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二章・魔界ファーステリア編

止まぬ暴走

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「ーー遺言はあるか?」

 武器を忘れ、ジャキっと二つの刃〈終焉の双刃クロノス・エンド〉を向けられ、いよいよリィールに殺られると思いつつ彼はゴクリと生唾を飲み込みます。

 そんな時でした。

「〈迅雷ライジング〉!」

 その叫び声と共に彼らと彼女の目の前に大きな電流が走ったと思うと目の前には自身の身長程に大きい大剣を持った魔人スクルドと龍人ドラグニルことドランが立っていました。

「陸斗殿、鈴殿大丈夫ですか?」

「あ、あぁ……てか一体どこから……」

「リィール様の魔力を感じ取ったので直ぐに戻ってきて、道中倒れていた傷だらけの方を保護しここに来ただけでございます」

「それに今のリィールはちぃと危険だからな。お前らだとすぐに死んじまう。つーわけでリィール。俺らが相手だ」

 ドランが言った傷だらけの方というのは恐らく魔力暴走し、先程一瞬にして瀕死に追いやられたあの緑光線の人だろうとわかります。

 しかしその人を保護するまでの余裕があり、まるでこのことに慣れているかの如く……いや事実彼らはリィールの“暴走”を幾度となく止めたり、魔力暴走者を保護することに慣れてしまっています。だからこそ、冷静に行動でき、殺気に当てられても平気なのです。

「とりあえず詳しいことは後ほどお話致しますのでここでお待ちくださいませ。ものの数分で終わりますゆえ」

「……ほう、数分で我を止めるとな。いいだろうまとめて我が血肉の糧となれ!」

 その言葉が戦闘開始の合図となりますが、陸斗達が近くにいるためドランはすかさず転移魔法で数十メートル程先にリィールとスクルドを転移させてから、陸斗達に律儀に挨拶を交わし戦闘に参加しました。

 流石に何が起こっているのか思考が追いつかない彼らは唖然と口を開け驚くことしかできませんでした。

 ーーーーーー


 ーーーー


 ーー

「そんなものか魔人!」

 転移後先にしかけたのは初代魔王リィールでした。

 両手に持った剣をなんの躊躇もなしにスクルドに一撃、二撃、三撃ととても重たい攻撃を華麗な剣さばきで、繰り出していたのです。

 その重さは一撃あたり一トンクラスの重撃。それなのにも関わらず彼は大剣の腹の部分で全ての攻撃を受け止めます。しかし相手は一トンの重撃。防げは防ぐ程身体への負担は大きく、地面が重さによりグンッグンッと攻撃の度に地震ににた揺れと共にクレーターを作り大きくさせています。

「どうした魔人!早う反撃せんと沈むぞ!」

 四撃
 五撃
 六撃

 彼女の攻撃は止まることを知らず金属と金属がぶつかり合う音が淡々と鳴り響く中、重撃を防ぎ続けるスクルドは額に汗を滲ませつつ余裕な表情を浮かべていました。

 まさにリィールの攻撃全てを地面へと受け流しているかのように。

 否、ようにでは無く本当に受け流しています。どれだけ重たい攻撃も大剣が受け止め、衝撃を避雷針かのように地面へと受け流しているのです。

 だからこそ余裕な表情を浮かべ、ある“タイミング”を測っているのです。

「余裕の顔を浮かべるか……ならばこれはどうだ!はあっ!」

 七撃
 八撃
 九撃
 十撃……二十撃

 更に重たく早い攻撃がスクルドの大剣を襲いますが彼の大剣は非常に固く一振倍の重さとなった重撃おも防ぎ続けます。また、その衝撃も少しはスクルドに蓄積するものの殆どが地面へと流されてるためやはり余裕な表情を浮かべています。

「くっ!キリがないな……」

 刹那の二十連重撃を全て防ぎ切ったもはや盾と言える大剣は今の攻撃で熱を持ったのか大剣の腹部分が赤く染っていました。

「もう終わりかリィール」

「……あぁ、そうだな……これで終わりだ!」

 今度は正面からではなく背後に回り攻撃を仕掛けようとしています。流石にスクルドもそれには対応できず、リィールが振りかぶる剣が彼に当たりそうになったその刹那。バシッと鞭のような音と共にリィールの体に巻き付くように簡単には外れそうもない鎖が完全に身動きを封じたのです。

「やはり無詠唱は苦手でございます……」

「待ちくたびれたぜドラン」

「すいません。ですがあとはーー」

「フッ……ハッハッハ!これで本当に我を止めることが出来たというのか!実に面白いぞ龍人!」

 身動きを封じ、ようやく決着が着いたと思いきや、鎖の拘束をいとも簡単に破壊され、やはりリィールは危険で、そう簡単には戦闘は終わらないとその場に緊張が走りました。
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