告白ごっこ

みなみ ゆうき

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21.まさかの事態(昴流視点)

罰ゲームをすることが決まったその日の午後。

俺は初めて高嶋瑠衣という人物に注目した。注目というより、初めて視界に入れたという言い方のほうが正しいのかもしれない。

そのくらい俺は今回の事があるまで高嶋の存在を全く認識していなかったということだ。


第一印象はとにかく地味。
地味っていうより存在感ゼロ。
いつも俯いてるか、ボーッと窓の外を見ているかのどっちかといった感じなので、その表情どころか、どんな顔をしてるかもよく分からない。

大人しいだけで変なヤツではなさそうだけど、誰とも関わってないせいで、本当の人物像が全く見えてこない不思議な感じのヤツだった。


うん。なんか全然イケる気がしねぇ。


ただでさえ今回は男が相手ってことで告白だけでも難易度高めなのに、ここから口説き落として好きだと言わせるなんてどんだけハードルあげてくれてんだと、心の中で文句を言っておく。

よく考えてみると、賭けに勝ったところで得るものは焼き肉以外ない訳だし、負けたところで痛むのは俺の財布だけだから真剣にやる意味もないように感じる。

ノリと勢いとその場の雰囲気でこうなったからには、それなりにやってる風な体裁は整えるつもりでいるけど、それにしたってちょっと尻込みしてしまう。


いっそのこと正直に今回の経緯を話して、仲良くなってる風に偽装する事に協力してもらうってのも手かもしれない。

こればっかりは本人の性格もあるから話してみない事にはわからないけど、それはそれで有りかも。


この時の俺は愚かにも、ある程度の自分の方向性が決まったことですっかり気が軽くなっており、ほとんど目的を達成したかのような気になっていた。

そしてこのタイミングでお誂え向きに日直がまわってくるというビッグチャンスにも恵まれたこともあり、俺はとりあえず罰ゲームを実行する事に決めたのだが──。




「俺、高崎のことが好きなんだけど……」


告白するんじゃなくて、何故かされる側になっている俺。

その瞬間。相手が男だとか、ろくに話した事もないだとか、普段はビックリするほど存在感がないだとかそういうことは、全部頭から吹っ飛んでいた。


じっと俺を見つめてくる高嶋の顔が思ってたよりもずっとずっと綺麗で、ちょっと恥ずかしそうにしているその表情が可愛くて、一瞬たりとも目が離せない。
何か言わなきゃと思っても咄嗟に言葉が出て来なかった。

男に告白されてんのに不思議と嫌な感じはせず、それどころか目的を達成したってのに、喜びの感情よりも『もう終わりだなんてどうしよう』って気持ちばかりが先に立つ。

俺はまだ何もしてないどころかやっと高嶋の存在を知って、これまで感じた事のないような何かが胸に芽生えかけたとこなのだ。
なのに、こんなにあっさり好きだと言われて呆気なく試合終了みたくなってる事実に、脳の処理が追い付いていなかった。


っていうか、そもそもコレ、完全棚ぼた状態だけど俺の勝ちになんのかな?

アイツらに言っても絶対信じてもらえなそうだし、高嶋の事にしても、ここからどういう展開に持っていくのが正解なのかさっぱりわからない。

自分がどうすべきか考えあぐねていたその時。

何も言わない俺に対し、徐々に表情を曇らせていった高嶋が、躊躇いがちに口を開きかける。
その様子に何故かギクリとした俺は、咄嗟に言葉を遮っていた。


「あのさ……!」


高嶋は俺がどういう意図でこんな真似をしたのかわからず、怪訝そうな顔をしている。
俺も自分の事なのに、何がしたいのかわからない。

ただひとつだけ言えることは、これで終わりにするのは何か違うということだけ。だったら俺は……。


「高嶋の気持ちはわかった。まさかそんな風に言ってもらえると思わなかったから、ビックリしすぎて混乱してた。ゴメンな……」


素直な気持ちを口にするしかない。


ところが最後の謝罪を断りの言葉だと思ったのか、高嶋の表情が一気に色を無くしていった。

俺は慌てて言葉を付け足す。


「とりあえず友達からってことでいいか?」

「………………は?」

「なんとなく興味を引かれたんだ。お前に」

「え!? ちょっと待って!」


俺が否定的な言葉を言わなかったことが余程意外だったらしく、高嶋が急に焦り出した。

それが妙に可愛く感じ。


「なんかお前イチイチ可愛い反応するな……。そういうの見てると、お前をそういう意味で好きになれるかはわからないけど、お前のこと知りたいっていう気持ちにさせられる」


なんだか自分でもどうかなっていう言葉があっさり口をついて出てしまっていた。

言われたほうの高嶋は、明らかに反応に困っている様子が丸わかりで。

……なんかいたたまれなかった。


その結果。この場の空気に耐えられなくなった俺は、部活に出るという尤もらしい理由をつけて、早々に教室を後にしたのだった。
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