”を生んでいく。 母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。 誰も気づきがないまま、 家族のかたちが静かに崩れていく――。 壊れていく音を聞きながら、 それでも誰かを思うことはできるのか。

25年の後悔の結末

専業プウタ
恋愛
結婚直前の婚約破棄。親の介護に友人と恋人の裏切り。過労で倒れていた私が見た夢は25年前に諦めた好きだった人の記憶。もう一度出会えたら私はきっと迷わない。

処理中です...