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庭園での仕返し
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歩いて三分ほど経った頃だろうか。
私たちは、庭園に辿り着いた。
目の前には水を高々しく上げた大きな噴水がある。
それを中心として、草木や花が植えられていて、所々には休憩用のベンチがいくつか置かれていた。
晴れた日にここにお昼を食べに来てもいいかもしれない。
私はそう思いながら足を噴水の方へ進める。
跳ね返ってきた水が頬を濡らして、その冷たさに驚いてつい、冷たいと言葉を零した。
それがミゼルに聞かれていたようで、彼の笑い声が私の一歩後ろで聞こえる。
今日は、笑われてばかりだ。
悔しいという気持ちがじわじわと湧いてくる。
それによって私は、忘れかけていた仕返しという言葉を思い出した。
やるなら、今。
何故か直感的にそう思った。
「ミゼル。」
そう言って彼の方を振り返る。
ミゼルは、どうした?と言うように首を傾げる。
「あのね私。………その、ミゼルのことが好きなの。」
ミゼルの顔が微笑から驚愕に変わっていく様を見て、私はしてやったりと思った。
いきなりの告白であれば、どんな事でも余裕でやり切ってしまう彼から余裕の二文字を外す事が出来るのではないか。
なんの根拠も無しに挑んだ賭けだったが、上手くいったようだ。
ミゼルのことが好きなのは本心だが、私はこの気持ちを誤魔化すように、なんちゃってと言おうとする。
これで私がただからかっているだけだと分かり、彼の頬は数分前の私のように赤く染まるだろう。
その光景を思い浮かべ、微笑みながら言う。
「なんちゃっ「俺も。」」
「へ?」
「俺もアマリヤのことが好きだ。だから、その…俺の恋人になってほしい。」
「……?」
目の前にいる彼の顔は真剣そのもので、私をからかうための嘘だとは、とても思えなかった。
その事が余計に私を混乱へと導く。
こんなつもりではなかった。
でも、彼も私と同じ気持でいてくれた。
罪悪感と喜びが入り交じったぐちゃぐちゃな気持ちが心を占領する。
彼は、じっとして私の返事を待っている。
今さら、嘘でした~。なんて、 言える度胸を私は持っていない。
どうしようと思っても、私の気持ちはすでに一つしかなく、答えなんて最初から決まっていた。
「………お願いします。」
こんな形で付き合うことになってしまい、本当に申し訳なく思う。
彼に伝わるかどうかは分からないが、謝罪の意味を込めて頭を下げる。
私はズルい女だ。
そう思っていると、彼に顔を上げさせられる。
抱きしめられる。
「ありがとう。」
少し掠れた声が耳元で聞こえた。
体が離れる。
その一つ一つの行動が、私には全てスローモーションで流れていった。
「時間もいい頃合いだし、今日はもう帰るか。」
そう言ったミゼルの目は蕩けてしまいそうなほどの甘さを孕んでいた。
それとは対照的に、私の心は曇天の日のように黒く沈んでいた。
私たちは、庭園に辿り着いた。
目の前には水を高々しく上げた大きな噴水がある。
それを中心として、草木や花が植えられていて、所々には休憩用のベンチがいくつか置かれていた。
晴れた日にここにお昼を食べに来てもいいかもしれない。
私はそう思いながら足を噴水の方へ進める。
跳ね返ってきた水が頬を濡らして、その冷たさに驚いてつい、冷たいと言葉を零した。
それがミゼルに聞かれていたようで、彼の笑い声が私の一歩後ろで聞こえる。
今日は、笑われてばかりだ。
悔しいという気持ちがじわじわと湧いてくる。
それによって私は、忘れかけていた仕返しという言葉を思い出した。
やるなら、今。
何故か直感的にそう思った。
「ミゼル。」
そう言って彼の方を振り返る。
ミゼルは、どうした?と言うように首を傾げる。
「あのね私。………その、ミゼルのことが好きなの。」
ミゼルの顔が微笑から驚愕に変わっていく様を見て、私はしてやったりと思った。
いきなりの告白であれば、どんな事でも余裕でやり切ってしまう彼から余裕の二文字を外す事が出来るのではないか。
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「なんちゃっ「俺も。」」
「へ?」
「俺もアマリヤのことが好きだ。だから、その…俺の恋人になってほしい。」
「……?」
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その事が余計に私を混乱へと導く。
こんなつもりではなかった。
でも、彼も私と同じ気持でいてくれた。
罪悪感と喜びが入り交じったぐちゃぐちゃな気持ちが心を占領する。
彼は、じっとして私の返事を待っている。
今さら、嘘でした~。なんて、 言える度胸を私は持っていない。
どうしようと思っても、私の気持ちはすでに一つしかなく、答えなんて最初から決まっていた。
「………お願いします。」
こんな形で付き合うことになってしまい、本当に申し訳なく思う。
彼に伝わるかどうかは分からないが、謝罪の意味を込めて頭を下げる。
私はズルい女だ。
そう思っていると、彼に顔を上げさせられる。
抱きしめられる。
「ありがとう。」
少し掠れた声が耳元で聞こえた。
体が離れる。
その一つ一つの行動が、私には全てスローモーションで流れていった。
「時間もいい頃合いだし、今日はもう帰るか。」
そう言ったミゼルの目は蕩けてしまいそうなほどの甘さを孕んでいた。
それとは対照的に、私の心は曇天の日のように黒く沈んでいた。
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