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快感への期待が内側から溢れ出てくるような錯覚に襲われ、俺はすぐにでも強い刺激が欲しくて堪らなくなった。
しかし、性急に事を運ぼうと桐生さんがまだ身に付けていたズボンのベルトに手をかけたところで、その行動はあっさりと大きな手に阻まれる。
「なんで……?」
思わず非難がましい視線を向けると、桐生さんは俺の身体を軽々と横抱きにし、隣にある寝室のベッドへと運んだのだ。
ベッドに横たえられた俺は、桐生さんが次のアクションに移るまでの時間も厭わしく感じ、自ら纏っていたバスローブを脱ぎ去り緩く勃ちあがり始めた欲望の証に手を添えた。
そんな俺を見て、桐生さんがクスリと笑う。
「自分で勝手に始めるなんて悪いコだな。そんなに早く欲しいのか?」
「……だから待ちきれないって言いましたけど?」
きっと今の俺はただひたすら物欲しそうな顔をしているに違いない。
一瞬でも正気に戻ったら二度とこの場所に戻れないような強迫観念に駆られてるなんて思いもよらないだろう。
セックスはいい。
この時間だけは相手から与えられる狂おしいほどの快感に身を委ねていれば他に何も考えずに済むし、この行為にお互いの立場は関係ない。
それを最初に教えてくれたのはもう顔も覚えていない別の人間だが、俺の身体と心にそれを色濃く染み付かせたのは桐生さんだ。
その桐生さんに感謝こそすれ、分不相応な感情を抱き、過剰な期待をしそうになっている自分に最近嫌気が差している。
俺達の関係はあくまでもこの部屋だけのもの。
改めてそれを強く自分に言い聞かせながら、桐生さんがこれから与えてくれるであろう狂おしいほどの快感だけを思い、ひとり劣情を高ぶらせた。
待ちきれずに自らを慰めることに夢中になっている振りをしてわざと秘められた部分が見えるように膝を立てて軽く足を開く。
そして桐生さんの視線を意識しながら右手で屹立を撫で、左手ではさっき桐生さんに触れられたばかりの胸の尖りを摘まんで捏ねた。
ジクジクとした熱が身体の内に溜まる。
そんな俺を見て桐生さんが息を飲むのがわかり、ちょっとだけ嬉しくなってしまった。
誰もが称賛したくなるような完璧な男。
極上のオスに目の前にして俺の身体が淫らに疼く。
普段の俺では絶対に出来ないような恥ずかしい真似をしているのはわかっている。
でも気持ち良くなりたいと思うのは本能なのだから、意識してブレーキをかけなければどこまででも貪欲になれる気がした。
「こんなに俺を煽って、どうなっても知らないぞ?」
「……どんなことになるのか教えて下さい」
いつの間にか全てを脱ぎ去った桐生さんがその端正な顔に欲望を滲ませて俺に覆い被さる。
唇を塞がれるのと同時に、俺の両手が桐生さんによってベッドへと縫い付けられた。
すぐに舌が侵入してきたと思ったら、いつもより格段に荒々しく口腔内を蹂躙される。
歯列をなぞり上顎を擽り、舌を捕らえて絡ませる。息つく暇すら与えない激しいキスに混ざり合った二人分の唾液を飲み込むこともできずにただひたすら桐生さんの舌に翻弄された。
この段階までくればさっきまで感じていた憂鬱さや、いずれ直面しなければいけない現実問題のことなどまるで無かったかのように、後はひたすら快感を追い求めればいいだけだ。
そう思っていたのに。
今日はこの段階になっても最近俺の中で常に鳴り続けている警鐘が消えてくれない。
これは桐生さんとの関係に限界を感じていても自分からその繋がりを断ち切れずにいる弱い俺の心があげている悲痛な叫びだ。
それを認識した途端。ズキリとした痛みが胸に走った気がして僅かに目を眇めてしまう。
「どうした?」
たった一瞬のことだったはずなのにその表情を見逃さなかったらしい桐生さんにそう問われ、俺はそれを無理矢理封じ込めると、艶然と微笑んでみせた。
しかし、性急に事を運ぼうと桐生さんがまだ身に付けていたズボンのベルトに手をかけたところで、その行動はあっさりと大きな手に阻まれる。
「なんで……?」
思わず非難がましい視線を向けると、桐生さんは俺の身体を軽々と横抱きにし、隣にある寝室のベッドへと運んだのだ。
ベッドに横たえられた俺は、桐生さんが次のアクションに移るまでの時間も厭わしく感じ、自ら纏っていたバスローブを脱ぎ去り緩く勃ちあがり始めた欲望の証に手を添えた。
そんな俺を見て、桐生さんがクスリと笑う。
「自分で勝手に始めるなんて悪いコだな。そんなに早く欲しいのか?」
「……だから待ちきれないって言いましたけど?」
きっと今の俺はただひたすら物欲しそうな顔をしているに違いない。
一瞬でも正気に戻ったら二度とこの場所に戻れないような強迫観念に駆られてるなんて思いもよらないだろう。
セックスはいい。
この時間だけは相手から与えられる狂おしいほどの快感に身を委ねていれば他に何も考えずに済むし、この行為にお互いの立場は関係ない。
それを最初に教えてくれたのはもう顔も覚えていない別の人間だが、俺の身体と心にそれを色濃く染み付かせたのは桐生さんだ。
その桐生さんに感謝こそすれ、分不相応な感情を抱き、過剰な期待をしそうになっている自分に最近嫌気が差している。
俺達の関係はあくまでもこの部屋だけのもの。
改めてそれを強く自分に言い聞かせながら、桐生さんがこれから与えてくれるであろう狂おしいほどの快感だけを思い、ひとり劣情を高ぶらせた。
待ちきれずに自らを慰めることに夢中になっている振りをしてわざと秘められた部分が見えるように膝を立てて軽く足を開く。
そして桐生さんの視線を意識しながら右手で屹立を撫で、左手ではさっき桐生さんに触れられたばかりの胸の尖りを摘まんで捏ねた。
ジクジクとした熱が身体の内に溜まる。
そんな俺を見て桐生さんが息を飲むのがわかり、ちょっとだけ嬉しくなってしまった。
誰もが称賛したくなるような完璧な男。
極上のオスに目の前にして俺の身体が淫らに疼く。
普段の俺では絶対に出来ないような恥ずかしい真似をしているのはわかっている。
でも気持ち良くなりたいと思うのは本能なのだから、意識してブレーキをかけなければどこまででも貪欲になれる気がした。
「こんなに俺を煽って、どうなっても知らないぞ?」
「……どんなことになるのか教えて下さい」
いつの間にか全てを脱ぎ去った桐生さんがその端正な顔に欲望を滲ませて俺に覆い被さる。
唇を塞がれるのと同時に、俺の両手が桐生さんによってベッドへと縫い付けられた。
すぐに舌が侵入してきたと思ったら、いつもより格段に荒々しく口腔内を蹂躙される。
歯列をなぞり上顎を擽り、舌を捕らえて絡ませる。息つく暇すら与えない激しいキスに混ざり合った二人分の唾液を飲み込むこともできずにただひたすら桐生さんの舌に翻弄された。
この段階までくればさっきまで感じていた憂鬱さや、いずれ直面しなければいけない現実問題のことなどまるで無かったかのように、後はひたすら快感を追い求めればいいだけだ。
そう思っていたのに。
今日はこの段階になっても最近俺の中で常に鳴り続けている警鐘が消えてくれない。
これは桐生さんとの関係に限界を感じていても自分からその繋がりを断ち切れずにいる弱い俺の心があげている悲痛な叫びだ。
それを認識した途端。ズキリとした痛みが胸に走った気がして僅かに目を眇めてしまう。
「どうした?」
たった一瞬のことだったはずなのにその表情を見逃さなかったらしい桐生さんにそう問われ、俺はそれを無理矢理封じ込めると、艶然と微笑んでみせた。
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