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22.俺がやりたかったのって、コレってこと!? *
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そっか俺、エッチなコだったんだ……。
六条の言葉を認めた途端。
最後に残っていたブレーキがあっさり外れ、とめどなく沸き上がってくる快感に無理に抗おうなんて気持ちはさっぱり無くなり、俺は欲望に忠実になれていた。
目の前にある六条のモノを舐めしゃぶりながら、将平の動きにあわせて自分の一番いいところに当たるよう腰をくねらせ奥まで誘う。
すると、将平の動きが急に激しいものへと変わっていった。
今までの攻め方はそれなりに俺の身体を気遣ってくれてたんだな……。余裕かよ。
俺はというと余裕なんて全くないもので。
「あぁ…んッ…!そこもっとしてぇ……!きもちいい…ッ…!将平も気持ち良くなって一緒に、イこう……!早く将平の精子、奥に出して……!俺にちょうだい……!」
何もかもかなぐり捨ててかなり恥ずかしい言葉を口走っていた。
「くっ……、どうしたんだよ、耀……」
将平は急に態度が豹変した俺を訝しんでいるものの、抽挿のスピードを緩める気配はない。
──俺も自分でどうしちゃったんだろうと思う。
元々セックスは大好きだ。でも相手は女の子限定で、間違っても男に尻穴犯されて、奥にザーメンかけて欲しいなんて思ったこともない。
なのに今は男に抱かれることに抵抗がなくなってるだけじゃなく、男じゃないとダメな身体になっているのだ。
しかも男の喘ぎなんて聞きたくもないと思っていた筈なのに、AV女優並みに喘ぎながら恥ずかしい言葉を言ってる俺。
ホントにどうかしてる。
頭の片隅に僅かに残った冷静な部分がそう呟いているが、今更どうにも止められない。
「ああッ……!それイイ…ッ…!奥、気持ちいい……ッ……」
ガッツリと押さえ込まれ、一方的に与えられる快感を享受する。
もう少しでイキそうかもなんて考えていると。
「ほら、源川、お口がお留守になってるよ? 自分ばっかり楽しんでないで俺にもご奉仕して」
目の前の存在をすっかり忘れていたことに気付かされた。
「ンンッ……!」
再び六条のモノに舌を這わせ喉につくほど奥まで咥え込む。
素面だったら絶対出来ない真似ではあるが、夢の中で使われた媚薬の効果をそのまま引き継いできたかのような身体は、多少の苦しさも快感のエッセンスに変えてくれるらしい。
ジュプジュプと音を立てながら吸い上げると、俺の口の中で六条の硬くそそり立ったモノがビクビクと揺れた。
夢の中とはいえ、初めて六条とセックスした時は一方的にされるがままで、六条の状態なんて気にする余裕も無かったけど、今こうして目の前に六条の欲望の証を突き付けられ、その感触を直に味わい反応してるのを見ると堪らない気持ちにさせられる。
媚薬効果で相当脳ミソがおかしくなってんのか、早くこれも挿れて欲しいなんて思う始末。
後ろからは将平のモノを挿れられ、最奥をガンガン突かれ。
前からは六条のモノで口を犯されながら指先で乳首を摘まみあげられるという典型的な3Pスタイルで攻められた結果。
「も、ダメ…ッ…、イク…ッ…。んーーーッ!!」
男として一番肝心な部分には全く触れられていないというのに、俺はまた呆気なくイッてしまった。
将平が俺の背中に覆い被さるように密着したまま動かないことから、将平も俺とほぼ同時にイッたんだってことがわかり嬉しくなった。
大きく息を吐き出し俺の背中にチュッとキスをしてから、将平の身体がゆっくりと離れていく。
たったそれだけのことなのにまだまだおさまりのつかない俺の身体は勝手にビクビクと反応し、後孔は未練がましく収縮を繰り返していた。
──まだ足りない……。
俺はイッたばかりの気怠い身体を起こし、すぐ目の前にいる六条に向かって腕を伸ばした。
「せんせぇのも早く挿れて……」
あり得ないほど甘えた声で誘った俺を見て六条がニヤリと笑う。
「本当に悪いコだな……。そんな風に誘って。俺のことも欲しいの?」
ちょっと意地悪な感じが夢の中の六条と重なった。
でも不思議と嫌な感じはしない。
俺は躊躇いがちに頷いた。
「……うん。欲しい」
「じゃあ、おねだりして」
「──六条先生のも、俺の中にちょうだい……」
「可愛いね、源川……。全部あげるよ」
「うわッ!」
突然両脇を抱えられたと思ったら、六条と向かいあう形で抱き締められ、性急に唇が重ねられた。
「んんッ…、ふぁ……、せんせ……もう我慢できない……。奥まで挿れて……」
舌を絡ませるような深いキスの間に訴えかけると、六条は俺の膝裏を掬い大きく開脚させた状態で、パクパクと物欲しそうに口を開ける俺の後孔に自分の切っ先をあてがった。
俺は六条の首の後ろに腕を回し、しがみつくような格好で腰を落とす。
さっきまで将平のモノを飲み込んでいただけのことはあって、案外スムーズに入ってはいくものの、少し進むだけで訪れる凄まじい快感に腰が引け、なかなか全部挿れることが出来ないのがもどかしい。
「も、むりぃ……。きもちよすぎて動けない……。せんせ……やって……?」
思うように出来ずに涙目になる俺に、六条が少しだけ困ったような顔をする。
俺の背後では将平が息を飲むような気配が伝わってきた。
「……耀が可愛い過ぎる……。何なんだよもう……。ただでさえライバル多いってのに、こんな姿見せられたら心配で表歩かせられないよ……。いっそのこと監禁するか……?」
「中頭、それ犯罪だから。 それにな、こういう顔は俺達だけが知ってりゃいいし、もし源川が他の男にコナかけるようなら、その時はたっぷりと教えてやればいいんだよ」
俺のもどかしさを少しも理解してないようにごちゃごちゃ喋る二人に焦れた俺が身動ぎした瞬間。
「こんな風にな!」
「ひゃぁぁ…んッ!」
突然激しく下側から突き上げられ、六条のモノが一気に最奥まで穿たれた。
あまりの衝撃に目の前に星が飛び散る。
あー、これヤバいかも。
そう思ったら案の定、俺の意識はあっさりと途切れてしまっていた。
◇◆◇◇
──これ夢だな……。
辺り一面満開の桜。風が吹く度、ザァーッと木々が揺れ、前も見えないくらいの大量の花びらが舞う。
俺の姿は何故か平安仕様で、紫色の単という着物の上に白い狩衣を重ねた衣装を身に纏っている。
これは夢の中で俺が気に入ってた組み合わせ。
何気にヘビロテしてた。
惟光にはもっと格好に気を遣えと再三再四言われてたけど、ただでさえ堅苦しいことが多い平安貴族の決まり事にうんざりしていた俺は、外に出る時以外は割りとその苦言を無視してることが多かった。
時間が経つにつれ段々と諦めてくれたようだけど、烏帽子も被らず着物も思いっきり着崩して邸で寛いでたら惟光に滅茶苦茶怒られたっけ。
そんな事を思い出しながら桜吹雪の中をゆっくりと進むと、ひときわ大きな桜の木の下にたどり着いた。
立派な幹に寄りかかり、舞い散る桜とそこから垣間見える青い空をぼんやりと眺める。
すると、視界の端に違う色が飛び込んできたことに気付き、俺は慌ててそちらに視線を向けた。
紫色の四角い物体がゆっくりと俺のほうに向かって落下してきている。
一度触れたらまた何かが起きそうな気がして、絶対に手に取るまいと心に決めたものの、何故か俺の身体は勝手にそれを受け止めているという怪奇現象に見舞われた。
桐山の部屋で見た覚えのある、表紙にはタイトルも何も書いてない紫色のハードカバーの本。
パラパラと捲って中身を見ると、一見解読不能と思われるような手書きの文字がびっしりと並んでいた。
面倒になり早々に確認を断念したものの、最後のページに書いてあった文字に目が止まる。
『物語とは決められた結末に向かって進んでいくものではなく、誰でもが自由に紡ぎ出すことが出来るもの。』
何だか意味のわからないその文章を声に出して読んだ途端。
またしても俺の意識は薄れていった。
◇◆◇◆
目覚めると、心配そうに俺の顔を覗き込んでいる将平と目が合った。
「あれ……?将平……?何で……?」
「大丈夫か?耀」
身体は半端なくダルいがこのくらいは大したことじゃない。
むしろ身体より精神的なダメージがデカすぎる……。
こうなる直前までの状況を一気に思い出した俺は、恥ずかしさを堪えながらも、こんな状態になったもうひとりの元凶である人物について聞いてみた。
「うん。一応。 六条は……?」
「まだ仕事があるからって一旦学校に戻った。
──もしかして気になる?」
将平の視線が何だか怖い。
俺は慌てて首を横に振った。
あまりに恥ずかしすぎるおねだりをした俺。
今、六条と顔を合わすことになってたら羞恥で死ねる自信がある。
アイツに抱かれてる最中に意識飛ばしちゃったけど、その前までの記憶は結構しっかりあるのだ。
「いや、べつに。聞いてみただけ」
「そもそもアイツがここに来たのも耀が車に忘れたものを届けにきただけだって言ってたし、気にしなくていいと思うよ。っていうか俺と一緒にいるのにアイツのことなんて気にしないで欲しい」
一体どうしちゃったワケ……?
将平の真剣な眼差しに耐えきれず視線を逸らすと、机の上に置かれているものが目に入り驚愕する。
夢の中で手に取った紫色のハードカバーの本。
何でこれがここに!?
「六条が届けてくれた忘れ物ってこれだったんだけど。
耀ってそんな難しそうなもの読むタイプだったっけ?」
俺の視線に気付いた将平がそう説明してくれたけど、実はこれが呪いの本じゃないかという疑惑すら抱き始めていた俺は、絶対読むものかと強く決意する。
その時、開けられた窓からフワリと風が舞い込んできて、薄紫色のカーテンが揺れた。それと同時に、誰かが耳許で囁くような声がした。
『お楽しみいただけましたか?』
それは古典の授業中に聞こえた声と同じもので。
俺は机の上に置かれた紫色の本を、少しだけ恨みがましい気持ちで見つめたのだった。
【了】
********************
お読みいただきありがとうございました。
これにて完結とさせていただきます。
後日攻め三人の視点を投稿できたらと思っています。
お付き合いいただきありがとうございました。
六条の言葉を認めた途端。
最後に残っていたブレーキがあっさり外れ、とめどなく沸き上がってくる快感に無理に抗おうなんて気持ちはさっぱり無くなり、俺は欲望に忠実になれていた。
目の前にある六条のモノを舐めしゃぶりながら、将平の動きにあわせて自分の一番いいところに当たるよう腰をくねらせ奥まで誘う。
すると、将平の動きが急に激しいものへと変わっていった。
今までの攻め方はそれなりに俺の身体を気遣ってくれてたんだな……。余裕かよ。
俺はというと余裕なんて全くないもので。
「あぁ…んッ…!そこもっとしてぇ……!きもちいい…ッ…!将平も気持ち良くなって一緒に、イこう……!早く将平の精子、奥に出して……!俺にちょうだい……!」
何もかもかなぐり捨ててかなり恥ずかしい言葉を口走っていた。
「くっ……、どうしたんだよ、耀……」
将平は急に態度が豹変した俺を訝しんでいるものの、抽挿のスピードを緩める気配はない。
──俺も自分でどうしちゃったんだろうと思う。
元々セックスは大好きだ。でも相手は女の子限定で、間違っても男に尻穴犯されて、奥にザーメンかけて欲しいなんて思ったこともない。
なのに今は男に抱かれることに抵抗がなくなってるだけじゃなく、男じゃないとダメな身体になっているのだ。
しかも男の喘ぎなんて聞きたくもないと思っていた筈なのに、AV女優並みに喘ぎながら恥ずかしい言葉を言ってる俺。
ホントにどうかしてる。
頭の片隅に僅かに残った冷静な部分がそう呟いているが、今更どうにも止められない。
「ああッ……!それイイ…ッ…!奥、気持ちいい……ッ……」
ガッツリと押さえ込まれ、一方的に与えられる快感を享受する。
もう少しでイキそうかもなんて考えていると。
「ほら、源川、お口がお留守になってるよ? 自分ばっかり楽しんでないで俺にもご奉仕して」
目の前の存在をすっかり忘れていたことに気付かされた。
「ンンッ……!」
再び六条のモノに舌を這わせ喉につくほど奥まで咥え込む。
素面だったら絶対出来ない真似ではあるが、夢の中で使われた媚薬の効果をそのまま引き継いできたかのような身体は、多少の苦しさも快感のエッセンスに変えてくれるらしい。
ジュプジュプと音を立てながら吸い上げると、俺の口の中で六条の硬くそそり立ったモノがビクビクと揺れた。
夢の中とはいえ、初めて六条とセックスした時は一方的にされるがままで、六条の状態なんて気にする余裕も無かったけど、今こうして目の前に六条の欲望の証を突き付けられ、その感触を直に味わい反応してるのを見ると堪らない気持ちにさせられる。
媚薬効果で相当脳ミソがおかしくなってんのか、早くこれも挿れて欲しいなんて思う始末。
後ろからは将平のモノを挿れられ、最奥をガンガン突かれ。
前からは六条のモノで口を犯されながら指先で乳首を摘まみあげられるという典型的な3Pスタイルで攻められた結果。
「も、ダメ…ッ…、イク…ッ…。んーーーッ!!」
男として一番肝心な部分には全く触れられていないというのに、俺はまた呆気なくイッてしまった。
将平が俺の背中に覆い被さるように密着したまま動かないことから、将平も俺とほぼ同時にイッたんだってことがわかり嬉しくなった。
大きく息を吐き出し俺の背中にチュッとキスをしてから、将平の身体がゆっくりと離れていく。
たったそれだけのことなのにまだまだおさまりのつかない俺の身体は勝手にビクビクと反応し、後孔は未練がましく収縮を繰り返していた。
──まだ足りない……。
俺はイッたばかりの気怠い身体を起こし、すぐ目の前にいる六条に向かって腕を伸ばした。
「せんせぇのも早く挿れて……」
あり得ないほど甘えた声で誘った俺を見て六条がニヤリと笑う。
「本当に悪いコだな……。そんな風に誘って。俺のことも欲しいの?」
ちょっと意地悪な感じが夢の中の六条と重なった。
でも不思議と嫌な感じはしない。
俺は躊躇いがちに頷いた。
「……うん。欲しい」
「じゃあ、おねだりして」
「──六条先生のも、俺の中にちょうだい……」
「可愛いね、源川……。全部あげるよ」
「うわッ!」
突然両脇を抱えられたと思ったら、六条と向かいあう形で抱き締められ、性急に唇が重ねられた。
「んんッ…、ふぁ……、せんせ……もう我慢できない……。奥まで挿れて……」
舌を絡ませるような深いキスの間に訴えかけると、六条は俺の膝裏を掬い大きく開脚させた状態で、パクパクと物欲しそうに口を開ける俺の後孔に自分の切っ先をあてがった。
俺は六条の首の後ろに腕を回し、しがみつくような格好で腰を落とす。
さっきまで将平のモノを飲み込んでいただけのことはあって、案外スムーズに入ってはいくものの、少し進むだけで訪れる凄まじい快感に腰が引け、なかなか全部挿れることが出来ないのがもどかしい。
「も、むりぃ……。きもちよすぎて動けない……。せんせ……やって……?」
思うように出来ずに涙目になる俺に、六条が少しだけ困ったような顔をする。
俺の背後では将平が息を飲むような気配が伝わってきた。
「……耀が可愛い過ぎる……。何なんだよもう……。ただでさえライバル多いってのに、こんな姿見せられたら心配で表歩かせられないよ……。いっそのこと監禁するか……?」
「中頭、それ犯罪だから。 それにな、こういう顔は俺達だけが知ってりゃいいし、もし源川が他の男にコナかけるようなら、その時はたっぷりと教えてやればいいんだよ」
俺のもどかしさを少しも理解してないようにごちゃごちゃ喋る二人に焦れた俺が身動ぎした瞬間。
「こんな風にな!」
「ひゃぁぁ…んッ!」
突然激しく下側から突き上げられ、六条のモノが一気に最奥まで穿たれた。
あまりの衝撃に目の前に星が飛び散る。
あー、これヤバいかも。
そう思ったら案の定、俺の意識はあっさりと途切れてしまっていた。
◇◆◇◇
──これ夢だな……。
辺り一面満開の桜。風が吹く度、ザァーッと木々が揺れ、前も見えないくらいの大量の花びらが舞う。
俺の姿は何故か平安仕様で、紫色の単という着物の上に白い狩衣を重ねた衣装を身に纏っている。
これは夢の中で俺が気に入ってた組み合わせ。
何気にヘビロテしてた。
惟光にはもっと格好に気を遣えと再三再四言われてたけど、ただでさえ堅苦しいことが多い平安貴族の決まり事にうんざりしていた俺は、外に出る時以外は割りとその苦言を無視してることが多かった。
時間が経つにつれ段々と諦めてくれたようだけど、烏帽子も被らず着物も思いっきり着崩して邸で寛いでたら惟光に滅茶苦茶怒られたっけ。
そんな事を思い出しながら桜吹雪の中をゆっくりと進むと、ひときわ大きな桜の木の下にたどり着いた。
立派な幹に寄りかかり、舞い散る桜とそこから垣間見える青い空をぼんやりと眺める。
すると、視界の端に違う色が飛び込んできたことに気付き、俺は慌ててそちらに視線を向けた。
紫色の四角い物体がゆっくりと俺のほうに向かって落下してきている。
一度触れたらまた何かが起きそうな気がして、絶対に手に取るまいと心に決めたものの、何故か俺の身体は勝手にそれを受け止めているという怪奇現象に見舞われた。
桐山の部屋で見た覚えのある、表紙にはタイトルも何も書いてない紫色のハードカバーの本。
パラパラと捲って中身を見ると、一見解読不能と思われるような手書きの文字がびっしりと並んでいた。
面倒になり早々に確認を断念したものの、最後のページに書いてあった文字に目が止まる。
『物語とは決められた結末に向かって進んでいくものではなく、誰でもが自由に紡ぎ出すことが出来るもの。』
何だか意味のわからないその文章を声に出して読んだ途端。
またしても俺の意識は薄れていった。
◇◆◇◆
目覚めると、心配そうに俺の顔を覗き込んでいる将平と目が合った。
「あれ……?将平……?何で……?」
「大丈夫か?耀」
身体は半端なくダルいがこのくらいは大したことじゃない。
むしろ身体より精神的なダメージがデカすぎる……。
こうなる直前までの状況を一気に思い出した俺は、恥ずかしさを堪えながらも、こんな状態になったもうひとりの元凶である人物について聞いてみた。
「うん。一応。 六条は……?」
「まだ仕事があるからって一旦学校に戻った。
──もしかして気になる?」
将平の視線が何だか怖い。
俺は慌てて首を横に振った。
あまりに恥ずかしすぎるおねだりをした俺。
今、六条と顔を合わすことになってたら羞恥で死ねる自信がある。
アイツに抱かれてる最中に意識飛ばしちゃったけど、その前までの記憶は結構しっかりあるのだ。
「いや、べつに。聞いてみただけ」
「そもそもアイツがここに来たのも耀が車に忘れたものを届けにきただけだって言ってたし、気にしなくていいと思うよ。っていうか俺と一緒にいるのにアイツのことなんて気にしないで欲しい」
一体どうしちゃったワケ……?
将平の真剣な眼差しに耐えきれず視線を逸らすと、机の上に置かれているものが目に入り驚愕する。
夢の中で手に取った紫色のハードカバーの本。
何でこれがここに!?
「六条が届けてくれた忘れ物ってこれだったんだけど。
耀ってそんな難しそうなもの読むタイプだったっけ?」
俺の視線に気付いた将平がそう説明してくれたけど、実はこれが呪いの本じゃないかという疑惑すら抱き始めていた俺は、絶対読むものかと強く決意する。
その時、開けられた窓からフワリと風が舞い込んできて、薄紫色のカーテンが揺れた。それと同時に、誰かが耳許で囁くような声がした。
『お楽しみいただけましたか?』
それは古典の授業中に聞こえた声と同じもので。
俺は机の上に置かれた紫色の本を、少しだけ恨みがましい気持ちで見つめたのだった。
【了】
********************
お読みいただきありがとうございました。
これにて完結とさせていただきます。
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面白いです!!桐山先生すごく好きです!更新頑張ってください!
郁 様
お読みいただきありがとうございます。
感想ありがとうございました!
桐山を気に入っていただけてうれしいです。
更新遅くなっておりますが、頑張って書いていきますので、引き続きお読みいただけると幸いです。