死に場所を求めていたら異世界に来ました 〜なんか少女になったりしてるけど、仕方ないのでここで良い死に場所を探します〜

芹澤©️

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妖怪?! (いえ、ゴブリンです)

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小さな泉を挟んだ先に、緑色の小人がいる。

疲れた体に酒を一気飲みしたから、もう酔ってしまったのかと千秋はぎゅっと目を閉じてまた前方を確認した。しかし、緑色の小人は明らかに此方を見ている。

(しかもなんか臭い……)

吐瀉物としゃぶつの様な、えた臭い。そして、動物特有の濃くてむんと来る臭いに、眉を顰める。

(緑色の猿……? にしては顔やばいな。口と目がやけにでかいし……え、まさか妖怪? )

死んで愛猫達に会いたいなんて思っている千秋だが、熱心に何かを信仰している訳でも無いし、ホラー映画を見れば後ろに何かいるんじゃないかと気配にビクビクする小心者だ。故に霊や妖怪を見る様なスピリチュアルな体験はした事がない。例えあっても無いと宣言する。

(薬と酒のせいでどっかおかしくなったか? )

まあ、既にどっかぶっ飛んでいるわけだが、千秋にとってはそれは普通であるので気付かない。正体はなんなのかじっと見ていると、その緑色の何かは木の棒を振りかざし駆け寄って来た。

(げっ! キモっ! )

得体の知れないものに持つ感想にしては軽いが、これが熊や蛇だったら思う所もあるだろう。が、訳が分からな過ぎて軽くパニックになっている頭では、こんな感想で片付けてしまうのも無理は無い。半ば呆然としていると、あっと言う間に間合いを詰めた何かは、思い切り千秋に向かって飛び上がった。

(動きも気持ち悪いっ! 黒豹ならまだしも、こいつにられるなんて有り得ない! )

千秋はただ死ぬなら何でも良い訳では無い。他人になるべく迷惑をかけず、痛くなく、死体が上がらない。誰の目にも晒されない。それを目指しての自殺だ。黒豹なら多少痛くても彼(彼女? )の糧になるなら本望だった。

けど、これは無い。無理である。正直寄らないで欲しい。

「っキモいんだよ! 」

思わず持っていた酒瓶で、飛び掛かって来るゴブリンの顎を打ち抜いた。

(あー、酒瓶割れるかもっ)

そう思ったのも一瞬。ボギボギと不気味な音と共に緑色の奴は茂みへふっ飛んで行ってしまった。

(……え? )

呆気に取られると、脳内でピコンと音が鳴る。

『レベルが上がりました。ステータスをご確認下さい』

「っえ? 」

『レベルが上がりました。ステータスをご確認下さい……レベルが上がりました。ステータスをご確認下さい……』

「分かった分かった、ステータス? 確認します! 」

脳内で響く声に堪らず叫ぶと、目の前に画面が表示された。余りの事に思わず触ろうとすると、見えているのに何もない。触れない。彷徨う手を認識しているのに、何故か画面はぶれないし、消えないのだ。

(脳内が見せている? )

どうやら視界ではなく、脳内表示らしい。いや、そこを納得するのもおかしいのだが、そうとしか思えない。

『レベル12から15へ上がりました。体力200から340、魔力1500から1800。力5から7、知力10から12、俊敏3から5、技術力18から25、』

「ちょっと煩い! 音量オフで! 」

『…………』

「マジか……」

どうやら、音量を消音にする事には成功したらしい。改めて消えない画面を上から見て行く。


清水 千春  人族(仮)

レベル12→15 /999
体力200→340 /150000
魔力1500→1800 /300000
力5→7 /100
知力10→12 /50
俊敏3→5 /50
技術力18→25 /1000
(火魔法?? 水魔法?? 土魔法?? 雷魔法?? 風魔法?? 空間魔法?? 光魔法?? 闇魔法?? 剣術E 棍棒術E)
幸運2→3 /50

スキル 鑑定A 危機回避B 自動翻訳S 擬態A

加護 猫(科)の盟友×7 森の主の従僕(仮契約)×1 ??? ???

「……はい? 」

(人族かっこ仮って何? え、森の主の従僕ってあの黒豹……? )


「……これ、まさかあの世って話じゃないよね? ……現実……? 面倒くさ」


晴れて異世界デビューした千秋は、今後の生活を思うと、1からのスタートするのがただただ面倒になったのだった。


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