いきなり異世界転生!?~目覚めて始まる異世界生活~

夜色シアン

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一章・追放編

瓜二つな他人

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 三話

「もしかして……ここの事忘れちゃったんですか!?酷いでーー」

「うわっさっきの幽霊!!……ってあれ?」

 外の景色を見ながらどうなってるんだと思っていると、後ろから声が聞こえ、そのまま振り返ります。そこに居たのは身体が透けた女性なのですが、よく見ずとも彼女の身体は透けていませんでした。

 何かを勘違いしているのか、彼がこの場所のことを覚えていないということに、少々怒り気味。ですがやはり、可愛く頬を膨らませるだけなので怒っているという雰囲気は全く感じられません。

「さっきから幽霊幽霊って……私は幽霊じゃありませんよ!まあ、渡りライズで確かに透けましたけど!?そもそも遠い場所にいる先輩も悪いですよ!?」

 何を言ってっるんですか!と言わないばかりに言って来ましたが、彼はそんなこと知るわけがありません。

 なにせ、初対面で身体が透けている、という第一人称を得てしまい、幽霊と頭の中で決めつけてしまっているから。そして彼女の名前すら知らないのですから。

「と言うかあんなことやこんなことしたのに……ここの事や私のことを忘れるなんて」

「いや、ちょっと待てよ!?俺はお前みたいな人なのか幽霊なのかわからん後輩なんていないし、そもそもお前には何もしてないし、俺は先輩じゃなくて陸斗りくとって名前が……」

 彼のーー陸斗の言葉は全くもって聞こえていない様で、彼女は何を想像したのか急に赤面しながら自身の体を抱きしめ、うねうねとくねらせていました。

 普通なら引くほどですが、彼は不思議と引くような素振りはしませんでした。ですが何を言っても話を聞かず、急にこの状態になったため呆然としていました。

 ーー数分ほどたった今でも言葉が届かず、ここから立ち去ろうにもここがどこなのか、わからないため立ち去ることもできず、悩んでいたその刹那、またも部屋が光り出しました。ただ今度は白ではなく青色で、部屋の中心だけが光ります。

 光っていたのはファンタジーなどでよく見かけるような丸い魔法陣、それが床一帯に浮かび上がり、次第に上昇して、そこから人が現れました。

 現れたのは陸斗のように茶髪でボサッとした癖っ毛……いや寝癖が多い髪型、背丈も不思議と同じくらいで目つきは鋭いですが、決して怖いという雰囲気はありません。

 ただ服装だけは彼と違って何処かの制服の様なきちっとした服でした。

「今のは……帰還ーー」

「ただいま……って誰?やけに僕に似てる感じがするけど……」

「え、あ、あれ!?先輩が二人!?」

 その姿を見た途端、彼女は陸斗と部屋の中心に立つ彼を何度も見ていました。それに彼女が言っている先輩は、部屋の中心にいる彼のことだった様です。

 そもそもの話、幽霊もどきの先輩ではない陸斗は、この現状に頭が混乱し始め、その結果怒った訳では無いですが、強く言葉を発していまうことに。

「いや、そもそもお前ら誰だよ!?」

 たったその一言でその場はしんと静かになります。怒鳴った訳では無いため自然と静かになったことはすぐにわかりますが、静かになったのは彼女と彼が、陸斗が発した声が怒っているように感じとったためでした。

 ゆっくりと陸斗に顔を向けるやいなや彼女達は、直ぐに謝ってきました、それもわざわざ距離をとって華麗なスライディング土下座をして謝って来ました。

 その際、彼女は気づいていないと思いますが、勢いをつけすぎてスカートがめくれてしまい、可愛らしいクマさんのモチーフの下着が顕になってしまっていました。

 数分後なんでこうなったのか、立ち上がると共に一から説明され、それを自分なりに解釈したものを陸斗は確認するかの様に話し出します。

「……えーと?そこの幽れ……じゃなくてイル・ディメルは、リクトもとい、リク・ディベントが修行に出ていたことを忘れてて、何気に俺と外見やら名前やらが似てるから、こうなったと……ってこれディメルの物忘れが原因じゃ!?」

「あう!?ほ、本当に申し訳ないです!」

「俺も本当に謝ることしかできないんだが……あ、実はイルが使った“渡り召喚”は人は戻せーー」

「ーーは?」

 本当の事を言われ結構な精神ダメージを受けた、幽霊呼ばわりされていたディメルは、きゅうっという音がしそうな勢いで、小さくなってるような気がします。

 まあ、忘れることは誰でもあるからと、慰めるように言葉をかけようとしたその刹那、魔法陣から出てきたディベントが発した言葉で、ぷちりと何かが切れたような、そんな感じに見舞われ、「そういうのは早く言ってくれよ!?」と強く言葉を放ってしまいます。

 それもそのはず。彼からすると勘違いで異世界に転生……いや召喚され、元の場所には戻ることができないと言うのですから。

「あうう、申し訳ないです……は、話には続きがありまして、原因は……って、あの、えっと……苗字は……」

 さすがに強く言葉を吐いたせいか若干涙目になっています。どうやら彼女はガラスのハートの持ち主のようですが、それでも説明を続けようと涙声で話を進め、急に苗字を聞かれました。名前で呼んではディメベントと間違えると思ってのことでしょう。

 彼は流石に泣かれると困ると思い、何かないかとポケットを探ります。

 丁度中にはゴツゴツとした何かが入っていたようで、直ぐにそれが買い物をした時のお釣りだとわかります。

「さっきはなんかごめんな。」

 その小銭を、銀で穴がない小銭ーーすなわち百円玉をディメルに渡しました。もちろん彼はこの世界の金銭は知りません。

「あと、さっきも言ったけど俺は陸斗、てんじょう陸斗だ。よろしく」

「あ……ありがとうございますぅ……?」

 彼女は何に使うのかわからない百円玉を受け取り何に使うのか若干考えつつ、話を続けます。

 それに心なしか百円玉を受け取った事で彼女の陸斗に対する、恐怖感を少しだけ和らいでいるような感じがします。

「えっと、私の魔法では元の世界に戻せれないだけであってですね、天城さんが元の世界に戻る方法が無いわけでは無いと思いますぅ……」

「ああ、俺もそれを言おうとしたんだ」

「そ、そうだったのか……」

 話の途中で陸斗が強く言葉を発したため、ディベントの話を聞けなかったわけですが、先程、彼が言おうとしていたのは、まさにディメルが今言った言葉だったようです。

「えっと、とりあえず私は戻す方法を探りますぅ……それまで暇になってしまうと思うので、相棒となる人が見つかるまで先輩を貸しますぅ……なので先輩は天城さんのパートナーを探してください……で、では!」

 そう言い放った彼女は、踵を返すのと同時に自身の髪をふわりと舞い上がらせ、その場から逃げるようにその場を去って行きました。

 そしてぽつんと取り残された彼らは、気まずく何も話そうとはしませんでしたが、ディベントは陸斗の困ったような顔をみて口を開きます。

「ま、まあ任されたから、とりあえず探しに出ないと……道案内するよ」

「あ、ああ」

 と返事をしつつ、陸斗は少しの……いえ、沢山の疑問を抱きながらも、道を案内してくれるというディベントと一緒に部屋を後にしました。

 ーーその後、ディメルは陸斗とディベントがいた広い部屋に戻り。

「……まさか“死人”にあの力を与えないといけないなんて……何とか適当に言って信じてもらいましたけど……うぅ怖かったぁ。でもとりあえずこれで四柱 シエル戻りましたし、上手くいってくれるといいのですけど……」

 独りでポツリとそう呟いていました。
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