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「そういえばさー。秋山からはずっと片想いしてた親友に卒業式の日の夜に告白して、あっさりフラれたとしか聞いてないけど、具体的にはどういうシチュエーションで何て言われた訳?」
関口にズバリ聞かれ、俺は躊躇いがちに口を開いた。
「どういうって言われても……。卒業式パーティーが終わった後、深見が俺んちに泊まりに来た時に、ずっと好きだったって告白して」
「それで?」
「深見は苦々しい表情で俯いたまま『樹の気持ちは受け取れない』って」
「その後は?」
「深見は俺と一回も目を合わせることなくすぐに帰っちゃって、そこで終わり。それからは全く連絡とってない」
言葉にするとなんとも呆気ないものだが、これが約四年間にも及ぶ片想いの結末であり、あの日の俺達のやり取りの全てだ。
「あのさぁ、何で秋山はそのタイミングで告白しようと思った訳? 四年も近くにいたんだからいくらでもチャンスはあったでしょうに」
鋭い指摘に、俺は無意識に関口から視線を逸らす。
「何でって言われても、雰囲気に流されたからかな?」
「ってことは思わずそういう事言っちゃいたくなるような雰囲気だったってこと?」
「というよりは、俺の気持ちが勝手に盛り上がっちゃっただけ。 それまでずっと一番近い位置にいて、しょっちゅうお互いの家に泊まりに行くような仲だったから、ちょっと期待しちゃったんだよ。 深見は女の子としか付き合ったことないし、男は対象外だって知ってたけど、もしかしたら俺の気持ちなら、受け入れてくれるかもって。
それにさ、もし玉砕しても深見がすぐに日本からいなくなることがわかってたから、たとえ気まずくなっても、顔を合わせることもないかなって……」
あの夜。
それまでずっと一緒にいた深見と簡単には会えなくなってしまうということもあり、俺は想いが溢れ出してきて止まらず、好きだと言わずにはいられなかったのだ。
一方で、意気地なしで臆病者の俺は、たとえフラれてしまっても、数日後には深見は日本からいなくなるのだから、気まずい思いをしなくて済むという打算を働かせてしまった。
「ふーん。なるほどねー。そういう事だった訳ね。
で?昨夜のあれはどういう事?」
関口がそう聞きながら、大好物のローストビーフサラダを小皿に盛り、律儀に俺の分も取り分けてくれる。
俺はおずおずと視線を合わせ、礼を言ってからそれを受け取った。
「昨夜深見が何であそこにいたのかはわからない。そもそも俺はアイツが帰国してることすら知らなかったし」
「深見さんは偶然通りかかったって言ってたけど?」
「……深見と話したんだ?」
「アンタがこそこそスマホ弄ってる時に世間話程度にね」
「……へぇ」
「へぇ、じゃないわよ。あたしが聞いてんのは、その後のこと。
深見さん。秋山のこと追いかけて行ったでしょ?」
関口がローストビーフを口に運ぶ。
どうやら俺が長く話す番という事らしい。
関口がゆっくり食べていられるほど話すことなんてあったかなと思いつつ、昨日の深見の意味不明な行動を振り返る。
「話がしたいって言われて」
「うん」
「もう一度やり直せないか、って」
「マジで!?」
関口は咀嚼していたものを慌てて飲み込むと、凄い勢いで食いついてきた。
「で!?秋山は何て答えたの?」
期待に満ちた視線を向けられ、俺は苦笑いする。
これから話す内容に、おそらく関口が思い描いているようなドラマチックな展開は微塵もない。
「……無神経で勝手な言い種に腹が立ったから、もう関わりあいになりたくないってハッキリ言ってやった」
「は!?そんな事言ったの?
押しに弱い秋山にしては珍しい……」
俺ってそんなに流されやすいと思われてるのか……。地味にショック。
「あ、そういえば秋山って今特定の相手がいるんだっけ? だったらキッパリ断ってもしょうがないかー。
昨夜の連絡、その人からでしょ?あれからあまーい時間を過ごした訳ねー。そりゃあたしとランチどころじゃないわ。はぁー羨ましい!」
妙に納得したような関口の言葉に、俺はギクリと身体を強張らせた。
関口にズバリ聞かれ、俺は躊躇いがちに口を開いた。
「どういうって言われても……。卒業式パーティーが終わった後、深見が俺んちに泊まりに来た時に、ずっと好きだったって告白して」
「それで?」
「深見は苦々しい表情で俯いたまま『樹の気持ちは受け取れない』って」
「その後は?」
「深見は俺と一回も目を合わせることなくすぐに帰っちゃって、そこで終わり。それからは全く連絡とってない」
言葉にするとなんとも呆気ないものだが、これが約四年間にも及ぶ片想いの結末であり、あの日の俺達のやり取りの全てだ。
「あのさぁ、何で秋山はそのタイミングで告白しようと思った訳? 四年も近くにいたんだからいくらでもチャンスはあったでしょうに」
鋭い指摘に、俺は無意識に関口から視線を逸らす。
「何でって言われても、雰囲気に流されたからかな?」
「ってことは思わずそういう事言っちゃいたくなるような雰囲気だったってこと?」
「というよりは、俺の気持ちが勝手に盛り上がっちゃっただけ。 それまでずっと一番近い位置にいて、しょっちゅうお互いの家に泊まりに行くような仲だったから、ちょっと期待しちゃったんだよ。 深見は女の子としか付き合ったことないし、男は対象外だって知ってたけど、もしかしたら俺の気持ちなら、受け入れてくれるかもって。
それにさ、もし玉砕しても深見がすぐに日本からいなくなることがわかってたから、たとえ気まずくなっても、顔を合わせることもないかなって……」
あの夜。
それまでずっと一緒にいた深見と簡単には会えなくなってしまうということもあり、俺は想いが溢れ出してきて止まらず、好きだと言わずにはいられなかったのだ。
一方で、意気地なしで臆病者の俺は、たとえフラれてしまっても、数日後には深見は日本からいなくなるのだから、気まずい思いをしなくて済むという打算を働かせてしまった。
「ふーん。なるほどねー。そういう事だった訳ね。
で?昨夜のあれはどういう事?」
関口がそう聞きながら、大好物のローストビーフサラダを小皿に盛り、律儀に俺の分も取り分けてくれる。
俺はおずおずと視線を合わせ、礼を言ってからそれを受け取った。
「昨夜深見が何であそこにいたのかはわからない。そもそも俺はアイツが帰国してることすら知らなかったし」
「深見さんは偶然通りかかったって言ってたけど?」
「……深見と話したんだ?」
「アンタがこそこそスマホ弄ってる時に世間話程度にね」
「……へぇ」
「へぇ、じゃないわよ。あたしが聞いてんのは、その後のこと。
深見さん。秋山のこと追いかけて行ったでしょ?」
関口がローストビーフを口に運ぶ。
どうやら俺が長く話す番という事らしい。
関口がゆっくり食べていられるほど話すことなんてあったかなと思いつつ、昨日の深見の意味不明な行動を振り返る。
「話がしたいって言われて」
「うん」
「もう一度やり直せないか、って」
「マジで!?」
関口は咀嚼していたものを慌てて飲み込むと、凄い勢いで食いついてきた。
「で!?秋山は何て答えたの?」
期待に満ちた視線を向けられ、俺は苦笑いする。
これから話す内容に、おそらく関口が思い描いているようなドラマチックな展開は微塵もない。
「……無神経で勝手な言い種に腹が立ったから、もう関わりあいになりたくないってハッキリ言ってやった」
「は!?そんな事言ったの?
押しに弱い秋山にしては珍しい……」
俺ってそんなに流されやすいと思われてるのか……。地味にショック。
「あ、そういえば秋山って今特定の相手がいるんだっけ? だったらキッパリ断ってもしょうがないかー。
昨夜の連絡、その人からでしょ?あれからあまーい時間を過ごした訳ねー。そりゃあたしとランチどころじゃないわ。はぁー羨ましい!」
妙に納得したような関口の言葉に、俺はギクリと身体を強張らせた。
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