セカンドライフ!

みなみ ゆうき

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本編

24.幼馴染ライフ! 颯真の事情 その1

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俺こと神崎かんざき 颯真そうまが、幼馴染である中里なかざと(旧姓 藤沢) 光希みつきと出会ったのは、それこそ俺達の記憶にないほど小さな頃だ。

残念なことに幼すぎた俺にはどういう出会いだったのかは記憶に残っていないのだが、両親が言うには一目見たその瞬間に俺のほうから光希に抱き付いていったらしい。

それからずっと光希との付き合いは続いているが、最初から俺達の関係性のスタンスは変わっておらず、いつも俺の方から光希のところにいくのが当たり前という感じになっている。


俺の幼馴染である光希は、幼い頃から男女問わずによくモテていた。

蜂蜜色に輝く髪にブルーグレイの瞳という、日本人の血が四分の三も流れているとは思えない見た目に加え、更にそれを際立たせる整った顔立ちは文句の付けようもないほど可愛かった。


一方、今でこそ親衛隊ができるほどの結果に成長した俺だが、小学生までの俺はお世辞にも将来イケメンになるとは言い難いほどの、ただのチビなガキだった。


当時の俺にはとにかく敵が多かった。
理由は簡単。

──俺がいつも光希と一緒にいたからである。


光希と仲良くなりたいと思う人間は非常に多く、俺は常にそういう連中からのやっかみの対象となっていたのだ。

傍目から見ると、光希と幼馴染というだけでたいしてパッとしない見た目の俺が、一方的に光希に付きまとっているかのように見えるらしく、俺はよく謂れのない誹謗中傷を受ける羽目になっていた。

しかし俺はそういうことを言ってくるやつらを黙らせて、光希の隣というポジションを常に勝ち取ってきた。

家庭の事情で当時は光希と同じ公立の小学校に通っていた俺だが、大企業の社長令息としての教育はそれこそ物心ついた頃からしっかりされており、本当に小賢しい子供だった俺は、様々な計略を廻らせて無理矢理それらを解決してきたのである。

そのくらい自分で対処出来なければ、将来『神崎』を背負って立つ人間にはなれないし、光希の隣にいる資格もないと思っていたので、自分としては当たり前の結果だと思っていたのだが、今思い返してみると普通の小学生らしくない子供だったというのがよく分かる。

光希も普通の子供ではなかったので、ある意味俺達は同類だと言えなくもないのだが。


そんな光希が持っていたものはその恵まれた容姿だけでなかった。

勉強も出来るし運動神経も良い。

まさに理想の王子様のような存在だった。


しかし王子様でいるのは女子の前だけであり、男子に対してはわりと塩対応だった気がする。

特に光希の見た目をとやかく言ってくる連中には本当に容赦ない対応をしていた。

頭を働かせて物事を解決しようとする俺とは違い、意外にも光希は可愛らしい見た目からは想像もつかないほどの武闘派だった。

口より先に手が出るタイプで、自分の敵だと思った相手とは言葉を交わすより、問答無用で拳を使って排除するという感じだったのだ。

その結果、クラスのほとんどのヤツと反目しあうことになった光希だが、実は嫌われていたわけではない事を俺は知っている。

光希の見た目をからかうという行為は、小学生男子特有の『好きな子いじめ』というやつだったのだが、残念ながら光希はそのからかいの奥に隠された気持ちに気付くことはなかった。


光希はお姉さんの光里あかりさんの教育で女の子には無条件で優しくすることが当たり前という考え方に加え、そんな真似をしなくとも女の子が自然に寄って来るという状況だったため、本人は喧嘩を売られたとしか思っていなかったのだ。

俺もやつらの意図がわかっていながら、あえて光希に教えてやるような親切な真似はしなかった。


その結果、男子からは敬遠されることにはなったが、俺達は順調に友情を育んでいき、自他共に認める無二の親友となっていった。


そんな幼少期を過ごした俺達だったが、小学校高学年になって第二次性徴期というものが訪れた時、少しずつ俺達の関係がズレはじめる。

外国人の血が混ざっている光希は、同学年の男子に比べ明らかに成長が早く、あっという間に大人びていった。

そんな光希を男子よりも精神年齢が大人である女子が放っておくわけがなく。
それまでは憧れの王子様的な扱いで、誰かのものになることなどなかった光希に対して、女子達は急に自分ひとりの王子様であることを求め始めたのだ。

光希は俺と一緒にいる時間よりも、女子に囲まれて過ごす時間が多くなり、元々女の子が大好きだった光希はいつの間にか女の子とお付き合いというものを始めてしまったのだ。


最初その報告を聞いた時、俺はショックで呆然としてしまった。

そして自分の光希に対する気持ちがどういうものかを唐突に自覚した。


──俺は光希のことが恋愛対象として好きだったのだ。


ようは光希に群がる女子と同じだったということだ。


最悪なことにそう気付いてすぐ、光希との別れの時がやってきた。

小学校六年生の秋のことだった。

俺は中学受験の準備のために都内にある実家に戻ることになったのだ。


元々光希が暮らしていた街へは身体の弱い母親の療養を兼ねて移り住んでいただけなので、いつかは本来の自分の居場所へ戻らなければいけないことは承知していた。
だが、最悪のタイミングでその時が訪れてしまった形となったのだ。


俺は中学から国内有数の名家の子息が多く在籍する、『紅鸞学園』という中高一貫教育の全寮制男子校に入る予定だった。

そこは光希の母親である柊子さんのお姉さんの嫁ぎ先である御堂家が経営している学校であったため、俺は勝手に光希も中学からはそこに行くものだと思っていたのだ。

なのでその時の俺は実家に戻るという事を、一時的な別れくらいにしか思っていなかったのだが、それが大きな間違いだとすぐに思い知らされた。


自宅に戻る事が決まってすぐ光希に確認したところ、受験はせず地元の中学校に進学するということを聞かさた。

焦った俺は何度も光希を説得してみたのだが、返事は変わらず、しつこく理由を問い詰めた俺は愕然とさせられる。


『男ばっかの学校なんて行きたくない。しかも山奥の全寮制じゃ彼女とデートも出来ねぇじゃん。絶対無理』


にべもなくそう言われ、俺は自分の目論見が完全に外れた事を実感させられた。


──俺はその時、決意した。


絶対光希の隣にいても誰にも文句を言われないような男になってみせる。

そしてどんな女よりも光希の隣には俺が相応しいということを認めさせてやると。

それまでは会わないと心に決めた。

しかし、あっさり忘れられるのは困るので連絡だけは小まめにすることにし、俺という存在を常に印象付けるということをすることにした。


結局中学の三年間、光希とは会えなかったが、俺達の交流は俺の努力の甲斐もあって途絶えることはなく、基本的に男友達というものがいない光希にとっての唯一の親友というポジションはそのまま俺のものとなっているのである。

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